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札幌一の強みを消し、「最短最速でゴール」へ。北海が11年ぶりV!:北海道

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北海高が11年ぶりV。“令和初の選手権”一番乗り

[10.20 選手権北海道予選決勝 札幌一高 0-1 北海高 厚別]

“令和初の選手権”一番乗りは伝統校・北海――。第98回全国高校サッカー選手権北海道予選決勝が20日に札幌厚別公園競技場で行われ、北海高が11年ぶり10回目の全国大会出場を決めた。インターハイ予選決勝で敗れている札幌一高と対戦した北海は、FW湊琢登(2年)の決勝点によって1-0で勝利し、今年度の全国大会出場一番乗り。全国大会は12月30日に開幕する。

「終わった直後は嬉しいと言うよりも、ホッとしたという感じがありました」。北海のDF 松本広大主将(3年)は11年ぶりとなる優勝の瞬間の心境を素直に振り返っていた。試合終盤、札幌一はGK小森玖隆(3年)も前線に上がって反撃。FW中野歩夢(3年)のロングシュートが枠を捉え、直後にもCKがゴール前に上がった。北海にとっては気の抜けないようなシーンの連続だったが、松本やGK原田耀人(3年)、DF 水上路矢(2年)、DF 坂本楓馬(2年)を中心に凌ぎ切って1-0で勝利。11年待ち続けた10回目の選手権出場を果たした。

 簡単な試合でなかったことは確かだが、北海は教育実習中のOBも協力したというスカウティング通りに相手のストロングポイントを消し、「自分たちの強みである最短最速でゴールに向かう」(MF杉山壮太、3年)という部分も発揮。奪い返しの速さやテンポの速いパスワークも見せるなど堂々の戦いで全国切符を手にした。

 前半は膠着した展開。その中で優勢に試合を進めていたのは北海の方だった。注目司令塔の杉山やMF芝西大希(3年) 、MF小田桂裕(2年)を中心に素早いテンポでボール動かし、右WB藪中海皇(3年)の縦突破や左WB吉川哲太(3年)、FW湊琢登(2年)の仕掛けを交えて攻撃。準決勝2得点のエースFW廣瀬拳太(3年)がDFをわずかにずらしてから左足シュートを打ち込むシーンもあった。

 対して、インターハイ予選に続く北海道2冠と16年ぶりの全国を目指す札幌一は、CB近藤孝紀(2年)のシュートブロックなどで失点を阻止。そして、エース右FW清水響生(3年)の鋭いドリブル突破やMF山田倖蔵(2年)の抜け出し、スルーパスなどから攻め返す。だが、北海は札幌一のキーマンである清水とFW近江勇哉(3年)の両ウイングをそれぞれ2人で監視。相手のサイド攻撃にフタをして特長を出させず、杉山中心に奪い返しも速かった北海は主導権を握って試合を進める。

 相手に間を与えずに攻めるだけでなく、横への揺さぶりも見せていた北海は薮中のクロスなどからチャンス。後半12分には薮中のクロスに湊が頭から飛び込み、こぼれ球に吉川が飛び込む。だが、札幌一はGK小森やCB梅田貴志(2年)の好守でゴールを許さない。逆に清水が幾度か北海の守りを打開し、相手ゴールを脅かしていた。

 後半17分、北海は「最短最速でゴールに向かう」という狙い通りの形で先制点を奪う。速攻から右中間で前を向いた杉山が斜めのラストパス。これを受けた湊がスピードに乗ったまま一気に相手CBとSBの間へ潜り込む。そして、DF2人を置き去りにして左足シュート。これが決まり、1-0とした。

 札幌一もコンビネーションで相手の背後を突くシーンを増やす。だが、23分に右SB鶴本海人(2年)が迎えた1対1の好機は北海GK原田がビッグセーブ。札幌一もGK小森の好守などで1点差のまま食い下がったが、守備意識高く戦う北海の守りを最後までこじ開けることができなかった。

 北海はインターハイで初戦敗退。選手たちは球際の強さや切り替えの速さ、運動量の差を感じたという。差を埋めるために取り組んできた成果を全国を懸けた一戦で発揮。松本主将は「攻から守、守から攻の切り替えの速さというのが一番意識もしたし、伸びたと思います」と頷いた。
 
 ただし、全国で勝ち上がるためにはまだまだやらなければならないことがある。島谷監督は「一人ひとりがやれることを増やしていかないと、全国で1回戦を突破するのも難しい力だと思います。もっともっと精度の高い攻撃ができないとダメでしょうし、守備で1対1の対人のところをもっともっと強くしていかないと(全国には)手に負えない化け物もいるので」と指摘した。

 松本主将は「(全国)ベスト8というのは一つの目標としていて、そのためには一戦必勝でしっかりと戦っていかないといけない」。最速で全国大会出場を決めた北海は、どこよりも長い準備期間で自分たちの武器を突き詰め、課題に向き合っていく。そして、全国でもこの日のように自分たちの良い部分を発揮し、一戦必勝で目標を達成する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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