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「自分のクオリティは理解している」キャリア初の苦境。エジルは愛するアーセナルで居場所をつかめるか

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メスト・エジルの去就は…

 2018年1月31日、MFメスト・エジルがロンドン・コルニーで新たな契約にサインするためペンを手にしたとき、彼のエミレーツ・スタジアムでの新時代が幕を開けたかのように思われた。

 ここ数年、アーセナルの懐事情は決して良い状態ではなかったが、クラブはこのドイツ人に週給およそ35万ポンド(約5000万円)を支払うことを決め、彼を2021年の夏までチームに引き止めることに成功した。

 当初これは祝福すべき出来事だと考えられていたが、それから1年半も経たないうちに状況は大きく変わり始めた。アーセナルにとって明るい未来が開けたと思われていた2018年の1月の出来事が、現在多くの人の目には“とんでもない失敗”に映ってしまっているのだ。

 クラブ史上最も高給取りなプレーヤーであるエジルは、新たな指揮官ウナイ・エメリの下で控えに甘んじることが多く、「戦術上の理由」としていくつかの試合に帯同できなかったこともあった。

 エジルに貼られた高値には常に苦しまされてきたアーセナルだが、ついにその我慢は限界を迎えたのかもしれない。

 こうしたシチュエーションの中で、大きな疑問が生まれてきたのだ。それは「アーセナルはエジルなしのほうがいいチームなのではないのか?」といったものや、「3年半で6200万ポンド(約88億円)を超える契約を終了させ、エジルを早めに売却したほうがいいのではないか?」といったものだ。

 エジルのような並々ならぬ才能を持った選手にとって、こうしたシナリオと向き合わなければならないのは初めてのことだ。

 とはいえ、30歳を迎えた彼が集中すべきことは決まっている。それは自らにハードワークを課し、今なおトップレベルで違いを作れる男であることをエメリに対して示し、アーセナルの中心選手としての地位を守ることに他ならない。

「監督から試合に出さないことを告げられたときには、そのことを受け入れ、自分の中で消化させなければならない」エジルは『DAZN』にそう語っている。「コンディションや健康にはできる限り気を使ってきたし、その成果も出ていた」

「今はプレーできているけど、もちろん起用の権限は監督にある。今シーズンはケガも何度かあって、出られない試合もあった。だけどコンディションさえ整えば、プレーさせてもらえると思っているよ」

 アーセン・ベンゲル監督体制ではアンタッチャブルな存在となっていたエジル。しかし、今季は11月後半から2月前半まで、プレミアリーグ14試合で先発出場はわずか2試合。10試合もベンチを温め続けた。それでも、シーズン終盤にはエメリに歓迎され、第27節から最終節までに10試合に出場。ヨーロッパリーグでも、バレンシアとの準決勝では両試合とも先発するなど、これまでの最高に近い頻度で試合に出場し続けた。

 それでも、次の夏に何が起こるのかは誰にも分からない。アーセナルはエジルをはじめとした何名かを手放し、大幅なコストカットとチームの再建を検討しているとも言われている。

 エメリは最大で5名の補強をしたいと考えているが、現選手の給与と利用可能な乏しい資金を勘定すれば、エメリが思うような補強は高額プレーヤーを何人か放出しない限りは現実的ではない(チャンピオンズリーグ出場権を逃せば、補強費はたった4000万ポンドだ)。

 無論、チームの中でエジルを超える給与を得ているプレーヤーはいないわけだが、彼は自分がチームを去ることなど夢にも思っていないようだ。

「正直に言って、その(移籍の)可能性はないと思う」エジルはそう明言している。

「ここでの契約はあと2年残っているし、契約の後に起こる出来事をコントロールすることはできない。だから様子を見るしかない。だけど僕はこのクラブにいられることを誇りに思っているし、このクラブで本当に幸せを感じているんだ」

 エジルへの批判は今に始まったことではない。2013年にレアル・マドリーからロンドンに到着して以来、彼に対する否定的な意見はずっと存在していたのだ。

 プレミアリーグ屈指の司令塔と評されながらも、エジルのプレーに対する姿勢や態度についての疑問の声が絶えることはなかった。

 エジルは、現在監督の信頼を得られておらず、自身の方向性を見失ってしまったプレーヤーとしてみなされている。また、彼はベンゲルの時代に優遇されすぎていたという見方もある。22年間率いた男はいかに調子が悪いときでも、エジルを控えに回すことはめったになかったのだ。ベンゲル政権下のアーセナルは、エジルを中心に組み立てられたチームだった。彼こそがチームの心臓であり、彼がクリエイティブな輝きを放ちながらチームを牽引したのだ。

 しかし、エメリの就任後にこの状況は一変した。シーズンを通してエジルには様々な役割が与えられ、アーセナルはサイドからの攻撃、特にサイドバックを絡めた戦術によって相手を切り崩すチームへと変貌を遂げていった。

 これに伴い、エジルのアシスト数は減少していった。もっとも、ベンゲルがまだ指揮を執っていたシーズンの後半からアシスト数の減少は始まっていた。

 具体的に言えば、エジルが昨年1月に契約を更新して以来、プレミアリーグにおいて記録したアシストはたった「3」。昨シーズン第30節ワトフォード戦でのフリーキックで1つ、そして今シーズンの第9節レスター戦、第28節ボーンマス戦で1つずつアシストを記録したのみなのだ。

 ヨーロッパのアシスト王として名を馳せていたプレーヤーにとって、この数字の落ち込み方は尋常ではない。しかし、エジルは自身の能力、アイディアに自信を持っている。

「自分のクオリティは理解している。それぞれが皆自分のクオリティを持っていると思うし、僕には背番号10のクオリティがある」

「もし監督が僕への要望を持っていて、別のポジションでのプレーを望んでいるというのであれば、それを受け入れて言われたようにやるしかない。僕はこれまでもそうしてきたし、一プレーヤーとして、頼まれたことをただやる必要があるんだ」

 キャリアで初めてと言っていい苦境に立たされたエジル。クラブが今夏にどのような決断を下すかは、まったくわからない。それでも愛するアーセナルのために、すべてを捧げる覚悟を持っている。30歳になった司令塔は、これから何を見せてくれるのだろうか。

文=チャールズ・ワッツ/Charles Watts

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