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“聖和の頭脳”左SB金子主将。攻略法考えて後半3発に繋げる

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聖和学園高の左SB金子力丸主将

[10.27 選手権宮城県予選準決勝 聖和学園高 3-0 東北学院高 ユアスタ]

 聖和の頭脳だ。「東北のドリブル軍団」こと聖和学園高は自陣からドリブルとショートパスで持ち上がり、崩しを狙う攻撃。加えて今年は相手を見ながら、攻撃を変化させて攻略させる上手さがある。

 その中心的存在となっているのが左SB金子力丸主将(3年)だ。「自分が状況を見て判断を変えるという役割」。この日は前半から相手の体力を削ること、重心を下げること、そして中央のエースMF古賀楓真(3年)らのマークが緩くなることを考えて、果敢にドリブル突破を連発。東北学院高のサイドの守りが堅かったこともあって、決定的な仕事ができた訳ではないが、それでも得点を獲る以外の効果を狙って強気に仕掛け続けた。

 前半、聖和学園はチームとしてタッチライン際からのドリブル、崩しが増えてPA脇の「ポケット」を狙う回数が少なかった。相手のCBに仕掛ける、または釣り出すような攻撃をしなければ得点することはできない。

 それができていなかったことに気付いた金子は、前半30分頃から狙いを変えて「ポケット」を狙う攻撃へ。そして後半、右から左へと移ったレフティーMF局田真伸(3年)が狙いとするPA脇からのクロスを増やす。相手のCBを動かし、中央の守りを広げることにも成功。それを突破口としてMF梅田隆之介(3年)の2ゴールなど3点を奪い取った。

 金子は「今日はサイドが1対1で抜くことにこだわっていたんですけれども、(相手の)カバーもしっかりといたので、しかも(雨で)スリッピーだったので、それだったら右サイドの局田を左に持ってきて、抜かずにクロスを早めに上げればDFもスリッピーだから『事故る』だろうと考えました。(左で先発した)梅田は抜くタイプで局田はクロスも上手かったので、きょうはそれ(左右の入れ替え)が一番良かった」

 聖和学園はコーチ陣が崩し方のヒントや答えをくれる訳ではなく、攻略するために何が必要なのか選手たちが自分たちで考えなければならないという。過去の公式戦や練習試合、遠征の試合でのパターンを思い出して攻め方を考える。この日の前半は加見成司監督も同じ課題を感じており、狙いを共有。縦、縦になっていた前半から変えて、縦から一度横へのパスを入れ、そこからもう一度縦に仕掛ける「ポケット」への攻撃が後半は効果を発揮した。
 
 金子は試合中、常に状況を見て、相手の攻略法を考えているという。「育ったチーム(神奈川県のエスポルチ藤沢出身)の環境が良かった。考えさせるというか、自分たちで考えてやれ、というチームでずっと育ったので」と説明。その判断する力が聖和学園の多彩な攻撃を生み出し、攻守のバランスを整理する原動力となっている。

 宿敵・仙台育英高との決勝へ向けては「何が来ても焦らず動じずに、色々なバリエーションで攻撃仕掛けながら、今日みたいな試合展開で勝てば良いかなと」と考えを口にした。エスポルチ藤沢時代のチームメートである飯塚高FW村越凱光が松本入り。静岡学園高や矢板中央高などにも旧友がいる。「(全国で)会いたいですね。(そのためにも決勝は)もちろん勝ちます」と宣言。必ず勝って、全国で再会を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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