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ブラサカ界の「将来の背番号10」、15歳の園部優月が味わった試練

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15歳の園部優月(中央)は収穫と課題が見えた(写真:松本力)

[7.7 アクサブレイブカップ決勝 free bird mejirodai 1-7 埼玉T.Wings]

 ブラインドサッカーのクラブ日本一を決める「アクサブレイブ杯」の決勝に初めて進出したfree bird mejirodaiは1-7で埼玉T.Wingsに完敗した。前半3分、筑波大付属視覚特別支援学校に通う15歳の園部優月が先制ゴールをあげたが、その後は同年代の合宿でしのぎを削り、7ゴールを挙げた相手の17歳、菊島宙に結果、内容ともに圧倒された。

「(先制ゴールは)正直、うれしかった。その後、何本かチャンスあったのに、ミートできなかった。菊島選手にも当たろうとしたんですが、サラっとかわされてしまった。雨でも揺るがない技術をあげたいです」

 3歳の頃には全盲になってしまったが、その分、認知能力が高い園部について、日本代表の高田敏志監督から「将来、背番号10を背負う選手」とその潜在能力を高く買われているが、決勝は試合中に左足がつり、2度、ベンチに下がった。 

「普段、足がつることはない。あんなにつったのは初めて。自分でもびっくりしています」と園部はうなだれた。

 free bird mejirodaiの山本夏幹監督は園部に対し、期待が大きい分、あえて突き放すようなコメントを残した。

「(園部は)伸びしろたくさんある選手。いろんな方に見ていただけていることに謙虚にありがたいと感謝しながらも、サッカーに対する取り組みを自分で変えていかないといけない。結局、足がつってしまっているわけで、(途中で一時的に)引っ込まないとまだ戦えないということです。たとえば(日本代表の)川村怜選手、黒田智成選手、加藤健人選手、相手の菊島宙選手、ウチの鳥居(健人)はみな、こういうハードな試合こそ、試合を通じて絶対に戦いきる。『点をとっているからOK』ではない。もっと(目標は)先にあると思う」

準優勝のfree bird mejirodai。メダルをかけた選手が園部優月(写真:松本力)

 結成3年目で決勝進出。鳥が飛ぶごとく、一気に上昇できた背景には、山本監督や鳥居が努力して作った環境がある。筑波大学理寮科教員養成施設の存在によって体のケアを施し、全盲の選手たちの身の回りのケアまでしてれた。さらに今年から本格的に日大の教授にお願いして、試合中などにGPS機能をつけて、心拍数、走行距離、加速度などを測定し、選手のパフォーマンスを科学的にアプローチしている。

「まずはそういった方々への感謝を忘れないようにしたい。その上で、2020年の東京五輪パラリンピックに続くので、若い選手を日本代表におしあげていくために僕らがやるべきことは残されていると思っています」

 山本監督とともに鳥居をはじめ、園部や日本代表強化指定選手に選ばれている丹羽海斗、ナショナルトレセンに選ばれている吉備津蒼太と有望な若手選手が多い。一羽、一羽、大きな翼を持つ鳥に育て、来年の優勝を目指す。

(取材・文 林健太郎)

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