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Jリーグも8月から“新ルール”開始。2019-20年のサッカーどこが変わる?

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誤審問題も取りざたされる中、新ルールがスタートする

 Jリーグでは8月2日のJ1第21節以降、2019-20シーズン向けのサッカー競技規則が適用される。国際的には女子W杯やコパ・アメリカなど、国内では高校総体やクラブユース選手権といったアマチュア大会ではすでに採用されているが、この機会にあらためて内容を確認しておきたい。

■ハンド基準の具体化
 もっとも幅広い改正が行われたのはハンドに関する項目。といっても、これまでの基準が大きく見直されたわけではなく、より判断しやすいように具体化されたという形だ。「反則」「通常は反則」「通常は反則ではない」の3基準が新たに設けられ、主審の主観によるグレーゾーンが縮小されたと言える。

▼「反則」
①手や腕をボールの方向に動かす場合を含め、手や腕を用いて意図的にボールに触れ る。
②ボールが手や腕に触れた後にボールを保持して、またはコントロールして、「相手競技者のゴールに得点する」「得点の機会を作り出す」。
③ゴールキーパーを含め、偶発的であっても、手や腕から相手チームのゴールに直接得点する。

 ①はこれまでと同様。②と③は新たに登場した基準だ。今後は手や腕にボールが当たった後に、ボールがゴールに入ったり、ゴールにつながる決定機につながったりした場合は、意図的な行為でなくてもハンドの反則となる。

▼「通常は反則」
①手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくした。
②競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにある。

 今回の改正では「手や腕の位置」の重要性が高まった。これまでのルールでも「手や腕の位置」は基準の一つに採用されていたが、あくまでも「意図的かどうか」を判断するための一つの材料との位置付け。しかし、今回の改正によって「反則かどうか」自体を判断する基準に格上げされた形だ。

 もっとも、「反則」ではなく「通常は反則」という表現のとおり、そこに主審の主観が介在する余地は少なからずある。女子W杯決勝トーナメント1回戦の日本対オランダ戦では、DF熊谷紗希のハンドが物議を醸したが、今後も「どこまでが不自然なのか」といった議論は続くことになりそうだ。

 なお、規則には「競技者が意図的にボールをプレーしたのち、ボールがその競技者の手や腕に触れた場合を除く」(=ハンドではない)という付記もなされている。たとえば選手が意図的にボールを蹴った直後、そのまま自身の手や腕に当たったケースだ。もしその場合、手や腕が不自然な位置にあったとしてもハンドの反則にならない。

▼「通常は反則にならない」
「反則」「通常は反則」にあたる場合を除いて…
①競技者自身の頭または体から直接触れる。
②近くにいた別の競技者の頭または体から直接触れる。
③手や腕が体の近くにあり、競技者の体を不自然に大きくしていない。
④競技者が倒れ、体を支えるための手や腕が体と地面の間にある。ただし、体から横または縦方向に伸ばされていない。

 今回の改正では「反則にならない」項目が新たに明示された。これにより、議論が分かれそうな場面でもノーファウルの判断がしやすくなった。もっとも、これらの基準はあくまでも「反則」「通常は反則」でないことを前提にしたもの。①、②にあたる場合でも「手や腕の位置」が悪ければファウルを取られる点は注意しておきたい。

■魅力を高めるためのルール変更
 今回の競技規則改正ではハンドの他に、サッカーをより魅力的なものにしていくためのルール変更がいくつか行われている。とはいえその結果、チームが取るべきゲームプランにも大きな影響が出てくることになりそうだ。あわせて確認しておきたい。

▼FKの壁入り禁止
 今回の改正ではフリーキックの項目に「フリーキックが行われるとき、3人以上の守備側チームの競技者が作る『壁』から、攻撃側チームの競技者が1m以上離れていない場合、間接フリーキックが与えられる」という文章が追加された。すなわち、攻撃側の選手は守備側の「壁」から離れる必要が出てきた。

 この改正により、FKの壁に両チームの選手が入り乱れることがなくなり、迅速にプレーが再開されるようになる。その一方、攻撃側選手が壁やGKの視界を妨害することが難しくなるため、攻撃側にとってはやや不利なルール変更となった。

▼ゴールキックの変更
 これまでゴールキックは「ボールがペナルティーエリア外に出た時」にインプレーだったが、今回の改正により「ボールが蹴られて明らかに動いた時」にインプレーとなる。インプレー時点が早くなることで、プレー時間をより長くするというのが狙いのようだ。

 もっともこの変更によって、攻撃側の選手はペナルティーエリア内でゴールキックを受けることができるようになり、戦術的な幅が広がる。また相手競技者はこれまでどおりGKが蹴るまではエリア外にいなければならないため、自陣からパスをつないでいくチームにとっては有利に働きそうだ。

