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[MOM630]中京大MF加藤弘也(3年)_“今日は最後まで踏ん張った”後半AT劇的弾

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MF加藤弘也が後半ATに劇的弾を決めた

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.29 総理大臣杯1回戦 大阪経済大1-2中京大 ヤンマースタジアム長居]

 後半終了間際に勝ち越し点を決めて、劇的な勝利を呼び込んだMF加藤弘也(3年=中京大付属中京高)だが、ボランチを組むMF辻泰志(4年=奈良育英高)が「監督はフルで使うつもりはなかったと思う」と明かす通り、本来ならゴールの時間帯はピッチにいないはずの選手だった。試合前、永冨裕也監督から伝えられていたのは加藤が可能な限り頑張り、試合終盤はMF佐塚洋介(1年=清水ユース)やMF川尻裕吏(1年=四日市中央工高)らフレッシュな選手を入れるプラン。ただ、普段以上に奮闘する加藤の姿を目にした永冨監督が交代を踏みとどまった結果がゴールに繋がった。

 いつも途中交代が主だったのには理由がある。「元々は攻撃が大好きな選手で、守備は得意じゃなかった」(永冨監督)ためだ。昨年もスタメンで出場する機会は多かったが、途中で運動量が低下し、ピッチを去る機会も多かった。特に暑さとの戦いでもある総理大臣杯は彼にとっては不向きな舞台で、昨年は1回戦の新潟医療福祉大でスタメン出場を果たしながら、持ち味を発揮できなかったため後半途中で交代。チームは準決勝まで勝ち上がる一方、2回戦以降はベンチスタートが続いた。加藤は「3位になれたのは嬉しかったけど、歯がゆさがあった」と振り返る。

 今年に入ってからリーグでスタメン出場を続けたが、夏の遠征ではスタメン落ちが続いていた。しかしこの日はスタメンに復帰。「やるしかないと思っていた」加藤は課題として挙げられていた守備と運動量を意識して、試合に挑んだという。そうした意気込み通り、前半から持ち前のパスと連携による崩しで攻撃のタクトを振るいつつ、機を見ては前方に飛び出しゴールを狙った。前半13分にはカウンターから右サイドを仕掛けたMF久保藤次郎(2年=帝京大可児高)のパスを中央で受けると遠めからシュート。以降も相手のカウンターを警戒しつつ、効果的に攻撃に顔を出し続けた。

 いつもなら動きが落ちる後半も好調な動きを維持する。「守備も攻撃も凄く頑張っていたので、隣でプレーしていて助かった。いつもは途中でバテて、『おい!弘也!戻ってこい!』と言っている選手とは思えない」。そう振り返るのは、辻だ。指揮官も頑張りを認め、加藤をピッチに残すと、試合終盤は「攻めるしかないなと思っていた」とより攻撃への関与を増やした。そうした気持ちがプレーに反映され、1-1で迎えた後半アディショナルタイム5分には右サイドからPA手前の中央に入ったボールに加藤が反応。「ボールを受けた時に前のスペースが空いているのが見えたので、自分で行こうと思った」と勢いよくドリブルでPAに侵入し、打ったシュートが逆転弾となった。

 劇的勝利の立役者となった加藤について、永冨監督は「最後まで走り切れなかった選手だけど、今日は最後に踏ん張ってゴールを決めてくれた。 あの時間帯にドリブルでグッと入って行ってシュートするのは一番きつい。ランニングからのシュートならともかく、細かくドリブルで運んでシュートを打てたのは凄い一皮剥ければ次のステージもあるんじゃないかという選手で、『ゲームを決めてくれる選手になって欲しい』と話していたので良かった」と称えた。中2日で挑む2回戦は、より体力と気持ちが要求される。苦しい中でもこの日と同様のプレーができれば、チームと彼の道が拓けるのは間違いないだろう。

(取材・文 森田将義)
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