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タレント充実のユニバ代表2連勝、ドリブラー金子拓郎が2発で魅せる「もっと自分の色を」

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2ゴールを決めたMF金子拓郎

[7.7 ユニバーシアード大会 日本4-1ロシア]

「昨日のシュート練習でも、同じような角度から決めていた。いいイメージで2点を取れたと思う」。松本直也監督は試合後、MF金子拓郎(日本大4年/札幌内定)の2ゴールについてそう振り返った。

「サイドのポジションに入る選手の仕掛けが焦点になる」。指揮官がそう語るとおり、サイドからの攻撃は日本の大きな武器だ。トゥーロン国際大会でも活躍した、高い技術をもつMF三笘薫(筑波大4年/川崎F内定)、目の覚めるようなドリブルでサイドを切り裂く“法大のメッシ”ことMF紺野和也(法大4年/FC東京内定)、そして、この試合でもFW林大地(大阪体育大4年)の先制点をお膳立てした、スピードスター・小柏剛(明治大3年)など、タレントには事欠かない。

 そんな中で相手DFの間を縫うようなドリブルでチャンスを演出したのが金子だった。まさに“スルスルと”といった表現がピッタリのドリブルでゴール前に攻め上がり、ゴールを狙う。左足から放たれる正確なキックも魅力のひとつ。この試合では、20分に右SBの中村帆高(明治大4年)とのコンビネーションから1点目を決めると、その4分後にはFW旗手怜央(順天堂大4年/川崎F内定)のパスを受け、距離のある位置から狙いすましたシュートでゴールを奪った。

「得意な角度、得意な位置からのシュートだったので自信はありました。枠内を意識して抑えめに打ったのですが、うまく入ってよかった」

 そう言って試合後に笑顔を見せた金子だが、一昨年には所属する日本大が関東リーグから東京都リーグに降格するなど、厳しい現実に直面した。

 昨年の秋、日大は東京都リーグで上位の成績を残し、関東リーグ昇格を懸けた関東大会に出場。山梨学院大との昇格決定戦は延長戦に突入する熱戦となった。延長戦では山学大が追加点をあげて2-1でリード。そのままアディショナルタイムに突入すると、終了間際に日大がフリーキックのチャンスを獲得する。ポジションについたのは金子だった。

「あのフリーキックのボールをセットするときは、自分の人生のターニングポイントというつもりでいました」

 金子が左足を振り抜いて放ったキックがゴールネットを揺らし、日大は土壇場で同点に追いつく。さらにPK戦を勝ち抜いて関東リーグに復活。1年次から試合に出場していた金子はすぐに代表チームスタッフの目に留まり、瞬く間に全日本大学選抜に選出。そしてついにはユニバーシアード代表として、ここイタリアの地を踏むことになった。「本当は、あのフリーキックの前にあったチャンスを決めなければならなかった」とは言うものの、その左足でわずかなチャンスを手繰り寄せたことは間違いない。

「このチームには薫や和也のように、いろいろなタイプのドリブラーがいる。でも自分は彼らとはまた違うタイプなので、もっと自分の色を出していければ」

 決勝戦までは中1日の3連戦。ますます厳しい戦いとなるが、自信のチャンスを手繰り寄せた金子の正確な左足で、日本の勝利も呼び込みたい。

(取材・文 飯嶋玲子)

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