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誤審の話題で埋もれてしまうには惜しいハイレベルな好ゲーム…そして中村憲剛はまだ“死なない”

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中村憲剛が約1か月半ぶりに復帰した

[5.17 J1第12節 名古屋1-1川崎F 等々力]

 誤審で話題を持っていかれてしまうには惜しい試合だ。川崎フロンターレと名古屋グランパスによる風間八宏監督のイズムを継ぐチーム同士の“風間ダービー”は、1-1の引き分けだったが、見ごたえは十分。試合後のスタジアム中を包んだ両チームのサポーターから送られた拍手が、それを物語っていた。

 川崎Fのスタメンに背番号14が帰ってきた。負傷のために戦線を離れていたMF中村憲剛だったが、4月5日のC大阪戦以来の復帰を先発出場で飾った。前半から絶妙なスルーパスを通すなど、後半35分に交代するまで、さすがの存在感を発揮した。

 互いに短いパス交換から相手を崩すサッカースタイルだが、得点シーンはいずれもロングボールからによるもの。ただし「一つのミスが致命的になる。そのミスをカバーできる力がお互いにあったので、簡単ではなかった」と常に緊張感があったと振り返ると、「逃げないから行けば引っ掛かる可能性がある。はがそうとするチーム同士だから、行きがいがあった」と勝敗を超越したハイレベルな攻防に充実の表情を浮かべた。

 個人としては葛藤の日々を過ごしていた。「こんだけサッカーを取り上げられた日はなかった」と悩みを打ち明けた中村は、プライベートにも苦悩を持ち込んでしまったと反省する。しかし「みんなに感謝したい」とチームスタッフ、そして家族への気持ちを強調すると、「結果云々じゃなくてもサッカー人としてサッカーを楽しんだ日だった。自分の仕事場はここなんだなと改めて感じさせてもらえる場だった」と感慨深く振り返った。

 ただチームの連勝は5でストップ。奇しくも中村が戦線を離れてから始まった連勝が、復帰した試合で止まってしまった。これについては「(好調なチームに)加わるイメージでいたので、個人的には悔しい。勝たせたかった」としたが、それでも「サッカーって面白いな、と。練習では得られないゾクゾク感が詰まっている。(試合に出ることが)当たり前じゃなかったんだなという有難さ、いっぱい試合はやってきましたけど、改めてサッカーって楽しいなと思いました」と初心に帰らせてくれた充実感が上回った様子。

 目の輝きは取り戻した。川崎のバンディエラはまだ、死なない。

(取材・文 児玉幸洋)
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