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異例のシーズン中引退、トーレスの動機は”次世代育成”へ「欧州の若手選手たちは…」

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シーズン途中での引退を決めたサガン鳥栖FWフェルナンド・トーレス

 サガン鳥栖FWフェルナンド・トーレスは現役引退の理由を「高いレベルに達していないため」と明かした。現契約は来年1月1日まで残っており、1年間の延長オプションもあったが、クラブに求めたのはシーズン途中での契約解除。そんな異例の決断の裏には「これまで成し遂げてきたことを残したい」という育成への強い動機があるようだ。

 トーレスは昨夏、自身の選手キャリアで最も長い時間を過ごしたアトレティコ・マドリーを離れ、九州の地方クラブである鳥栖に加入。南アフリカW杯優勝、欧州選手権連覇という華々しいキャリアを誇るビッグネームの電撃移籍は国内外から大きな驚きを呼んだ。

 トーレスによれば、加入のきっかけとなったのは鳥栖を運営する株式会社サガン・ドリームスの竹原稔社長による熱心なオファー。引退会見の場でも「マドリードに足を運んでくれて、サガン鳥栖でやっていきたいことを伝えてくれた。それでサガン鳥栖にきた。何か助けになれればと思う」と感謝の気持ちを口にした。

 ただ、クラブ首脳の熱い勧誘と一定の年俸だけで、世界有数のスター選手が自身最後のキャリアを捧げる覚悟を持つとは考えにくい。すると、他になんらかの動機があることが推測されるが、昨年7月15日に行われた加入会見の場ではその一端が明かされていた。それは「育成」への強い関心だ。

「プレーを見てもらうことで、子どもたちにもっとサッカーに興味を持ってもらいたい」。当時は中心選手として期待される立場ということもあり、プレーによる技術継承への言及が主だった。それでも現役選手が「若い人たちにできる限りのことを教えたいと思っている」と力強く語る姿は印象的だった。

 そこで加入会見の質疑応答では、一つの質問をぶつけてみた。「サガン鳥栖ではアカデミーの選手と時間を共にすることもあると思うが、これから若い選手、子どもたちに伝えていきたいことはどういったことか」と。すると、こちらが想像していた以上に熱いメッセージが返ってきた。

「子どもたちに常に言いたいことですが、サッカーというのは“情熱”です。サッカーというのは“夢”です。学校やアカデミーに行って、サッカーを楽しんで、多くのことを学んでもらいたい。そして、多くの努力をしてもらいたい。サッカーは楽しむこと、チームで取り組むこと、そして夢を持つことが大事です。というのも、夢は教えることができません。まずは自分自身で夢を持って、それに向かって進んでいってほしいと思います」。

 その後、トーレスはチームに合流していったが、そうした強い情熱はすぐさま若手選手に大きな影響を及ぼしたようだ。当時19歳だったFW田川亨介(現FC東京)が「何でも真面目に取り組んでいる。自分はそこがおろそかになっていたし、彼の真面目さを見てそういう気持ちにさせられた」とこぼしたこともあった。

 そこで今回、引退会見の場でも再び育成に関する質問をしてみた。鳥栖は現在、アカデミー出身18歳のMF松岡大起がレギュラーに君臨。アカデミーも高い実績を残していることを受けて「育成年代の現状をどう思っているか。また、日本の育成年代でもっと高めていくべき部分はどのようなところか」といった趣旨のものだ。

 すると今度は、より具体的なビジョンが熱く語られた。

「サガン鳥栖のユースには素晴らしい選手たちがいて、松岡選手もトップチームに上がってきてレギュラーとしても試合に出ています。そこで重要なことは、クラブを強くするためには、まずユースの選手、トップチームに上がった選手たちが感謝、愛を持ってやっていくことだと思います」。

「高めていくべき部分に関しては、ユースの選手がトップチームに上がった場合、彼らはすでにプロのサッカー選手です。一番若い選手だとか、ユースの選手というくくりではなくなってきます。その中で自分が何ができるのかを常に日頃のトレーニングから全力で出していかないといけない思います」。

「ヨーロッパの若手選手たちは全員が自信を持っていて、堂々と誇りを持って、自分ができることを最大限にやっていると思います。そこは日本の選手たちも見習っていくべきだと思います。というのも、彼らは高いポテンシャルがあるんです。実際にはできます。ただ、自信がないことで見せきれていないところがあります」。

「そこを伸ばすことでチームもクラブも強くなっていくし、そうする環境をつくっていくことが大事なのではないかと思います」。

 トーレスはこの日、引退後はアドバイザーとしてクラブに残ることを表明。「特にユース、若手の選手育成に目を向けていきたい」と明かした。竹原社長によると、クラブはこれまでアヤックス、ユベントスなどと結んできた海外クラブとの業務提携をさらに広げていく意向。その中でも、トーレスが果たす役割は非常に大きなものとなりそうだ。

(取材・文 竹内達也)
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