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アメリカが日本対策徹底。大勝の次はW杯の厳しさ体感した90分間に

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[10.30 U-17W杯GL第2節 日本0-0アメリカ]

 スコアボードの数字はキックオフからタイムアップまで全く動かなかった。U-17ワールドカップ、アメリカとの第2戦。オランダに大勝した勢いそのままに望みたかった日本だったが、「W杯はそんなに甘くない」(森山佳郎監督)ことを突き付けられる形で、0-0で勝ち点1を得るにとどまった。

 第1戦で極限のハードワークを貫徹したことによるフィジカル面の消耗がまず一つの原因だろう。消耗の激しかったFW西川潤(桐光学園高)とMF田中聡(湘南U-18)は先発を見送られ、代わってFW唐山翔自(G大阪ユース)、田村蒼生(柏U-18)がスタートリストに名を連ねた。

 この大会について「ワクワクしかない」と語っていた田村は気持ちを感じさせるプレーを出していたし、決してチームのモチベーションが低かったわけではない。ただ、オランダ戦のような「圧倒的な集中」(森山監督)に及ばなかったのも確かだろう。「オランダに勝ったあと、どこかフワフワしているところがあった」とDF鈴木海音(磐田U-18)が反省の言葉を残したように、やはり気持ちの持って行き方に難しさはあった。

 加えて立ちはだかったのがアメリカの日本対策である。「リスペクトしてきた」と森山監督が振り返ったように、アメリカはエースのFWジョバンニ・レイナ(ドルトムント)をベンチに温存し、まず「守備で頑張るサッカー」(同監督)を徹底。セネガルとの初戦ではそのレイナを始めとする前線の選手が攻め残りすることも多かったが、この日は全員がしっかり帰陣して守備に参加し、日本に自由を与えない。ビルドアップの部分でも「情報と違った」と鈴木が言うように、形を変えてきており、日本側のスカウティングの裏をかいていた。

 特に徹底して警戒されていたのは第1戦で猛威をふるったFW若月大和(桐生一高)で、「背後を切られていた」と本人が振り返ったように、日本のDF・GKがボールを持ってルックアップすると、アメリカのDFは思い切ってラインを下げてスペースを消してきた。日本のビルドアップの形も研究されている印象があり、第1戦で抽出された要素から中2日で戦術的にキッチリ修正・対応してくる辺り、これぞ世界大会と言うべき攻防だった。

 後半10分過ぎからアメリカはレイナ、日本は西川と、それぞれの10番を投入して勝負に出る展開となり、ここからは日本がペースを握る流れとなった。ただし、「シュートに精度がなかった」と西川が振り返ったとおり、ゴールは決めきれず。最大の決定機だった後半28分のDF畑大雅(市立船橋高)から若月のヘッドというシーンも、相手の200cmGKチトゥル・オドゥンゼ(レスター・シティ)の好守に阻まれた。

 結局、試合は0-0で終了。「自分たちは日本代表として戦っていて、勝ち点1を目標にしていたわけではない」と若月は悔しさもあらわに振り返った。とはいえ、「死の組」と評されたグループステージで2試合を終えて勝ち点4という結果は決して悲観するようなものでもない。次のセネガル戦で勝てば1位での16強進出も可能である。

 大勝の喜びから一転して苦い良薬を呑むような、ワールドカップの厳しさを体感できた試合だった。ただ、そんなタフな大会を勝ち残っていく上で、ここで一つチームが引き締まったのは決してマイナスなことばかりではなさそうだ。

(取材・文 川端暁彦)
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