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[福島復旧・復興祈念ユース大会]「毎年、この夏で橘は強くなる」。インハイ4強から切り替えて歩み出した京都橘

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前半34分、京都橘高はFW西野太陽が右足ダイレクトで決勝ゴール

[8.5 福島復旧・復興ユース大会 京都橘高 4-1 帝京安積高 熱海サッカー場]

 5日、震災からの復旧・復興を祈念し、また福島県サッカーの発展と全国各地から参加する強豪校の強化を目指す「第8回 福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会」第3日目が行われた。インターハイベスト4の京都橘高(京都)と地元・帝京安積高(福島)が対戦。京都橘が4-1で快勝した。

 この日、試合後に次の遠征地・福井県までバス移動する京都橘は、午前中に2連戦。これが、2試合目ということもあって米澤一成監督は「全然動けていないです」と首を振る。後方から丁寧にボールを繋ぐ帝京安積に保持される時間が増えていた。だが、京都橘は相手にチャンスらしいチャンスを作らせない。そして、攻撃のスイッチを入れてから、素早いパス交換、仕掛けを見せていた京都橘がゴールを重ねる。

 23分、最終ラインでビルドアップした京都橘は、右SB旭奈滉人(2年)の右アーリークロスでDFと入れ替わったFW梅村脩斗(3年)がGKもかわして右足で先制ゴール。その後も右サイドのスペースを突くMF湊麟太郎(3年)から決定的なラストパスがゴール前に入っていた。

 前半終盤、京都橘は高い位置でのインターセプトからボールを支配。左右へボールを動かし、前線ではインターハイでも活躍した梅村とFW梅津倖風(3年)の“梅・梅コンビ”が強さと献身性でチャンスに絡む。そして34分、梅津との連係で右サイドを抜け出した湊がクロス。これを、逆サイドから走り込んできたU-17日本代表候補FW西野太陽(2年)が右足ダイレクトで合わせて2-0とした。

 一方、MF穂積竣佑(3年)とMF残間大翔(3年)を軸にボールを繋いで攻める帝京安積は後半6分に狙い通りの崩し。右サイドでMF植村翔流(3年)のスルーパスを引き出した穂積が中央へ折り返す。これを交代出場MF廣野諒(3年)がシュート。こぼれを自ら押し込んで1点を返す。今年、悲願の福島制覇を狙う帝京安積は、GK菅原諒土(3年)の好守などもあり、強豪に食らいついた。

 だが、京都橘は梅村が3、4人に囲まれても強引に抜け出すなど存在感。3点目を狙って攻め返すと11分、カウンターから左SB渋谷勇希(3年)の縦パスで梅村が抜け出す。そしてGKとの1対1を制して2点差とした。

 京都橘は2試合出続けたMF志知遼大(3年)やMF久保成世(3年)らが奮闘。DFライン背後へのボールもCB藤橋怜士(3年)とCB小山凌(2年)、GK郷田凪砂(2年)が処理するなど、相手にボールを持たれても隙無く守り続ける。逆に京都橘は後半26分にダメ押し点。敵陣でのインターセプトからドリブルで持ち込んだMF田中慶吾(3年)が、右足シュートを決めて試合を締めた。

 京都橘はインターハイで初のベスト4進出。準決勝で優勝校の桐光学園高(神奈川)と対戦した京都橘は主導権を握って試合を進めながらも1点を奪えず、後半終了間際の失点によって敗れている。

 紙一重の敗戦だった。選手権で全国準優勝を経験している京都橘だが、インターハイの3位は初めて。チームの歴史を変えたことは確かで、満足感を抱いている選手もいるようだ。だが、米澤一成監督は「(彼らにとっては)1回目なのでそれ(満足感)があるかもしれない。でも、(選手権へ向けて切り替えて)やらないといけない。ここへ来て緩いです」と指摘し、全国3位という結果よりも「次、次ですね」と先を見据える。

 京都橘の目標は日本一。それを本気で狙っているだけに、余韻に浸っている時間は無い。そのことを理解している選手もいる。志知は「ベスト4と言って良いこともないし、全国制覇を目指してやってきているので、チーム内の競争に勝って選手権でのメンバーに入って、選手権でリベンジ果たせるように頑張っていきたい」と決意を口にした。沖縄での好成績から全員が切り替え、目標達成のために一歩を踏み出さなければならない。

 インターハイで敗退した3日後には福島復旧・復興大会に参加。大黒柱のMF佐藤陽太主将(3年)や俊足MF高木大輝(3年)が福島・福井遠征に不参加となっており、限られた人数、戦力で強豪との対戦に臨んでいる。

 早くも鍛錬の日々が始まっているが、それでも梅村は「毎年、この夏で橘は強くなる。『これ乗り越えたら絶対に強くなる』ってみんなで言っているし、インターハイの負け方をもう絶対にしたくないので、最後まで頑張りたいと思います」と語り、志知も「メンバーが少ないので1日2試合ですし、とてもハードなんですけれども、この夏乗り越えたら強くなると思うので、この夏踏ん張って頑張って戦っていきたい。インターハイみたいに悔しい思いをしたくないので、これからもっと強くなって選手権では絶対に日本一になります」と力を込めた。全ては選手権で京都予選を突破し、今度こそ日本一を掴み取るため――。悔しさも力に京都橘が逞しく成長を遂げる。

(取材・文 吉田太郎)

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