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全国8強経験者残す秋田商、“引き締め”の材料多い勝利に:秋田

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後半10分、秋田商高は左SB武石恭諒(2番)が決勝ゴール

[10.24 選手権秋田県予選準決勝 秋田商高 2-1 明桜高 ソユスタ]

 昨年度全国8強の秋田商は反省の勝利――。24日、第98回全国高校サッカー選手権秋田県予選準決勝が行われ、昨年度優勝の秋田商高と同準優勝・明桜高が激突。秋田商が2-1で勝った。秋田商は5年連続45回目の全国大会出場を懸けて、26日の決勝で西目高と戦う。

 全国最多44回の選手権出場、2度の全国制覇も記録している秋田商は、昨年度の選手権で13年間続いていた秋田県勢の連続初戦敗退をストップ。一気に3勝して32年ぶりとなる8強入りを果たした。

 そのチームから現主将のCB松野真士(3年)とCB田近奈生(3年)、GK山口雄也(3年)、ボランチの10番MF原田悠翔(2年、この日は欠場)というセンターラインを残すだけに、周囲からの“昨年以上”という期待は大。小林克監督は「冷静に実力を見ると、あの世界に簡単に行けるとは思わないし1個勝つのだった難しいので。でも周りの期待や応援は彼らの力に変わっていると思う」と期待する。ただし、秋田県内のライバルも打倒・秋田商へ必死。この日も2-0の試合終盤に落ち着きを欠いて明桜に飲み込まれかけるなど、決勝へ引き締めの試合となった。

 強風の中で始まった試合は、緊張もあってか互いに警戒心の強い立ち上がりに。風下の秋田商は原田悠の双子の弟・FW原田遥翔(2年)とFW齋藤心護(1年)の2トップへシンプルにロングボールを入れてこぼれ球を狙う。仕掛けた際にはミドルレンジからでもフィニッシュで終わることを徹底。MF笹原歩起(2年)や原田のシュートなど、しっかりと攻め切って攻撃を終えていた。

 一方の明桜もパワフルなCF斎藤光優(2年)を活用。彼が相手の守りを幾度か押し下げていたほか、1年生MF内藤蒼空が目立つプレーを連発する。前への姿勢とスピード、身体の強さも活かして危険なエリアへ入り込み、シュートも狙っていた。秋田商MF近野宙安(1年)のFKがクロスバーを叩いてヒヤリとさせられるシーンもあったが、最終ラインで身体を張って守るCB足利光嵐(3年)中心に無失点を継続。相手に主導権を渡すことなく対抗していた。

 だが、前半34分、明桜は内藤が負傷退場してしまうアクシデント。後半に入ると風上に立った秋田商がスペースを活用した攻撃からクロスの数を増やそうとする。そして8分、近野の右CKをファーサイドの原田遥が「目の前でバウンドする感じだったので、抑えて上手く打てた」と右足ボレーシュート。強烈な一撃はクロスバーを叩いてゴールライン内側に落ち、先制点となった。

 秋田商はさらに10分、ハーフウェーライン付近からのFKを山口が前線へ入れる。これで右サイドを抜け出した笹原がラストパス。田近のシュートはポストを叩いたが、こぼれを左SB武石恭諒(3年)が押し込んで2-0とした。

 連続失点した明桜は足利を前線へ上げてパワープレーへスイッチ。14分にはDFと入れ替わった斎藤がさらにGKを振り切って右足を振り抜く。だが、秋田商は松野が頭でブロック。明桜は29分にも交代出場のMF鈴木隆良(1年)がGKをかわして左足を振り抜くが、左ポストを叩いてしまう。

 秋田商は制空権を握った田近、松野、山口の3人を中心に後半途中までほぼ隙を見せなかった。またセカンドボールをMF佐藤優眞(2年)が良く拾っていたが、2点をリードしてからバタついてしまう。相手のロングボールに対する処理が乱れ、攻撃でも慌ててしまって簡単にボールを相手に渡してしまっていた。

 諦めずに攻める明桜は後半39分、交代出場のMF荒井爽主将(3年)が右サイドからクロス。これをファーサイドの足利が右足ダイレクトで決めて1点を返す。さらに40分にオープン攻撃からチャンスを作ると、41分には右SB衛藤啓太(3年)の縦パスで抜け出した小野湖孝(2年)がGKと1対1に。だが、シュートはわずかに枠左へ外れ、秋田商が逃げ切った。

 秋田商は決勝へ進出したものの、課題の残る勝利。小林監督は「ゲームを読みきれない。ゲーム運びが下手です」と指摘し、「引き締めるには十分過ぎる1点。決勝ではピリッとした試合をしたい」と語った。今年は怪我人の影響もあってプリンスリーグ東北最下位。だが、走力を活かして2点差や3点差を追いついた試合もあるだけに、自分たちがやるべきことを見直して決勝へ向かう。

 松野は「去年、あれだけの結果を先輩方が出してくれて、去年がまぐれだったと言われたくないので、今年も県大会を絶対に勝ち切って、その上で全国大会でどこまで勝ち進めるかということをやっていきたい。まず土曜日(決勝戦)を大事にしたいです」と力を込めた。昨年、伝統校復活への一歩を刻んだ秋田商。まずは秋田を制し、全国で勝負する。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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