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「判断するサッカー」で結果と育成を両立。高知が後半ATの決勝点で高知中央破り、7年ぶりV!

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高知高が7年ぶりに全国へ

[5.27 インターハイ高知県予選決勝 高知高 1-0 高知中央高 春野運動公園球技場]

「判断するサッカー」で育成と勝利を求める高知が全国へ――。令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)高知県予選決勝が27日に行われ、県新人戦優勝の高知高と前回優勝校の高知中央高が激突。後半アディショナルタイムにFW楠瀬海(2年)が決めた決勝点によって高知が1-0で勝ち、7年ぶり15回目の全国大会出場を決めた。

 16年に日本サッカー協会公認のS級ライセンスを取得している高知・高橋秀治監督は「勝つことと伸ばすことが一緒にできた」と頬を緩めた。これまで14回のインターハイと15回の選手権に出場していた高知だが、選手権の最高成績は86年度の8強。その後は16強の壁を超えることができていない。

「その先に行かないといけない」(高橋監督)という思いで取り組んできたのが、「相手に応じて自分たちで判断するサッカー」だ。選手、コーチ陣が一緒に積み上げてきたものが、この日、結実。MF吉尾慎太郎(3年)や楠瀬をはじめとした選手たちが状況を見て、判断を変えることも繰り返しながらボールを前進させ、また守備では相手の“要注意人物”FWオニエ・オゴチュグウ・プロミス(3年)に必ずファーストDFが寄せて前を向かせないなど自由にプレーさせなかった。徐々に主導権を握る時間を伸ばし、劇的な決勝点によって勝利。大会を通して強さを増した選手たちが涙を流して喜ぶ姿を指揮官も嬉しそうに見つめていた。

 試合は前半、ボールを握り合う展開に。高知中央は2シャドーの一角、MF津久井吾海(3年)がわずかなスペースを縫うドリブルや展開で存在感を示し、MF塩田真矢(3年)やMF中越幹太(3年)が絡む形でボールをPAまで運んでいた。注目のオニエも相手がバランスを崩した際には一気に加速しようとしていたが、高知はCB林優太主将(3年)を中心に2人、3人がかりでオニエをケア。シュートまで持ち込ませない。

 その高知は正確なミドルパスを配球する大型MF小黒大翔(3年)と左利きの吉尾のダブルボランチを中心とした攻撃。また、左MF都築楓太(3年)の左足や右SB畠中颯斗(3年)の大胆な攻め上がりもアクセントに相手の守りを脅かしていた。高知中央の近藤健一朗監督は「ファーストディフェンスが決まらなかった。相手の守備が良かった」。より前向きな状況でボールを奪っていた高知がセカンドボールの攻防戦でも優位に。そして、26分にこぼれ球をMF野島唯暉(3年)が右足で狙うシーンもあったが、先制することができない。

 互いにショートパスを軸に、スペースを探して攻め合う見ごたえのある攻防戦に。高知中央はサイドを突かれるシーンが増えていたが、CB室屋すばる(3年)がインターセプトを連発するなど相手に決定的なシーンを作らせない。そして、後半8分にキープ力の高さと一発を備えたU-17ナイジェリア代表候補MFオタボー・ケネス(2年)を投入。室屋が負傷退場した後もCB三山皓大(3年)を中心に粘り強く守り、ケネスも交えたパスワークから相手の背後を狙うが、高知のDF陣はGK森亮太(3年)や林中心に堅く、得点することができなかった。

 試合は0-0のまま後半アディショナルタイムに突入。高知は37分に大きな展開で相手を揺さぶり、右CKを獲得する。ここで吉尾が痛めている左足でキック。高知中央はGK杉浦渉平主将(3年)が勇気を持って飛び出し、パンチで弾いたが、これをPA外で構えていた楠瀬がコントロールから右足で撃ち抜く。ややアウトにかけたシュートがゴール左上隅を破り、待望の先制点となった。

 右手を突き上げた2年生FWに白とスカイブルーのユニフォームが駆け寄って喜びを爆発。高知中央は再開直後のFKにGK杉浦が飛び込んだが、それを封じた高知が全国切符を勝ち取った。高知の吉尾が「個の力で言ったら他のチームに劣ると思うんですけれども、決断力や我慢するところはあると思っています」と分析する今年の高知。主将の林は勝利することと成長することの両方を表現できたことを喜んだ一方、「全国でも優勝という目標を持って全員でやっている。今日受け身になった時間があったので、自分たちがやりたいことをやって、相手にしたいことをさせない、主導権を握らせないサッカーをしたいです」と力を込めた。高知制覇はまだ通過点。選手は自分たちで考え、よりボールを支配して勝つチームになって全国に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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