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「新神村スタイル」をスムーズに実践、神村学園が6ゴールでベスト16進出

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神村学園高濱屋悠哉の3得点など6-1で快勝した。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[7.27 総体2回戦 神村学園高 6-1 西原高 西原町陸]

 神村学園高(鹿児島)が國學院久我山高(東京1)を下した1回戦に続き、2回戦も6-1と快勝してベスト16入りを決めた。前半17分に樋渡鯉太郎(3年)が先制点を決めると、前半だけで5得点のゴールラッシュ。シャドー(2列目のインサイド)に入る濱屋悠哉(3年)は25分、31分、35+4分と前半だけでハットトリックを記録する圧巻の活躍だった。

 有村圭一郎監督は会心の勝利をこう振り返る。

「ボールを握れるとは思っていたんですけど、できるだけミスしないようにやろうということで臨ませました。最初ちょっと硬かったですけど、ボールを動かせる状況ができてからはリズムよくできた」

 夏場の連戦となるインターハイはボールを握れるチームが有利だが、選手たちの体力を奪う悪い失い方は禁物だ。指揮官はこう述べる。

「ミスがたくさん出てしまうと、その分追いかけて取らないといけないのでキツい。自分たちのボールをできるだけ大事にして、できるだけ体力の消耗を減らす。気持ち的な凹みもミスが少なければ避けられる」

 神村学園は伝統的に技術を重んじるチームで、2009年度の高校サッカー選手権では宮市亮がいた中京大中京を相手に10-2と大勝した実績も持っている。しかし、当時の彼らはドリブルやワンツーパスを駆使して、狭い距離感から崩すサッカーだった。

 今の神村学園は2014年に就任した有村監督のもとで、ピッチを広く使い、立ち位置を工夫した「新神村スタイル」に取り組んでいる。今大会はその成果を発揮し、ベスト16入りを決めた。

 布陣は[4-1-4-1]で、攻撃時には両サイドバック(SB)が内側に絞る[2-3-4-1]の形を作る。特にSBは神出鬼没の動きで、攻撃のフリーマンとしてあらゆる働きを受け持つ。3ボランチの一角として組み立ての起点となり、右中間、左中間のハーフスペースから前線に飛び出していく。

有村監督は言う。
「(右SBの)中島吏九も(左SBの)下川床勇斗もシャドーの選手。あそこに配置して組み立てさせる狙いは持っています」

 Jリーグでも取り入れているクラブが増えている「5レーン理論」を取り入れた攻撃にも見えるが、指揮官は「流行りを追いかけてやっているわけではない」と釘を刺した上でこう続ける。

「見てもらっても分かるように、ウチはサイズがない。そんなチームでも勝てる状況を作り出して上げたいというのが、一つの思いです」

 西原高(沖縄2)戦の先発を見ると、最長身のアン・デービッド(2年)が178cmで、11名の平均身長は170cm以下。そんなチームが結果を出すにはスペースを空け、技術を生かしてそこを的確に突いていくしかない。

 ただ、攻撃のメカニズムは意外とシンプルだ。有村監督はこう説明する。
「ワイドがSBの位置まで落ちてくるんですけれど、そのときに相手のSBがついてきたらウチは剥がせるチャンスです。ついてきたら(シャドーが)背後に出るし、ついてこなかったらワイドの足元に入れる。SBは横についてビルドアップしていく形でやっています」

 濱屋もこう述べる。
「SBが内絞りしていたらワイドが空くし、守備がワイドについていったら裏が空きます。選択肢をいくつか持っていて、相手がやってきたことの逆をする意識でやっています」

 ただでさえ技術の高い神村の選手たちが、良いスペースで前向きにボールを持ててば、その技術はより引き出される。その戦術は選手を縛るものでなく、彼らの能力を引き出すものとして機能している。

 もっともワイド、SBが同時に前線に出ていけば、奪われた場合にカウンター攻撃を受けるリスクはかなり上がる。しかし、有村監督は選手への信頼を口にする。

「この戦い方をずっとやっているので、本人たちもこのパスがマズいとか、どういう状況ができたらやられるということが分かってきている。危ないパスが出たときは、守備の切り替えも速い。そこに対する状況は上手く作り出せる様になっている」

 決して難易度の低い戦術ではないが、1年生からこのスタイルに取り組んでいる選手たちは、スムーズに「新神村スタイル」を実践していた。様々なスタイルが競い合う高校サッカー界の中でも、神村は際立つ個性を見せている。

(取材・文 大島和人)
●【特設】高校総体2019

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