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田尻、小島中心に奪い返しを徹底。個々が強みも発揮した熊本ユースが神村学園を3発撃破!

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後半4分、FW小野田涼(11番)のゴールを喜ぶロアッソ熊本ユースイレブン

[5.5 高円宮杯プリンスリーグ九州第6節 熊本ユース 3-1 神村学園高 嘉島町総合運動公園多目的競技場]

 個人、チームで上のステージへ――。5日、高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2019九州第6節が行われ、ロアッソ熊本ユース(熊本)が神村学園高(鹿児島)に3-1で快勝。2勝2分2敗とした熊本ユースは4位に浮上している。

 2年ぶりにプリンスリーグへ復帰した熊本U-18が、チーム力の底上げをしながら結果も出し始めている。開幕前からMF樋口叶(3年)、MF上野正騎(3年)、DF吉井凌雅(3年)と主軸候補たちの欠場が続く苦しい状況。まだまだコンスタントに力を発揮できるまでは至っていないものの、中山貴夫監督は自身の就任とともに加入してきた3年生たち中心のチームについて「底上げできている。少しずつできることが増えてきた」と成長を認めている。

 神村学園戦は個々の良さを随所に発揮して快勝した。立ち上がりは中盤中央の枚数の多い熊本ユースが、ポジショニングとパスの精度を活かしてボールを握る。そして、両翼、前線へボールを運ぶと、最前線のFW小野田涼(3年)がパワーショットやゴール前への迫力のある飛び出し。18分には高精度の左足が印象的なMF飯星明良(2年)の絶妙な展開から、10番FW廣田勇心(2年)がDFとの1対1を制してグラウンダーのクロスを入れる。これにシャドーの位置から走り込んだMF田尻康晴主将(3年)が1タッチで先制点を決めた。

 今季3得点目の田尻は「昨年は同じポジションをやっていたんですけれども、あまり点獲るというのがなくて、今年になってゴール前に顔を出して点を獲れるようになっている」。課題の立ち上がりでリードを奪った熊本ユースだったが、神村学園がプレッシングの強度と上げるとミスが増えてしまう。

 守備から立て直し、ボールを持つ時間を増やした神村学園は効果的なサイドチェンジを交えながら、相手の間を取って前進。そして、エースFW濱屋悠哉(3年)とMF軸丸広大主将(3年)のシュートやMF永吉飛翔(3年)の直接FKで熊本ユースのゴールを脅かした。

 やや攻撃が停滞した熊本ユースだったが、崩れない。相手のサイド攻撃を対人で強さを発揮する左SB値賀悠妃(2年)や右SB大林拓真(3年)が対応。抜群の高さを誇る大型CB片桐羽馬人(3年)が運動量の多さも発揮し、CB巖真都利(3年)とともに相手の前に立ちはだかった。

 そして、後半はトップチームに2種登録されているMF小島圭巽(3年)と田尻の2シャドーが、アプローチ距離の長いディフェンスで神村学園のビルドアップを封鎖。後半5分、飯星の縦パスで右中間を抜け出した小野田が左足でファーサイドのゴールネットを揺らすと、14分にも敵陣でインターセプトした田尻のスルーパスから小野田が右足で決めて3-0とした。

 中山監督は後半、「奪い返しのところを徹底した」と説明する。トップチームへの練習参加を重ねる田尻は「自分たちのウリはそこ(ディフェンス面でのアプローチの速さ、奪い返す力)。その良さが出ればチームも良い方向に出ると思う」と語っていたが、チームを守備面で引っ張る2人を中心とした奪い返しが熊本ユースに流れを引き寄せた。

 神村学園は失点を挽回しようという焦りからか、個人頼みの攻撃になってしまい、苦戦。それでも32分、ゴール前のこぼれ球をCB稲田翔真(2年)が押し込んで1点を返す。熊本ユースはこの後、ミスなどからピンチを迎えたが、神村学園MF芝和希(2年)の決定的なシュートをGK上田龍朋(3年)がファインセーブで止めるなど全員で凌いで3-1で勝利。中山監督は「(行き詰まった際に判断含めて)個人で解決する力がより必要」と語るが、選手たちはそれぞれの特長が伝わるようなプレーも示してホームで白星を勝ち取った。

 熊本ユースはトップチームとの距離が近く、頻繁に選手たちが練習、練習試合に招集されているという。その中で課題と向き合い、自分の特長を磨こうとしている選手たち。加えて今年はプリンスリーグが主戦場となり、高いレベルの中で意識高く自分たちの力を磨くことができている。彼らはより、高いレベルであるプレミアリーグに昇格し、個、チームのレベルを引き上げたい考えだ。田尻は「チームとしての目標はプレミアに上がることで全国大会でももっと上の方にいかないといけない」。結果を残し、トップチームへ昇格する選手も増やして地元の中学生たちからより「熊本ユースでプレーしたい」と思われるチームになる。

(取材・文 吉田太郎)

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