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残り10秒で同点弾。“ブラサカ界の澤穂希”こと、菊島がそれでも涙を流した理由

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準々決勝でPKを決めた菊島宙

[6.9 アクサブレイブカップ準々決勝 埼玉T.Wings1-1(PK1-0)Avanzareつくば](福島・十六沼公園サッカー場)

 ブラインドサッカーの日本一決定戦「第18回 アクサブレイブカップ」は8,9日に福島ラウンドが行われ、埼玉T.Wingsの女子日本代表・菊島宙(そら)が1日目に15ゴール、2日目も5ゴールを奪い、20ゴールをあげる離れ業をやってのけた。

特に準々決勝では、現役日本代表の大黒柱、川村怜や守備の要、佐々木ロベルト泉らを擁し、日本代表経験者もズラリとそろう前回王者のAvanzareつくばと対戦。0-1で迎えた試合終了前残り10秒でFKを起点に同点弾を決め、PK戦に持ち込んだ。

「(FKを)蹴る前は頭の中は『やばい、やばい』しかなかった。とりあえず蹴って入ればいいなと。決まった瞬間、よっしゃと。相手のGKは(味方が作った)壁がじゃまになって(私のシュートが)見えなかったというのもあったと思うんですが、決まってよかったです」

 直後のPK戦でも菊島が最初のキッカーに指名され、思い切り蹴ったボールはゴールポストにあてて入れた。相手の1人目のキッカー、佐々木ロベルト泉のシュートをGKがはじき、2017年に続く2度目のFinalラウンド決勝進出を決めた。

 前日に2試合で15得点。ルーズボールに対しても迷いなく最短距離で行ける認知能力とずば抜けたゴールハンターに対し、代表勢がそろうAvanzareつくばは厳しくマーク。菊島は何度となく、ピッチに転がされた。相手選手は菊島のパフォーマンスへの嫉妬もあったのか「(菊島は目が)見えてる、見えてる」と言葉で挑発。それを聞いた菊島の目に涙が浮かび、額から流れる汗も一緒になると、目が染みた。

「悔し泣きです。最近多いんです。(相手選手との)コンタクトで消耗して、試合後半のほうは、体力的にもキツいし、いろいろ言われるし、思い通りにいかないし、だから泣いてしまいました。でも監督(父・充さん)から『試合中に泣いたら交代だぞ』と言われていたので、我慢しました。相手がどんな選手であれ、人には負けたくない。負けず嫌いの部分が大きいんです」

 同点弾のきっかけになったFKは、菊島が相手の佐々木のファウルを誘って得たチャンスだった。ただでは転ばないしたたかさがある。「女性だから(体力面は)か弱い」という見方は菊島には通用しない。

「mejirodaiには、うまい人たくさんいる。体力的にもキツいかもしれないけど、勝ちたいです」

 17歳とは思えないたくましい精神力で王者の分厚い壁を乗り越えた菊島の勢いを、free bird mejirodaiはどうやって止めるのだろうか。

(取材・文 林健太郎)

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