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[プレミアリーグEAST]一週間、全員で甘さを排除してきた市立船橋が尚志から魂の勝利!

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勝利を喜ぶ市立船橋高イレブン

[9.23 高円宮杯プレミアリーグEAST第14節 市立船橋高 3-0 尚志高 グラスポ]
 
 市船、魂の勝利――。高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2019 EASTは23日、第14節2日目を行った。前節まで10位の市立船橋高(千葉)と6位・尚志高(福島)との一戦は、市立船橋が3-0で快勝。市立船橋は残留圏内7位に浮上した。

 市立船橋は前節、後半の4失点によって柏U-18(千葉)に敗れ、最下位に転落。試合直後には約1時間半のミーティングが行われ、さらに選手のみでのミーティングも経て一週間のトレーニングを再開していた。

 主将のMF町田雄亮(3年)は「今週の練習とかははじめは上手く行っていなくて……。でも、スタッフがサポートに入ってくれて喝を入れてくれて、そこから少しずつ自分たちからできるようになってきた」という。全てが選手発信ではなかったようだが、それでも非常に良い雰囲気で、集中してトレーニングできたという実感があった。敗れれば残留が難しくなるという危機感も良い意味で力に変えた市立船橋はこの日、立ち上がりから周囲に気迫の伝わるような戦いを見せた。

 この試合が2か月半ぶりの復帰戦となった町田がチームにエネルギーを加え、J注目のU-18日本代表MF鈴木唯人(3年)やMF森英希(3年)、FW松谷昂輝(3年)が球際で奮闘。勢いのある攻守で尚志を押し込むと、14分には鈴木の右足FKがゴールマウスを弾いた。

 一方、過去7試合で1敗と上向きの状態で市立船橋戦を迎えた尚志だったが、前半19分にアクシデント。U-18日本代表FW染野唯月(3年、鹿島内定)がPAで胸コントロールした際に相手選手と接触。膝を痛めてしまう。染野はそのまま途中交代。ここ2試合で3ゴールのエースを前半途中で失ってしまった。

 それでも、尚志はここから押し返す。正確かつスピーディーなパスワークでボールを動かし、ゴール前のシーンを増加。前半41分には市立船橋右SB平良碧規(1年)の決定的なシュートをGK鈴木康洋(3年)がストップするなど、流れを引き戻して前半を終えた。

 市立船橋は後半開始から、コンディション面を考慮してベンチスタートだったU-17日本代表の右SB畑大雅(3年、湘南内定)を投入。攻め合いを挑む。すると後半8分、松谷が左中間でFKを獲得。これをU-18日本代表の左SB植松建斗(3年)が左足で蹴り込むと、上手く内側からファーサイドへ動いてマークを外したCB鷹啄トラビス(3年)が高打点のヘディングシュートを叩き込んだ。

 会心の先制ゴールに鷹啄は咆哮。ホームの市立船橋がスコアを動かした。尚志は直後の13分、相手DFの背後へ飛び出したインターハイ得点王・FW山内大空主将(3年)がPKを獲得。だが、中央を狙った山内のシュートは市立船橋GK金子麗音(3年)が足でストップする。

 これが試合を左右するようなビッグセーブとなった。15分の決定機を鈴木の連続セーブで凌いだ尚志は、怒涛の反撃。右サイドを突破したCB渡邉光陽(2年)のクロスにMF福田隼也(3年)が飛び込んだほか、CB瀬齊駿登(2年)やFW阿部要門(2年)がチャンスを迎えるが、CB石田侑資(2年)中心に気持ちの込もった守りを見せる市立船橋から同点ゴールを奪うことができない。

 市立船橋はピッチ内でハードワークを求める声が激しく飛び交う。それほど選手たちは白星を欲していた。終盤はその重圧による疲労からか足を気にする選手が増えていたが、それでも我慢強く戦い続けた市立船橋が次の1点を獲得。38分、鈴木のキープから右サイドを駆け上がった畑がロングクロスを上げると、ファーサイドの松谷が右足ダイレクトボレーで決めて2-0とした。

 市立船橋は40分にも抜群のキープ力を発揮した交代出場FW賀澤陽友(3年)が3人、4人とDFを外してスーパーゴール。試合終了と同時に座り込む選手がいたほど戦い抜いた市立船橋が無失点で、4試合ぶりとなる白星を勝ち取った。

 市立船橋の波多秀吾監督は「前回のレイソル戦の負けが一つのきっかけになっているのかなと感じるところと、そのちょっとした甘え、緩さが積み重なっているんだからと再確認して、彼らもスイッチを入れたんじゃないかと思います」。これまではどこかで自分たちの甘さを受け入れられない選手もいた。だが、完敗を喫して最下位に転落したことで言い訳することなく求めてきた厳しさ。その変化が結果に結びついた。

 ただし、ここで満足してはならない。町田は「全然、自分的にはまだまだだと思うんですけれども、それ(甘さを排除してきたこと)でこのゲームができたことは継続していかないといけない部分だと思うし、突き詰めないといけない」と語り、金子も「(練習で)この習慣が続けばもっと強いチームになると思いますし、(インターハイ予選の)日体(大柏)戦も負けてその週は良かったけれど、どんどん下がっていってしまったのがあった。継続することが大事」と力を込めた。自分たちの甘さを排除し続けて、ここから名門が巻き返す。

(取材・文 吉田太郎)
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