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選手権4強の尚志が染野延長V弾で福島10連覇!「真の強豪」になるための課題も

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福島10連覇を達成した尚志高イレブン

[6.2 インターハイ福島県予選決勝 尚志高 2-1(延長)学法石川高 Jヴィレッジスタジアム]

 注目FW染野の延長V弾で尚志が10連覇達成! 2日、令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)福島県予選決勝が行われ、尚志高学法石川高が対戦。延長後半8分にU-18日本代表FW染野唯月(3年)が決めた決勝点によって尚志が2-1で競り勝ち、10年連続12回目の全国大会出場を決めた。

 最後は「選手権得点王」染野が劇的な決勝ヘッド。執念とも表現できるようなゴール、勝利で全国切符を獲得した尚志の選手たちは、素直に勝利を喜んでいた。勝ちロコの後、順番に優勝カップを掲げて笑顔、笑顔、笑顔。仲村浩二監督も勝ち切ったことについては讃えていたが、苦言を呈することも忘れなかった。

 1点リードの後半アディショナルタイムに左コーナー付近でボールをキープしていた尚志だが、中途半端にゴールを狙って素早く出したスローインを奪われ、カウンターを食らってしまう。そこからPKを献上して同点。延長戦で勝つことはできたものの、指揮官は「ああいう1プレー、細かいところを詰めていかないといけない。真の、強い強豪に」と指摘。今年1月の選手権で2度目のベスト4へ進出し、次は日本一へと鼻息荒い“福島の雄”だが、それを勝ち取るためには、より細部にこだわらなければならないことを再確認した決勝戦だった。

 県内の“絶対的王者”にとっては、難しい展開の試合でもあった。立ち上がりに染野が直接FKを狙い、その後も染野のポストプレーから左MF松本岳士(3年)が抜群のスピードを発揮。松本や左SB吉田奨(3年)がDFを振り切ってシュートまで持ち込んでいた。尚志は前半だけでシュート7本、CK8本を記録したが、伝統的な繋ぐ部分と染野を頼って安易にボールを入れてしまう部分がチグハグになってしまい、中央からの攻撃を学法石川のCB大津平嗣(2年)やMF滑川郁也(3年)らに跳ね返されてしまう。

 また、学法石川は187cmの大型GK井浦拓磨(3年)が奮闘。チームとしてもハイプレスと、最後まで相手の身体を寄せて守るという打倒・尚志のためにこだわってきたことを表現し、前半をスコアレスで折り返した。尚志は後半開始からMF菅野稜斗(2年)を投入。指揮官も信頼感を口にする技巧派を加えた尚志は、司令塔のMF小池陸斗(3年)や松本がゴールを脅かすが、学法石川は井浦がファインセーブを連発して得点を許さない。

 尚志は27分にもドリブルで持ち込んだ染野が得意の切り返しから左足を振り抜いたが、学法石川DFがブロックする。身体能力と左足光るCB中川路功多(3年)やMF福田隼也(3年)らが学法石川の速攻を封じていた尚志だが、相手の分厚い壁を攻略できないまま、残り時間はわずかに。それでも後半31分、尚志はついにスコアを動かす。サイド攻撃のこぼれ球から小池が左足シュート。これをゴール前でコントロールした交代出場CB渡邉光陽(2年)が左足でゴールにねじ込んだ。

 後半終了4分前の先制点。尚志はこの1点を守らなければならなかったが、試合の締めにかかっていた後半アディショナルタイムに判断ミスからボールを失い、速攻を受けてしまう。学法石川はMF矢崎空(3年)のスルーパスのこぼれを拾ったFW清水大成(3年)が切り返そうとしたところでファウルを受けてPK獲得。学法石川はスタッフ、控え選手が膝を地について見つめる中で、清水が右足でゴールを破り、延長戦に持ち込んだ。

 延長戦で尚志は交代出場のMF今井聖士(3年)や染野が個で相手の守りを破って決定的なシュートを打ち込むが、ゴールマウスに弾かれるなど得点することができない。延長前半には染野が接触プレーで倒れ込むなど暗雲が立ち込めた。だが、したたかにゴールを狙い続けたエースが延長後半8分に決勝点。CKの流れから敵陣中央の菅野がPAにボールを入れると、DFと巧みに入れ替わった染野が頭で決勝点をねじ込んだ。

 尚志は、チャレンジャーとして全力で立ち向かってきた学法石川を退けて連覇を繋いだ。県内での強さを示したが、チームの甘さも出た試合について染野は「『このくらいで良いだろう』というのが、どこかにあったと思う。余裕を持ちすぎないで、丁寧に、丁寧に一つずつ練習からやっていければ、自ずと試合のプレーでも出てくると思う。意識してやっていければいい」とコメント。Jクラブ練習参加や年代別日本代表を経験してきたFWは、学んできた判断スピードや細部を、日本一を目指すチームに還元することを誓っていた。

 また、松本は「福島県内だったらブッちぎって勝たないといけないと思いました。全国へ向けて切り替えて、自分たちの目標は全国制覇なので、それへ向かってやっていかないといけない」。選手たちにとって理想形でもある昨年のチームのレベルに達することや、常に全国上位に位置する強豪同様の力を身につけることを目指して――。仲村監督は「全員が成長しなければいけない」。上手さと隙の無さを両立したチームになって、インターハイや選手権を迎える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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