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[MOM618]早稲田大FW加藤拓己(2年)_俺は消えてない

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2試合連続ゴールと存在感をみせる加藤拓己

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.1 関東大学リーグ第8節 早稲田大2-1流通経済大 AGFフィールド]

 今季初の連勝を目指す早稲田大に弾みをつけたのは、FW加藤拓己(2年=山梨学院高)の一撃だった。前半7分、MF山下雄大(1年=柏U-18)の左サイドからのボールでゴール前に抜け出した加藤は、GKとの1対1を冷静に制した。前節の東洋大戦の大学リーグ初ゴールからの連続弾になった。

「チームがゴール欠乏症と言われていた中で、(第6節の)駒澤戦から出して頂いた。得点できなくて悔しくて泣いたんですけど、そこで考えたのは自分の武器はゴール前の怖さだということ。前節、得点できたのは自分にとっても大きかった。でもまだまだこんなもんじゃいけない。チームに迷惑をかけたし、まだまだ足りないと思っています」

 高校時代、山梨学院高を主将として牽引。高校選手権では注目選手の一人として脚光を浴びた。大会後にはU-19日本代表の一員としてスペイン遠征を経験。希望を胸に早稲田大に進学してきた。

 しかし歯車を狂わせたのは怪我。大学入学前の2月に手首の手術を受けると、復帰を目指していた5月に今度は左足首を骨折。6月に手術を受けたが、思うように回復しなかった。スポーツ推薦で狭き門を突破しての入学だったが、正式入部のためのランテストすら受けられない状況が続いた。

「正直、1年間を無駄にしたとみられてもおかしくない。パス交換に入り出したのも今年2月7日から。手術をしたのがちょうど去年の2月7日だったので、本当にまるまる1年やっていなかった。でもその1年がなかったらこれだけチームのためにやろうと思わなかっただろうし、今の自分は違う自分だったと思います」

 ゴリくん消えたな。母校の山梨学院高の後輩にそんな噂がされれているという話を聞いた。ツイッターには『辞めたんですか?』というダイレクトメッセージが届くこともあったという。「辞めていないよ」。心の中でつぶやくしかできないもどかしさ。「すごく歯がゆかったけど、言葉で言うだけじゃ説得力ない」ということが分かるからこそ、悔しさを拭い去ることができない。「だから消えたんじゃないかと心配してくれた人たちのためにも頑張りたい」。

 ようやくコンディションが戻ってきた今季。加藤にはランテストをクリアしなければいけないという課題が残されていた。ランテストは「グラウンド10週を13分半で走って、15分休憩したあとに、縦17秒で行って43秒で戻るランを10本連続でやる」というもの。合格ラインは「いやらしい」というギリギリのラインに設定されている。

 スポーツ推薦で入学した経緯があることから、入部できないという事態だけは避けなければいけない。しかし部としてもいつまでも猶予期間を与えるわけにはいかない。そんな中で最終テストは5月上旬に定められることになった。

 日時が決まってからは、その日に照準を合わすことだけに集中した。テストまでの2週間は、同級生が集まって模擬ランをこなしてくれたのだという。

「本番ラストでもみんなが鼓舞してくれた。最後はすごく暑い日で、予報も暑かったんですけど、テスト開始の14時になったら曇りになって、すごく涼しくなった。1年間頑張ってきたツキがあったのかなと思った。最後は本当に苦しかったし、仲間の支えがなかったら最後入れなかった。だから最後の10本のラスト3本くらいはこみ上げてくるものもありました」

 そしてテスト合格後、すぐに出場機会がやってくることになる。プロ注目の選手でもあるFW武田太一(4年=G大阪ユース)が加藤と2トップを試した試合で膝を負傷。全治8か月の大怪我を負ってしまったのだ。

「私生活で何度もお世話になっている先輩。自分は練習の10分前くらいに寮でシャワーを浴びたりすることがあったんですけど、その時に学年のみんなよりも、太一君が一番最初に言ってくれた。正直、ライバルだと思っていますけど、現状を考えると、俺は太一君の分もやらないといけない。それを背負えるのは俺だけだと思っているので」

 ようやく始まった大学でのサッカー生活。目標はもちろんプロだが、今はチームを勝たせることだけに集中する。「僕自身1年間部員としてやれなくて、今年こうやって受け入れてくれた学年だったりチームに対して、自分が何が出来るかを考えたときに、試合に出てチームを勝たせることしかできないなと思っています。それが一番強いですね」。パワー自慢のストライカーは、まずは大学屈指の存在になることを目指す。

(取材・文 児玉幸洋)
●第93回関東大学L特集

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