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粘って、踏ん張って「強いチーム」になった西武台、埼玉奪還!

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優勝を喜ぶ西武台高イレブン

[6.23 インターハイ埼玉県予選決勝 西武台高 3-2 聖望学園高 NACK5]

 西武台が埼玉タイトル奪還! 令和元年度全国高校総体(インターハイ)「感動は無限大 南部九州総体2019」サッカー競技(沖縄)埼玉県予選決勝が23日に行われた。西武台高がFW谷直哉(3年)のハットトリックの活躍によって聖望学園高に3-2で勝利。4年ぶり11回目の全国大会出場を決めた。

「上手いチームではなく、強いチームへ」。過去3年間、埼玉で無冠だった西武台が見事な復活Vだ。今大会は、初戦から決勝まで全て全国出場歴を持つチームとの対戦。3回戦の浦和南高戦から正智深谷高戦、武南高戦と3試合連続でPK戦決着となったが、GK高橋クリス(3年)の好守などで乗り越えると、決勝も2点差を追いつかれながら突き放して歓喜に舞った。

 2月の県新人戦準決勝で昌平高に0-6で敗れ、4月の関東大会予選準決勝(対浦和東高)では3度のPKのチャンスを活かせずに敗退。「浦東に応援でも、気迫でも負けていた」(守屋保監督)という春から、指揮官は強さを選手たちに求めてきた。テクニカルよりも、しぶとく戦い抜く強さを発揮して奪還。守屋監督は「勝ったんだから埼玉では強くなっているんでしょうね。あとは全国で強くなっているのかということに、チャレンジするべき」と語っていた。

 全国で最後の代表決定戦となった埼玉決勝は、序盤から聖望学園が押し込んだ。ショートパスを繋ぎ、サイドから仕掛けてセットプレーを獲得。CB田中隼斗(3年)が激しいチャージで相手の起点を潰していたほか、各選手がクリアボールをしっかりと味方に繋ぐなど西武台に攻撃の糸口を与えなかった。

 だが、西武台はCB佐野慧至主将(3年)やCB関口凱心(3年)、MF今田剛(3年)を中心にカバーリングを徹底。また、各選手がボールホルダーに対してしつこくプレッシャーをかけて相手のパスをわずかに乱していた。そして13分、右サイドからFW大野田駿(2年)がドリブルで持ち上がると、期待のパサーMF村田智哉(2年)のループパスに反応した谷がGKと入れ替わる形で抜け出し、先制点を押し込む。

 ファーストシュートをゴールに結びつけた西武台はその後も、我慢強い守りを継続。ボールを保持されてもシュートコースを複数の選手たちが塞いで得点を許さない。そして、徐々に裏抜けを狙うMF岩田璃玖(3年)らを活用して相手の背後、ハイサイドへボールを入れる回数を増やした西武台は34分、最終ラインから左サイドへ展開。FW寺川洋人(2年)の左アーリークロスに飛び込んだ谷が右足ダイレクトで合わせて2-0で前半を折り返した。

 ただし、聖望学園の攻撃の質は高く、そのテンポの速さと精度の前に西武台は前半からボールの取りどころを限定できていなかった。寄せに行くものの距離を詰め切れずに繋がれ、後半も聖望学園のMF西澤脩瑛(3年)に2度、3度とスルーパスを通されていた。

 聖望学園は西澤やMF菅間一輝(3年)、MF石川祐希(3年)を中心にダイレクトパスを多用しながらラストパスにまで持ち込んでいく。だが、西武台は攻守に気の利くプレーを見せ、「元々パサーだったので、(パスを読んで)消すことができる子」(守屋監督)と評価されている右SB森下怜(3年)や左SB栗田海飛(2年)が内側に絞ってクロスをクリアするなど得点を許さない。

 それでも徐々に運動量の低下した西武台に対し、聖望学園は25分、左アーリークロスにファーサイドから飛び込んだ右SB島村颯汰(3年)がゴールネットを揺らすと、28分にも10番FW塚田悠太郎(3年)の右クロスをFW森田悠仁(3年)が頭で合わせて同点に追いついた。

 湧き上がる聖望学園スタンド。だが、FW細田優陽(1年)、MF高嶋亮佑(2年)、右SB村田康平(3年)を立て続けに投入して再び前に出た西武台は失点から5分後の33分、細田が左サイドから縦に仕掛ける。この折り返しを谷が左足ダイレクトでゴールに沈めて3-2。声量多く応援を続けていた控え部員たちに歓喜をもたらした。

 聖望学園は石川のスルーパスから森田がシュートを放つなど再び反撃。だが、GK伊佐山縁心(2年)の守る西武台ゴールを破ることはできず。西武台の佐野主将は「粘り強さというのは発揮できたので、良かったです。(応援には)感謝しかないですね、応援席、佐藤や福岡、酒井が『応援でも負けねえから』と言ってやってくれたので良かった」と喜んでいた。

 近年、埼玉では昌平が台頭。最近3年間で2度もインターハイで4強入りしている。それに対し、佐野は「(自分たちは)最近忘れかけられているんじゃないかと。ここで西武台の名前を出せて嬉しいです」と西武台の名を再び全国舞台で示せることに笑顔を見せた。

 これまでの戦い同様、決勝も前半から苦しい時間帯の連続だった。それでも守屋監督が「頑張るしか無いと。踏ん張って、踏ん張って、相手よりも一歩でも多く動いて、一回でも多く声をかけて。何しろ自分たちらしさがそれだから、耐えろと」と振り返ったように、勝つために各選手が2度追い、3度追いすることを厭わず、奮戦。そして、準決勝まで不発だった谷の活躍もあって壁を乗り越えた。

 ただし、全国で勝負するためにはまだまだ力をつけていかなければならない。指揮官は「(より)読みと勇気あるアプローチ、しつこさを植え付けられたら」と語り、攻撃面のレベルアップも期待。そして、選手たちには「埼玉1位を背負っていける振る舞いや行動を」と求めていた。佐野はインターハイでの目標について、「しっかり粘り強い戦いをして昌平を越えられるように。優勝できるように頑張りたい」と宣言。埼玉の頂点を勝ち取る「強いチーム」になった西武台が、次は全国を勝ち抜くチームになるように、課題と向き合いながら日常に取り組む。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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