 なお、先行導入されたU-20W杯で『ゲキサカ』が調査した結果、大きく分けてパターンは5つ。①エリアに誰も入らずGKがロングキックを蹴る、②エリア内に1人のCBが入る、③エリア内に2人のCBが入る、④エリア内に2人のCB+1人のMFが入る、⑤エリア両脇にショートパスを蹴るなどがあった。

 ちなみに、相手競技者がエリア内に残っている場合でも、急いでゴールキックを蹴ることはできる。しかし、GKが蹴った瞬間にボールはインプレーとなるため、相手競技者はすぐさまパスカットをすることが可能。そのため、失点に直結するリスクを避けたいGKにとっては注意が必要となりそうだ。

▼交代時は近くの境界線から退場
 これまで交代が告げられた選手はハーフウェーライン付近からピッチを去るのが一般的だった。しかし今回の改正により、審判が特定の指示をした場合を除き「競技者は境界線の最も近い地点から出なければならない」という決まりとなった。

 改正の目的は交代による時間稼ぎを防ぎ、競技の魅力を高めること。その一方、活躍した選手に対して行われるスタンディングオベーションなど、スタジアムの盛り上がりに欠かせないシーンがなくなることも懸念されそうだ。

▼コイントスのボール選択
 これまでコイントスでは、勝ったほうがエンドを選ぶ(=「前半に攻めるゴールを決める」)ルールだったが、今回の改正でボールを選ぶ(=「キックオフを行うかを決める」)ことができるようになった。キックオフから相手に圧力をかけたいチームにとっては朗報だ。

 なお、『ゲキサカ』では先行導入されていたU-20W杯で調査を実施。そこではボールを選ぶチームに比べ、これまでどおりにエンドを選ぶチームが優勢だった。ちなみにU-20日本代表は「ボールを触ったほうがリズムが出る」といった狙いで、コイントスに勝った場合は常にボールを選んでいた。

▼ドロップボールの変更
 これまでドロップボールは両チームの選手が参加し、先にボールを触ったほうが相手チームにボールを返すのがマナーとされていた。しかし、今後は「最後にボールに触れたチームの競技者の1人」だけが参加し、「他のすべての競技者は、インプレーになるまで4m以上ボールから離れなければならない」ことになった。

 またこの時、必ずしもボールを相手に返す必要はない。すなわち、敵陣マイボールでドロップボールが行われた際には、すぐにチャンスにつながる場面が出てくるため、競技がよりスピーディーに行われることが期待されている。

 さらに主審の扱いも変化。審判員にボールが当たった後に①チームが大きなチャンスとなる攻撃を始める②ボールが直接ゴールに入る③ボールを保持するチームが替わる—場合はドロップボールでの再開となる。今後は「主審は石だと思え」という常套句は通用しなくなりそうだ。

▼決定機阻止でもリスタート可能に
 これまでは「主審が警告または退場と判断した場合、懲戒の処置をし終えるまでプレーを再開させてはならない」というルールがあったため、もしアドバンテージが判断されるような状況であっても、カードが提示されるまでプレーを再開することはできなかった。

 しかし、今回の改正では「ただし、主審が懲戒の罰則の手続きを始めておらず、反則を犯していないチームがすばやくフリーキックを行って、明らかな得点の機会を得た場合を除く」という文言が追加。攻撃側がチャンスを続けたい場合、急いでリスタートすることが可能になった。

 これにより、チャンスシーンがファウルによって途切れさせられることが少なくなり、よりダイナミックなサッカーが期待できるようになる。しかし、もし決定機阻止による退場が適切な場面でも、リスタートした場合は警告処分に変更。「攻撃側の決定機は阻止されていない」という扱いになるためだ。

■その他、細かい主な変更点
・監督・コーチもカードの対象に(行為者が特定できない場合は監督が処分)
・柄物のアンダーシャツが可能に(その場合はユニフォームと同じ柄に限る)
・GKのスローイングが相手ゴールに入った場合は相手ゴールキックで再開
・言葉による反則は間接FKで再開
・PKが蹴られるまでの間、GKはポスト、バー、ネットに触れてはならない

■終わりに
 Jリーグでは、8月2日に行われるJ1第21節のヴィッセル神戸対ガンバ大阪戦が新ルールの初戦。翌日以降に順次行われるJ2リーグ、J3リーグも新しい競技規則で行われる。すでに各クラブ・選手たちには講習会などが行われているため、新ルールを味方につけるような戦術を取るチームもすぐに出てきそうだ。

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