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U-16化以降初の単独Vへ。静岡県が強豪対決制し、7年ぶりの準決勝進出!

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MF金子星太(清水ユース、右端)の先制点を喜ぶ静岡県の選手たち。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[10.1 国体少年男子準々決勝 東京都 1-3 静岡県 北海浜多目的球技場]

 王国復活へ、静岡県が7年ぶりのベスト4進出! 第74回国民体育大会 「いきいき茨城ゆめ国体」サッカー競技少年男子の部は1日に準々決勝を行い、東京都と静岡県が激突。強豪対決は静岡県が3-1で勝った。静岡県は10月2日の準決勝で山口県と戦う。

 準々決勝の最注目カードは静岡県が制した。序盤は東京都が相手陣内で試合を進めたが、静岡県はCB菊地脩太(清水ユース、1年)が「東京は蹴ることもあるのでそこをやらせないように、チームで一つになって蹴らせずに守ることを意識してやっていました」と説明したように、前からの強度のある守備で対抗。そして、徐々に個々の技術力高い静岡県がボールを握って試合を進めていく。菊地やMF鈴木奎吾(清水ユース、1年)が相手のプレッシャーをいなしてボールを前進させるなど、ペースを握り返していた。

 ただし、東京も譲らず、試合は拮抗した展開になった。その中で東京都は前半22分、快足FW横山歩夢(東海大高輪台高2年)の右クロスから初戦2ゴールのU-16日本代表FW野澤零温(FC東京U-18、1年)が決定的なヘディングシュート。静岡県もMF本保奏希(JFAアカデミー福島U-18、1年)の中央突破からチャンスを迎える。

 スコアは前半アディショナルタイムに動いた。静岡県はMF熊取谷一星(浜松開誠館高2年)を起点にFW東廉主将(清水ユース、2年)、2回戦3得点のFW千葉寛汰(清水ユース、1年)と繋ぎ、左中間の千葉がゴール前を横切るラストパス。これに右から走り込んだMF金子星太(清水ユース、1年)が1タッチで先制点を押し込んだ。

 静岡県の村下和之監督(沼津西高)は「(静岡の狙いの一つとして)ポケット、PAの横のところに侵入していって、最後は3つのところにパスコースを作っている」と説明。まさに狙い通りの形から先制点を奪った。

 静岡県は後半4分にも正確な左足を持つ鈴木を起点とした攻撃から、千葉のクロスを熊取谷が決定的な形で合わせる。さらに6分、敵陣での好守によってマイボールの左スローインとした静岡県は、東と左SB鈴木登偉(藤枝東高2年)がパス交換。そして、熊取谷がPAの千葉へボールを入れる。明らかの寄せの一歩が遅れた東京都DFに対し、エース千葉はコントロールから左足シュートを右隅に突き刺した。

 東京都は11分、野澤とのコンビネーションで交代出場のFW米陀大洋(FC東京U-18、1年)がゴール前に侵入。最後は野澤が押し込んで1点を返す。その後、CB小林慶太(FC東京U-18、2年)のシュートブロックでピンチを凌いだ東京都は球際、セカンドボールの攻防で優位に立ち、MF梶浦勇輝(FC東京U-18、1年)の起点となるパスや、米陀のアイディアある動きなどからゴール前のシーンを増やそうとする。

 そして、俊足FW野澤が相手DFラインの背後を狙うが、静岡県は読みの速いCB菊地が常に先手を取る動きで決定機を作らせない。菊地は「(野澤の)スピードが速いということは代表で一緒にやって分かっていたので、そこで1本のパスとかカウンターとか絶対にやらせないという気持ちでいました」。また、万能性を信頼される東がシャドーからボランチに下がり、交代出場のMF藤原健介(磐田U-18、1年)らとともに中盤の攻防戦で奮闘。DF陣も相手のシュートコースをしっかりと消して、GK大畑神唯(JFAアカデミー福島U-18、1年)の守るゴールに決定打を打たせなかった。

 1点リードのまま試合を進めた静岡県はエースが勝利を決定づけた。後半アディショナルタイム、右サイドのルーズボールを交代出場のFW杉本大雅(沼津U18、2年)が懸命に追うと、相手のクリアミスが流れてPA中央の千葉へ。浮き球を冷静にコントロールした千葉が右足シュートを決めて3-1で勝利した。

 静岡県は優勝候補対決となった佐賀県との初戦をPK戦の末に制すと、開催地の茨城県、そして首都・東京都も撃破。激戦ブロックを堂々の戦いぶりで勝ち上がってきた。中学時代までは結果が出ていなかったという世代。だが、静岡県としては初めて5人もの早生まれをメンバーに加え、高校1年生世代も意地を持って成長してきた。

 村下監督が「(選手たちは)マジメで、僕の言っていることを聞いてくれる。『ああしよう、こうしよう』という声が自分たちから出ている。ここまで雰囲気の良いチームは無かったかもしれない」と分析する。この日はCB田端琉聖(清水ユース、1年)が豪快ヘッドで競り勝ったシーンや右SB勝又大翔(富士市立高2年)が2連続でDFの股抜きをしたシーンなどでベンチから盛り上がる声も。今年の静岡は強さと一体感を持つ好チームとして勝ち上がってきている。

 国体少年男子の部がU-18大会だった05年までの王国・静岡県の優勝回数は19回。だが、06年のU-16化以降は他県のレベルアップもあって、優勝は11年1回だけで、それも千葉県との同点優勝となっている。今年の目標はU-16化以降初となる単独V。菊地は「絶対にします」と言い切り、千葉も「良い準備をして、優勝だけを見て一戦一戦やりたい」と力を込めた。強豪連覇で勢いにも乗る静岡県が、目の前の一戦一戦を勝ち抜いて、頂点に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
●第74回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」特集

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