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兄が1年間の離脱、そこで変わった弟…鳥取U-18を支える坂本ツインズ、意地の最終節へ

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鳥取U-18のDF坂本玲(3年・左)、DF坂本敬(3年・右)

[7.22 日本クラブユース選手権U-18大会C組第2節 東京Vユース 7-0 鳥取U-18 前橋フC]

 ガイナーレ鳥取U-18にとっては2年ぶり6回目の全国大会。32歳の若き指揮官が好チームをまとめ上げている一方で、ピッチ内の土台を支えているのは一組の双子の存在だ。1年間にも及ぶ負傷を乗り越えてきた主将の兄、リーダー不在の間に成長を遂げてきた弟。そんな二人に話を聞いた。

 鳥取U-18のDF坂本敬、DF坂本玲はいずれも2001年7月5日生まれ。一卵性双生児ということで容姿は瓜二つだ。トップチームと同じ3-5-2システムを採用している中、ともに3バックの一角を任されていることも共通点。しかし、それぞれがチームで担っている役割は少しばかり異なる。

「僕は前で頑張るタイプで、玲はどちらかというと引くタイプ」(兄・敬)。左腕に巻かれたキャプテンマークにも象徴されるように、兄の敬は苦しい時間帯にチームを鼓舞するシーンが目立ち、プレーからもアグレッシブな姿勢があふれ出ている。「頑張る部分や球際の部分は自分のストロング」とアピールポイントは明白だ。

兄のDF坂本敬(3年)

 一方、弟の玲は「敬のほうがチームを盛り上げようという時に向いている。そのぶん、僕は指示とかそういった声をかけられたらと思っている」と自らを評価する。任されているポジションはリベロ。自陣から小気味よくボールをつなぐスタイルの中で、「頭を使って指示を出すことを意識している」という頭脳派だ。

弟のDF坂本玲(3年)

 しかし、そうした立ち位置の違いは近頃少しだけ変わってきているという。1986年生まれの32歳、今季からU-18年代を任されている小山優監督は「玲は静かやったらしいんです。ただ、敬のほうが1年くらい足を骨折したことでやれていなかった。そこで自分がやらなきゃいけないということになったみたいです」と明かす。

「(兄・敬の離脱によって)言う人がいなくなったので、『自分が言わなきゃな』って思いました。自分自身、きつく言ったりできない人だったので苦しかったけど、練習中は自分が嫌われ役になって、人に厳しく言ったりするところを意識した。それができていったから今があると思います」(弟・玲)。

 一方、兄の敬も「人に声かけたり全体に声をかけることは増えた」という弟の成長に目を見張る。また「外から見ていてサッカーしたいという気持ちはだんだん強くなったし、あとは自分が中に入った時にどこを変えられるのか、自分だったらどうできるかを考えていた」と影響される部分もあったという。

 2人は鳥取市の鳥取SCプエデ出身。幼少期にはガイナーレ鳥取の応援に熱心で「吉野さん(強化育成部長の吉野智行氏)とかを見ていた。JFL優勝の時とかめちゃめちゃうれしかった」(兄・敬)と思い出を振り返る。また実は7歳上の兄・創さんもU-18卒業生。2012年、初めて全国大会に出場した世代の主将であり、2人が「憧れていた」存在だ。

 だからこそ、今大会にかける思いは強い。ここまでの2試合は1得点10失点で2連敗中。しかし、自陣から粘り強くボールをつなぐ姿勢、相手の動きを見ながらパスの出口を探していく姿勢からはチームの日頃の鍛錬が垣間見える。

「キャプテンなので個人個人が思い切って前向きにプレーできるように声かけしていきたい。また自分の人生がかかっているので、自分の特長を出すことを意識している。攻撃では前にパワーを出せる選手になりたいし、守備ではもっと我慢してまとめられる選手になりたい」(兄・敬)。

「あと1試合、しっかり勝つことを目標にしてチーム一丸となって戦いたい。また自分のプレーがこの2試合あまり出せていないので、自分の特長、自分の良さを出していきたい。ここで経験したことは中国地方では経験できないので、どうトレーニングに落とし込んで、どうJユースに落とし込んでいくかが大事になる」(弟・玲)。

 24日に行われる最終節の相手は、ここまで鳥取U-18が敗れてきたチームに1勝1分という戦績を残し、引き分け以上でグループリーグ突破を決められる立場にある大分U-18。クラブの意地を見せるため、そして個人の成長を見せるため、最後まで諦めずに強豪に挑む。

(取材・文 竹内達也)
●第43回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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