beacon

PK違反は厳しくチェック、審判への抗議で“即退場”例も…新ルールが「明確化」

このエントリーをはてなブックマークに追加

新ルールの見直し、明確化が早くも行われた

 国際サッカー評議会(IFAB)の取締役会は今月21日、2019-20シーズン向けの新競技規則に関して、いくつかの点で文言の「明確化」をする臨時声明を発表した。ペナルティキック、選手交代、ドロップボール、チーム関係者の処分における項目で一部、実質的な解釈の変更が行われた形だ。

 19-20シーズンの競技規則に関しては、旧ルールから大幅な変更が行われたこともあり、世界各国で判定基準のブレが指摘されていた。IFABの声明でも、ルールの明確化は「多くの要請」によるものだと説明。明確化された基準の中には、8月から新ルールが導入されているJリーグで議論を巻き起こしたケースもあった。

■PK時のGK、どこまで前に出ても良い?

 Jリーグの新ルール導入にあたって、ここまで最も大きな話題を呼んだのはJ1第22節のFC東京ベガルタ仙台戦であろう。後半14分、FC東京のFWディエゴ・オリヴェイラのペナルティキックを仙台のGKヤクブ・スウォビィクが正面で阻んだ場面だ。

 キッカーがPKを蹴る瞬間、GKはゴールライン上にいなくてはならないが、この時スウォビィクは両足がゴールラインから十数cmほど前に出ていた。このため、スウォビィクには規則どおりにイエローカードが提示され、PKの蹴り直しが認められたD・オリヴェイラは2度目のキックで得点。試合はこれが決勝点となり、FC東京が1-0で勝利した。

 試合後、仙台の渡邉晋監督は審判団に猛抗議を行い、記者会見でも「あのPK判定は非常に厳しい」(仙台公式サイトより)と述べた。たしかにこれまでは、GKの足がゴールラインをわずかに飛び出していたからといって、不問にされるケースが多く、あまり厳密な運用は行われていなかったと言える。

 もっとも、そうした“グレーゾーン運用”は旧ルールの話だ。新ルールでは「守備側のGKは少なくとも片足の一部をゴールラインに触れさせているか、ゴールラインの上に位置させていなければならない」という文言が追加。これまで「両足」判定が通例だったため、「片足」では自由度が増す一方で、わずかな違反も見逃されなくなったのだ。

 新ルールが先行導入されたU-20W杯、女子W杯などでもこうした“厳格運用”が一般的となっており、今回のIFAB声明でも「より大きな自由を得るからには、GKはルールをリスペクトする必要がある。また審判員もGKが違反をした場合はキッカーに蹴り直しをさせることを確実に行っていくべきだ」と強調されている。

 またVARが採用されている試合では、厳格運用はさらに徹底される見込みだ。声明では「VARはいかなるGK、キッカーの違反もチェックをしなければならない」と強調。今季のJリーグではルヴァン杯での導入が予定され、来季以降はリーグ戦での採用も待たれる中、GKにとってはわずか数cmの立ち位置に気を払う必要がありそうだ。

■一方、GKを救済する動きも

 試合の決着がつかない場合に行うPK戦では、GKは常にイエローカードを受けるリスクを抱えているが、場合によってはPK戦中に2度目の警告で退場処分を下されてしまうことも考えられる。PK戦では選手交代が許されていないため、もしそうなった場合はフィールドプレーヤーが代役を務めるしかなく、試合を壊す危険性もはらんでいる。

 そこでVAR採用試合に限り、PK戦でGKがゴールライン飛び出しに関する違反を犯した場合でも、イエローカードが提示されないという声明が出された。すでに女子W杯、コパ・アメリカなどではこの暫定措置が取られていたが、あらゆるリーグにも広げられた形だ。今回は改正という形ではないが、来季の競技規則には正式に記されるかもしれない。

■交代時にイエローカードも

 新ルールでは「交代で退く競技者は、主審から指示された場合を除き、境界線の最も近い位置からフィールドを出なければならない」という文言が追加されているが、現状ではあまり守られていない。

 そこで、今回のIFAB声明では「明らかな安全上の理由や、ハーフウェーラインですみやかに退くことを主審が許可した場合を除き、この規則は厳格に実施されるべきである」と強調。もし、それに反する場合はイエローカードが提示されることが述べられている。

■新たな「審判は石」ケースが

 新ルールでは「ボールが審判員に当たり、ゴールに入ったり、攻守が変わったり、それにより新たな攻撃が始まったりした場合はドロップボールで再開される」という項目が新設された。これにより「審判は石と同じ」という扱いは一部なくなった。

 ところがそこで問題になったのは、審判にボールが当たった後、タッチラインやゴールラインを割った場合の処理。もしそのままスローインやゴールキック、コーナーキックで再開するのであれば、相手側ボールになるため、「攻守が変わった」に該当するという解釈が可能になるためだ。

 もっとも、今回の声明によれば、このルールの適用は「インプレーにとどまっていた場合」に限るとされている。すなわち、相手側ボールのスローイン、ゴールキック、コーナーキックなどで試合は再開されることになり、「審判は石と同じ」という扱いが維持される。

■監督・コーチが審判に詰め寄った場合は退場も

 新ルールでは、これまで注意や退席の対象だった監督、コーチにも、選手同様にカードが提示されるようになった。IFAB声明ではこのルールに加えて「チーム関係者がハーフタイム、試合終了後、フィールドに入って審判員に立ち向かった場合、レッドカードが提示される」という基準が新たに提示されている。

 Jリーグでも疑惑の判定があった場合、試合後に監督やコーチ陣が審判団に詰め寄る姿はよく見られる光景だ。しかし、もしフィールド内に入ってまで抗議を行った場合、今後は厳罰が下されることになるため、注意が必要となる。

★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!
●2019シーズンJリーグ特集ページ
●“初月無料”DAZNならJ1、J2、J3全試合をライブ配信!!

TOP