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“1年前の悪夢”よぎった東京V戦…横浜FC齋藤功佑「あの試合を忘れたことはない」

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試合を終え、笑顔も見せた横浜FCのMF齋藤功佑(写真左から1人目)

[10.27 J2第38節 横浜FC2-1東京V ニッパツ]

 相手は同じ東京ヴェルディ、舞台も同じニッパツ三ツ沢球技場——。横浜FCの22歳MF齋藤功佑の脳裏には、およそ1年前に見た“あの光景”がよぎっていた。

「やっぱりあの試合を忘れたことはないので。あの時はクラブ全員が悲しんだ瞬間だったし、悔しい思いをした瞬間だった。それはずっと自分の頭の中にあった」。

 2018年12月2日、J2リーグ3位だった横浜FCは、J1参入プレーオフ2回戦で同6位の東京Vと対戦していた。試合は0-0のまま時間が過ぎていき、スコアが動かずに終われば横浜FCがJ1リーグ16位との決定戦に進む権利を獲得。しかし、後半アディショナルタイム6分にドラマが待っていた。

 ラストプレーとみられた東京Vの右CK、MF佐藤優平のキックに合わせたのは最後方から攻め上がってきていたGK上福元直人。そのシュートはかろうじてGK南雄太がセーブしたものの、こぼれ球をFWドウグラス・ヴィエイラに流し込まれ、12年ぶりのJ1昇格という夢が最後のワンプレーで断たれた。

 そこで上福元のマークを担っていたのが他でもない、齋藤だった。試合後、当時21歳の若武者は声を詰まらせながら取材に応対。「このクラブを応援してくれる方、関わってくれる方に申し訳ないことをしてしまった。そんな方々の気持ちを考えたら……」。育成組織から過ごしたクラブの敗北。その責任は誰よりものしかかった。

 そんな因縁の相手とこの日、同じピッチで11か月ぶりに対峙することになった。後半22分、負傷したMFレアンドロ・ドミンゲスに代わって投入された齋藤。スコアは2-1の1点リード。本来であれば攻撃を持ち味とする選手ではあるが、リードを守り切らねばならないのはあの日と同じだった。

「試合に出ている時も2-1で押し込まれている状況だったので、去年の出来事が頭に浮かぶことは何回かあった」。通常では起こりにくいシチュエーションだが、相手ゴールを守る上福元の動向も気になっていた。「最後のほうは出てきそうだったので、試合中はドキドキしたけど……」。しかし、その時は訪れぬまま、無事に試合を締め切った。

「守備を主に意識して、ハードワークしながら声を出して、チーム全員で守り切れれば良いと思っていたので、守り切ることができてよかった」。試合後、あの日と同じ取材エリアに姿を現した齋藤は、あの日とはまったく違うホッとしたような面持ちで心情を語った。

 それでも「これで少しは乗り越えられた?」と尋ねると「そうですね……」と言葉を濁した。「やっぱり上がりたいですね。去年の悔しさを晴らせるように、残り4試合をやっていきたいです」。J1昇格という悲願を逸した経験は、少なくとも昇格を決めることでしか乗り越えられない。

 今季の序盤戦は開幕節こそ出場したものの、その後はなかなか出番が与えられず。タヴァレス監督が退任し、下平隆宏監督に代わったことで持ち前の技術とアジリティが活かせるシステムになったが、「試合に出た時にうまく良さを出せず、チームもあまり勝てなくて試合に出られなくなった」と振り返る。

 そしてようやく第36節・金沢戦で今季初のフル出場を果たし、この日も途中出場。「出られない期間が続いたけどその中でも勉強になることがたくさんあったし、常に前を向いて、成長し続けて、使ってもらえるようにいつも準備はしてきた」。そうした努力の成果もあり、残り少ない試合の戦力として数えられるようになった。

 横浜FCは現在、自動昇格圏の2位と勝ち点で並ぶ3位。昨年よりもチームの成熟度は高く、プレーオフでも昨季のリベンジを期待できる状態にあるが、「正直、自動昇格を目指したい。狙える位置にある」とまずは自動昇格を狙う形となる。「自分もチャンスはあるので、試合に出たらチームの勝利に貢献したい」。1年前の悔しさを晴らすため、自らの力で愛するクラブをJ1に導くつもりだ。

(取材・文 竹内達也)
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