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【令和を迎えて】ブラインドサッカー女子日本代表・菊島宙「今の自分を超える」

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菊島宙(左)軽やかなドリブルで男子日本代表経験を持つ鳥居(右)をかわす

 令和時代がはじまり、新時代をリードする期待の若手選手を7人紹介する連載の第3回目は、「ブラインドサッカー界の澤穂希」と称されるスーパー女子高生、菊島宙だ。

 新元号が発表される瞬間、春休み中だった菊島は自宅にいた。TVをつけていたが、見ていたのはアニメだった。

 「へえ、変わるんだというぐらいで特別に意識はしていません。私は平成生まれですけど、古い人にみられちゃう。私からしたら、昭和生まれの人が古く見えてしまうんで……。へへへ」

 質問した記者が昭和生まれと知って、そう笑った菊島はまだ高校2年生になったばかり。それでも日本代表での実績はもう大人顔負けだ。2017年に女子日本代表が初めて結成されて以降、6試合の国際試合を戦い、試合数の3倍以上となる21得点をあげた。シュート、ドリブル、ルーズボールへ最短距離で向かう鋭い反応。まるで見えているんじゃないか、と思えるほどの動きのよさは抜きんでており、ブラサカ関係者が「視覚障がい者のレベルを超えて、『キクシマソラ』という完全に別次元のキャラが立っている」と評するほどだ。

 菊島自身も、選手としての目標は「世界一になること」。しかし、東京五輪パラリンピックは男子のみ行われ、女子の開催はない。ワールドカップも存在せず、自分の力を世界に知らしめる舞台がないジレンマと戦っている。菊島が言う。

「地域のお祭りや、スポーツフェスティバルなどで行われるブラインドサッカーの体験会に参加した時に(所属の埼玉T.Wingsで監督をする)父(充さんが)が『(将来的には)女子もあるんだよ』ということを言ってくれています。私も、人前に出るときは言うこともあるかな」

2月、世界選抜と対戦後の一コマ

 3月、男子日本代表が4位に食い込んだワールドグランプリも、菊島は自分のスマホをWiFiにつなぎ、わずかに残っている視力を頼りに顔とスマホの画面を極端に近づけてその戦いぶりを見ていた。

「海外の人とやりたいなって改めて感じました。でも急には自分も(状況も)変われない。今の自分よりよくなるようにしていく。今はそれしか言えません」

 女子のパラリンピックが実現すれば、菊島が国内の枠を超えて、世界中から注目されることは間違いない。そんな日を思い描きながら、菊島は今日も必死にボールを追う。

【女子日本代表の過去戦績と得点者】
▼2017年5月6日「IBSAブラインドサッカートーナメント」(オーストリア)
〇2-0イングランド・ギリシャ選抜 菊島宙(2)
〇2-0ロシア・カナダ選抜 菊島宙(2)
〇1-0IBSA選抜 菊島宙
〇1-0IBSA選抜(決勝戦) 菊島宙

▼2018年2月24日「さいたま市ノーマライゼーションカップ」
〇7-3アルゼンチン選抜 菊島宙(6)斎藤舞香

▼2019年2月23日「さいたま市ノーマライゼーションカップ」
○10‐0IBSA世界選抜 菊島(9)工藤綾乃
※大会名の後の名前は得点者。( )はゴール数。

【ブラインドサッカー女子日本代表の今後の予定】
6・1、2、8、9日 アクサブレイブカップ予選ラウンド
6月中旬 女子日本代表合宿(予定)
7・7 アクサブレイブカップFINALラウンド

(取材・文 林健太郎)

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