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ポーランドで一枚岩に…“誰か”を欠く緊急事態に負けないU-20日本代表の挑戦

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ゴールを決めた選手は真っ先にベンチに走った

 U-20ワールドカップに出場しているU-20日本代表は負けなしでグループリーグを突破した。

 A代表に招集されたFW久保建英(FC東京)、GK大迫敬介(広島)、MF安部裕葵(鹿島)に加え、DF橋岡大樹(浦和)、GK谷晃生(G大阪)も負傷のため間に合わず、メンバー発表時は戦力ダウンから「飛車角落ち」と言われる状況だった。もし予選で敗退していたら、「久保がいないからダメだった」で片付けられた可能性もあっただろう。

 FC東京で今季活躍しているように、これまでもアンダー代表の久保は突出していた。久保がA代表に引き上げられれば、U-20W杯は安部が攻撃の核になると見られたが、3月の欧州遠征、4月の千葉合宿までメンバー入りしていたにも関わらず、協会の対応が後手を踏み、直前でコパ・アメリカ行きが内定。さらに、最後の国内合宿中にMF滝裕太(清水)も負傷離脱となった。

 それでも、逆境を跳ね返すようにチームはポーランドで一枚岩になった。「チームの雰囲気は間違いなく良い」とFW宮代大聖(川崎F)が言えば、MF鈴木冬一(湘南)も「年齢関係なく仲が良いし、何でも話し合える。このチームは犠牲心が高くて、団結力がある」と話した。主将のMF齊藤未月(湘南)は「出ていない選手が練習、私生活からチームとして勝とうという気持ちを持った中で行動してくれているから僕らも頑張れるし、チーム一体になれている」と垣根のない一体感を強調した。

 日本はグループリーグ3試合で4ゴールを奪い、失点はオウンゴールの1点のみ。今大会の出場権を獲得したU-19アジア選手権で控えに甘んじ、Jリーグでも満足な出場機会を得られなかったGK若原智哉(京都)やMF山田康太(横浜FM)といった選手がW杯本番でハイパフォーマンスを見せた意味は大きかった。

「(A代表にいった)3人がいなくても自分たちは強い、いい選手だというところを見せないといけない」と大会前に話していたMF藤本寛也(東京V)がメキシコ戦を掌握し、CKからゴールを演出するなど2アシスト。若原とDFラインが堅守を築き、齊藤を筆頭にチーム全体がハードワークを完遂した。「死の組」と言われたB組の突破は下馬評を覆すような快進撃だった。

 もちろん、チームの評価が決まるのは、ノックアウトステージで結果を残してこそ。無敗で勝ち上がった代償としてグループリーグ3試合に先発したFW田川亨介(FC東京)、MF斉藤光毅(横浜FC)が揃って負傷離脱したことは痛手と言うしかない。コンディション不良のため、イタリア戦前から宮代、藤本、MF郷家友太(神戸)も別メニュー調整を続けている。

 大会中の追加招集はできないため、ここから先は19人。一方で韓国代表には久保と比較されるFWイ・ガンイン(バレンシア)やFWチョン・ウヨン(バイエルン)ら海外組も揃う。日本が“16強の壁”を破ったのは8大会前に遡り、その相手も韓国だった。“誰か”がいなくてもそれに代わる選手が活躍し、総力戦で戦えると証明した予選の経験は決勝トーナメントにつながるはずだ。

(取材・文 佐藤亜希子)

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