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W杯に舞い戻る喜田陽「忘れられない90分間の感覚」あのイングランド戦の“続き”を

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2017年U-17W杯イングランド戦は90分を無失点に抑え、PK戦で惜敗した

 ワールドカップの舞台に舞い戻る。ポーランドU-20W杯に臨むU-20日本代表メンバーにMF喜田陽(きだ・ひなた)が滑り込んだ。

 セレッソ大阪U-12から下部組織で育ち、高校3年生だった昨年8月にプロ契約を締結した。ワールドカップイヤーの今季は地元大阪を離れ、アビスパ福岡にレンタル移籍。主戦場をJ3からJ2に移した。サッカーに真摯に取り組む朴訥な18歳が環境を変えたのは、W杯出場を目指す想いも一因にあったという。

 喜田といえば、戦術理解度が高く、どのポジションも高いレベルでこなすマルチロール。サイドバック、ボランチ、サイドハーフのほか、小学生時代にはなんとGKも務めたというほど。「景色は変わるけど違和感はない」というセンスとクレバーさを持つ、U-20日本代表の秘密兵器だ。そのユーティリティー性とともに、影山雅永監督は世界大会の経験を評価している。

 2年前、インドで開催されたU-17W杯に主力として4試合中3試合にフル出場した。それが初戦のホンジュラス戦、格上のフランス戦とイングランド戦という起用法だったことからも、当時“00ジャパン”を率いた森山佳郎監督からの信頼が読み取れる。

 大一番は決勝トーナメント1回戦のイングランド戦だ。喜田ら守備陣はMFフィル・フォーデン(マンC)ら強烈な個を擁した相手に苦しみながらも、体を投げ出し、最後まで耐え凌いだ。同大会で唯一、優勝国イングランドを90分間無失点に抑える死闘だった。

「あの集中した90分間は、今までで一番長く感じた90分間だった。あの感覚は忘れられない」。口数の少ない喜田が、言葉に力を込めてそう振り返る。

 そして、試合はスコアレスでPK戦に突入。1人目のDF菅原由勢(名古屋)、2人目のFW宮代大聖(川崎F)まで成功したが、3人目のキッカーを務めた喜田が失敗。全員が成功したイングランドにPK3-5で敗れ、惜しくも16強で敗退した。

「そのあとは少し引きずりました。半年くらい」。インドで流した涙を忘れず、再び世界を目指して成長を続けた男が、自身“2度目”のW杯切符をつかんだ。

 日の丸を背負って立ったW杯の舞台。緊張感の中、格上を相手にすべてを出し尽くした、あの研ぎ澄まされた感覚をもう一度――。「また、あのプレーを出せたらいいなと思います。今回もひとつでも上にいきたい」。ポーランドの地で、喜田はあのイングランド戦の“続き”を見せようとしている。

(取材・文 佐藤亜希子)

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