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後半ATと延長後半ATに劇的ゴール!市船、流経大柏連破の日体大柏が千葉代表として全国へ!

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激戦区・千葉制覇を喜ぶ日体大柏高イレブン

[6.19 インターハイ千葉県予選決勝 日体大柏高 4-3(延長)流通経済大柏高 千葉県総合スポーツセンター東総運動場]

 千葉の高校サッカー史が動いた――。19日、令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)千葉県予選決勝が行われ、日体大柏高流通経済大柏高が対戦した。後半アディショナルタイムに同点に追いついた日体大柏が、延長後半アディショナルタイムの決勝点によって4-3で逆転勝ち。柏日体高時代の86年度以来、33年ぶり2回目となるインターハイ出場を決めた。

 後半アディショナルタイム3分に交代出場の10番FW長崎陸(3年)が劇的な決勝ゴールを決めた直後、選手たちが喜びを爆発させていた最中に試合終了の笛が鳴る。すると、柏などで活躍した元日本代表MF酒井直樹監督はピッチサイドで突っ伏して涙。「選手たちがあんな感情を、気持ち良い方の感情を素直に表現できない子たちが多かったんですけれど、それがああいう風に、心の底から本当に喜んだり、泣いたり、わーっと……目の当たりにしたときにグッと来ましたね」。

 今年、インターハイの大会規模縮小に伴い、千葉県の代表校は昨年までの2から1に変更。その1枠を争うのは、ともに全国的な名門校で、過去3度、全国決勝での千葉勢対決(08年度は雷雨のために両校優勝)を実現させている市立船橋高と流経大柏と目されていた。だが、15年2月に柏レイソルと相互支援契約を結び、“レイソルアカデミー”の一つとして強化してきた日体大柏が“2強“を連破。近年、名門2校不在の関東大会予選では優勝していたものの、インターハイ予選や選手権予選で流経大柏や市立船橋に幾度も跳ね返されてきた日体大柏がついに全国切符を獲得した。

 序盤は完全に流経大柏のペースだった。2年連続選手権準優勝の流経大柏は負傷明けのMF八木滉史主将(3年)をベンチからも外していたが、それでも迫力のある攻守。10分、FW桜井俊英(3年)がGKにプレッシャーをかけてミスを誘うと、こぼれ球をFW渡會武蔵(3年)がダイビングヘッドで押し込んで先制する。

 さらに12分には左SB栗原健汰(3年)の左アーリークロスをファーサイドの桜井が逆サイドのネットに流し込み、2-0とした。酒井監督が「失点せずに数少ないチャンスを決めきるところに全力投球しました」という日体大柏は、守備時にアンカーの池上裕隆(2年)を下げる5バックで対応していたが、ゲームプランの崩れる2失点。早くも追い込まれてしまう。

 それでも、MF佐藤大斗(3年)が「(今大会も)逆転できている試合があったので、それが自信になっていた」という日体大柏は2強撃破のために磨いてきた守備で踏みとどまる。そして、22分の追撃ゴールで勢いづいた。カウンターから佐藤が右サイドへさばくと、快足FW耕野祥護(3年)が独走。そして、クロスに長い距離をスプリントしてきた佐藤が合わせて1点差とする。

 日体大柏はその後も伊藤のロングスローや耕野のクロス、MF堤祐貴(3年)の正確な左足キックなどを活かして相手の守りにプレッシャーをかける。流経大柏も献身的に動き回る2トップを中心にリードしたまま試合を進め、クロスから追加点のチャンスを作った。

 日体大柏は後半17分、自陣から伊藤がFKを蹴り込むと、こぼれ球を佐藤がシュート。このこぼれ球を佐藤が右足ダイレクトで左隅に決めて2-2とした。だが、流経大柏は22分、左クロスをファーサイドのFW森山一斗(2年)が落とし、これを渡會が右足で決めて再び勝ち越す。

 それでも、日体大柏は失点直後に長身FW長崎を投入し、試合終盤には守備の柱・伊藤を前線に上げて反撃する。そして後半アディショナルタイム、FKのこぼれ球を拾ったMF冨沢翔(3年)が粘ると、ドリブルで強引に仕掛けた長崎がPKを獲得。これを右足で決めて土壇場で同点に追いついた。

 執念の1点。それでも、左膝に負傷を抱える伊藤が延長戦突入前に交代するなど、苦しい展開は続いた。流経大柏は延長前半9分にはゴール前の混戦から連続シュート。延長後半2分にもDFと入れ替わったFW松本健太(3年)がループシュートを放つ。

 だが、日体大柏はこの一撃をカバーした池上がオーバーヘッドでクリア。主将が退いた後も全員が集中して守り続ける。流経大柏は3-3の延長後半12分、PK戦勝負を想定してU-17日本代表GK松原颯汰(2年)を192cmGK佐藤藍大(3年)へスイッチ。だが、セットプレーに人数をかけるなど4点目を目指し続けた日体大柏が全国へのゴールをもぎ取った。

 13分、交代出場のDF山本悠真(2年)が右サイドからロングスロー。ニアで長崎がそらしたボールを交代出場MF関戸秀斗(2年)が連続でシュートを放つ。これはいずれも流経大柏DFがブロックしたが、こぼれ球にフリーで反応した長崎が左足一閃。これがゴールネットを揺らすと、勝利を確信した選手たちは応援席のチームメートたちの下へ駆け寄り、喜びを大爆発させた。

 千葉県の高校サッカーをリードしてきた流経大柏と市立船橋がともにインターハイ出場を逃したのは02年度以来。その前は93年度に遡る。日体大柏はその歴史を変えた。選手たちは磨いてきた“レイソル流”のポゼッションにこだわるのではなく、2強を破るために覚悟を決めて守備重視の戦いを貫徹。就任以降、対応力の部分を求めてきた酒井監督は相手を見て対応し、勝ち切った選手たちに「彼らが選んで思い切ってやってくれたことが良かった」と目を細めていた。

 千葉県を突破したが、これから彼らは「千葉代表」の重圧を乗り越えていかなければならない。指揮官は「まだ千葉で優勝しただけで、千葉の優勝チームだったら全国で皆さんに感動してもらえるようなサッカーをしてこないと誰も認めてくれないと思う」とコメント。これに対して佐藤は「責任を持って、千葉代表として簡単には負けないようなチームにして、最終的には優勝したい」と意気込み、伊藤は「全国で負けたら意味が無い。優勝します」と誓った。個性的な選手たちが一丸となって臨む全国舞台。市立船橋、流経大柏を破った千葉代表がインターハイで、真価を発揮する。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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