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参加52校の中で“一番悔しい負け方”を経験した富山一。優勝旗掲げた桐光学園の姿忘れずに冬へ

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富山一高は“紙一重の差”を埋めて選手権へ。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.1 総体決勝 富山一高 0-1 桐光学園高 金武町フットボールセンター]
 
 悔しい気持ちを必死に抑えながら、桐光学園が優勝旗を掲げる姿を目に焼き付けた。富山一高は28回目のインターハイ出場で初の決勝進出。その決勝では序盤から相手3バックの背後へのボールを集中してリズムをつかみ、吉藤廉(3年)、丸山以祐(3年)の両DFのロングスローやCK、FKからゴールを目指した。

 桐光学園高の注目エースFW西川潤(3年)にボールが入れば、1人目がいなされても2人目、3人目が寄せ阻止。前半こそはシュートゼロに終わった富山一だが、前線からの守備、プレスバック含めて塊になって戦っていたチームは後半にチャンス、シュートの数を増やす。

 左WB真田滉大(3年)の左足ミドルなどでゴールを脅かし、25分には右ロングスローの流れからボールを繋いで準決勝決勝点のMF小森登生(3年)が左足シュート。この試合最大の決定機だったが、シュートは飛び出した桐光学園GK北村公平(2年)に止められてしまう。

 これらのシーンの他にも2度、3度と決定的なクロスがゴール前を通過。1点を奪えなかった富山一は後半ラストプレーの失点で涙をのんだ。まさに“紙一重の差”での準優勝。だが、大塚一朗監督とともに指揮を執った加納靖典コーチは「その紙一重が凄く大きいんじゃないかって。僕も優勝するために何か足りなかったんじゃないかと思うし、選手・スタッフみんなが多分その思いを持っていると思います」と首を振った。

 桐光学園をスカウティングし、準備してきたセットプレーや攻撃の形を表現することはできた。だが、あと数cmの精度やゴールを奪う・守るの執念を欠き、コンマ数秒の差で遅れていたことも確か。加納コーチは「そこのこだわりというのを普段の練習やこれまでの試合の中で持っていたかが大事。そこを彼らがまた振り返って、トレーニングの中でフィードバックしてくれないと一皮剥けない。(この敗戦を)ある意味ポジティブにとらえて次に繋げたいなと思います」と語った。

 強豪との激しい攻防戦を演じた5試合。加納コーチは「どんな全国大会もそうだと思いますけれども、1試合1試合子どもたちが成長してくれたし、サッカーのパフォーマンスだけじゃなくて、メンバーじゃない子たちも自分を犠牲にして色々なサポートをしてくれたり、マネージャーも献身的にやってくれたし、みんながチームのために献身的にやってくれて凄く成長してくれた大会だと思います」と目を細める。昨年、準々決勝で大敗した悔しさを持っていた選手たちによる主体的な声がけ、サポートがあったからこその全国2位でもある。

 選手権ではあとわずかで掴み取ることのできなかった日本一に再挑戦する。加納コーチは「インターハイで“一番悔しい負け方”をしたのは彼らだと思うから、子どもらに言ったのは『優勝旗、桐光が掲げるの絶対に目を離すなよ』『次、オマエらが優勝旗を掲げるためにこの悔しさを忘れてはいけないよ』という話をしたので、きっと次に繋げてくれると期待しています」と期待し、主将のMF高木俊希(3年)は「緑の優勝旗をみんなで掲げようと言ってきたんですけれども、掲げられなかった。『あの桐光が喜んでいる姿をみんなで目に焼き付けて、この悔しさをバネに冬、日本一になれるように』っていう思いで加納先生は言ってくれたと思うので、優勝旗を次は自分たちが掲げたいと思います」と誓った。臥薪嘗胆。この夏、52校の中で“最も悔しい敗戦”を喫し、優勝校の姿を目に焼き付けた「トミイチ」が必ず冬のファイナルで勝って優勝旗を掲げる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2019

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