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注目の下級生、負けじと努力した3年生が融合。東海大相模が三浦学苑を3-0で破り、全国へ!

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全国出場を喜ぶ東海大相模高イレブン

[6.22 インターハイ神奈川県予選準決勝 三浦学苑高 0-3 東海大相模高 相模原ギオンスタジアム]

 神奈川のタイガー軍団、東海大相模が全国へ――。令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)への出場2枠を懸けた神奈川県予選準決勝が22日に行われ、東海大相模高が昨年度全国8強の三浦学苑高に3-0で快勝。2年ぶり2回目の全国大会出場を決めた東海大相模は、23日の決勝で神奈川県第1代表の座を懸けて桐光学園高と対戦する。

 期待値の大きな1、2年生と、彼らに負けじと努力してきた3年生たちが融合。東海大相模が全国切符を勝ち取った。有馬信二監督は「手がかかっているチームだけに感慨深いですね」と笑顔。2年前のインターハイ初出場世代とMF中山陸(現甲府)らを擁して関東大会予選を制した昨年の世代、そして期待のタレントが多いという下級生の間で“谷間の世代”と評されていた今年、“第二期黄金時代”への幕を開けた。

 試合は前半18分に東海大相模が「相当練習したんですよ。サインがいっぱいあるんですよ」(有馬監督)というCKで先制する。右CKを左SB本間陽己(3年)が「『狙え』っていう指示が出ていて、練習でもそこの確認はたくさんしていたので、とにかく誰かが触ってゴールというよりは、自分のキックが直接入るということを心掛けて蹴りました」と左足キック。これがGKの頭上を越えてファーサイドのゴールネットを揺らした。

「たくさん練習していたので、上手く決まって嬉しかったです」という本間の鮮やかなCK弾で先制した東海大相模だったが、三浦学苑のFW明石琉希(3年)とFW鈴木心月(2年)の2トップを捕まえられずにペースを握られてしまっていた。それでも、前半半ばに3-6-1から4-2-3-1へとシステムチェンジ。守備の役割がはっきりしたことで立て直した東海大相模は前半38分に再びCKから追加点を奪う。

 右CKは一度クリアされたが、クリアボールを繋いでDF峰田祐哉(2年)が右クロス。こぼれ球をDF今泉陸(2年)が中央に折り返すと、その前のプレーでゴール前に飛び込み、上体だけ起き上がっていたDF島田惇広主将(3年)が「(倒れていたが)ボールから目を離さないようにしていて、いい感じにボールが来て。シュートは執念ですね(微笑)。技術では自分は一番ではないと思っている。最後まで諦めないとか声を出すとかでみんなを引っ張っていくしか無い」と頭でゴールへ押し込んだ。
 
 MF長嶋風太(3年)やMF橋本一汰(1年)中心に技術力高い東海大相模はボールをテンポよく動かすと、右のMF増田鈴太郎(2年)と左のFW渡邉雄馬(2年)の両翼が推進力ある仕掛けを連発。また、長嶋とのコンビネーションから本間が決定的なクロスを上げるシーンもあった。そして後半15分には、右サイドでセカンドボールを拾った増田が縦を突いてPAへ折り返す。これを投入直後のMF戸澤龍人(2年)が、正確なコントロールでスペースへ運んでから右足で決めて3-0とした。

 東海大相模と同じく1、2年生7人が先発した三浦学苑は、流れの良い時間帯に得点が奪えず、逆に突き放される展開に。勝機を逸した展開となったが、MF明石梓希とMF福田大我の1年生ダブルボランチに組み替え、彼らのテクニックを活かして反撃する。23分には右クロスから明石琉が決定的なヘッド。だが、これを東海大相模GK川邊大聖(3年)のビッグセーブに阻まれ、勢いづくことができない。ピンチを凌いだ東海大相模は貪欲に4点目を狙って攻め続けて快勝。全国切符を勝ち取った。
 
 今年、東海大相模は連覇を目指した関東大会予選で準々決勝敗退。彼らにとってターニングポイントは、インターハイ予選初戦直前の6月1日、2日に行われた北関東遠征だった。プリンスリーグ勢の桐生一高、矢板中央高と練習試合で対戦。桐生一に1-2で敗れ、矢板中央戦も前半20分までに0-2。それまでは3年生中心のメンバー構成だったが、有馬監督はこの試合の後半、2人の3年生を残して1、2年生にスイッチする。すると、3得点を奪って逆転勝ち。全国を目指すため、ここから先発メンバーの半数以上を下級生が占めるようになった。

 横浜FMや川崎FなどJクラブの育成組織出身が並ぶ下級生たちは技術力が高く、ミスが少ない。今大会はミスで相手に隙を与えることがなくなり、質の高いパスワークやサイドの突破力というチームの特長を表現しながら勝ち上がってきた。一方でサブに回る選手が増えた3年生も、与えられた時間の中で奮闘。本間は「(3年生の先発が減り、)正直悔しいですけれども、下の学年が上がってくれば自分たちも負けないと上がってくると思うので良い効果だと思います」。悔しさをバネに力を発揮した3年生も神奈川突破の大きな力になった。

 有馬監督は今年3月、チームの歴史を変えた前3年生の送別会で「第一期黄金期は終わった。下級生は第二期を作っていくよ」と語ったという。その第一歩を刻むインターハイ出場。注目の下級生に後押しされて現3年生も進化する今年のチームについて、指揮官も今後の成長が「読めないですよね。底なしでしょうね。『伸びしろばっかだな』と言っていましたけれども」という。

「自分たちがやっていかないといけない。応援もあるのでその分、気持ち入りますね」(島田)という3年生、「情けないプレーはできない。今年から結果を出せば注目されていく」(増田)という下級生が一体となって全国でもインパクトを残すか。“第一期黄金時代”の活躍で部員265人の大所帯となった東海大相模が、より質を高めて「本気で」日本一に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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