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富山一、強し!インハイ全国決勝で気付いた差を修正、成長して「日本一のチーム」へ

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インターハイ全国2位の富山一高が富山5連覇を達成

[11.2 選手権富山県予選決勝 富山一高 5-0 水橋高 高岡スポーツコア]

 今冬、埼玉で優勝旗を掲げる――。第98回全国高校サッカー選手権富山県予選決勝が2日に行われ、インターハイ準優勝校の富山一高が5年連続30回目の全国大会出場を決めた。決勝で水橋高と対戦した富山一は、FW碓井聖生(3年)の先制ゴールとMF高木俊希(3年)の2ゴールなどによって5-0で快勝。全国大会は12月30日に開幕する。

 夏の日本一まであと1勝に迫ったインターハイは、決勝の後半ラストプレーで失点。桐光学園高(神奈川)に0-1で敗れ、準優勝に終わった。喜ぶ桐光学園の姿を目に焼き付け、そこから「日本一のチームになるため」の日々を過ごしてきた富山一が、難敵相手に堂々の5-0勝利。強さを見せつけて全国制覇への第一関門を突破した。

 前半、富山一は相手の状況を見ながら1タッチパスを交えた攻撃。そして、サイドからのクロスで水橋にプレッシャーをかける。加納靖典コーチが「この一週間、ガチガチに(対人練習を)やってきた」という富山一は、決勝戦で受け身になることなく前へ。ボールを失ってからの奪い返しの意識も非常に高く、隙を見せずに戦っていた。

 一方、“公立の雄”水橋は県立高校の再編統合によって、22年3月に閉校が決まっているため、3学年が揃って戦うのは今年が最後。だが、新チーム結成当初から「スペシャル・ワン」を掲げて繋ぐサッカーを築いてきたチームは、前半から全国2位相手にチャレンジ精神旺盛なサッカーを展開する。

 安易なロングボールに頼ることなく、奪ったボールを素早く繋いで相手のプレスを掻い潜ると、打開力のあるMF佐々康成(3年)やMF笠原涼太(3年)が前を向いてバイタルエリアに侵入。立ち上がりからかなり飛ばしていたため、前半途中に足を攣らせる選手も出ていたが、こぼれ球に反応したMF久呂秀斗(3年)がミドルシュートを打ち切って見せるなど気持ちの込もった戦いを見せていた。

 だが、「好チーム」水橋を富山一は多彩な攻撃で上回っていく。18分には左WB真田滉大(3年)のサイドチェンジから、碓井とMF小森登生(3年)のコンビで右サイドを崩してFW吉倉昇空(2年)が1タッチシュート。これはポストを叩き、32分にDF丸山以祐(3年)の左ロングスローから高木が放ったヘディングシュートは水橋DFにブロックされたものの、しっかりと前半に先制点を奪う。

 32分、高木の左クロスをニアの吉倉が頭で中央へ流す。これでGKと1対1となった碓井が右足でゴールへ押し込んだ。その後、インターセプトから水橋・佐々にシュートを打たれたシーンもあったが、富山一は主導権を渡さない。後半6分にはCKの流れから丸山の左クロスを高木が頭で合わせて2-0とした。

 この後、水橋の攻撃を受ける時間に。水橋はCB齋藤英司(3年)の右クロスを佐々が合わせ、また奪い返しから久呂の放った左足シュートがスタンドを沸かせる。だが、我慢の時間帯を凌いだ富山一が勝負の行方を決定づける3点目。後半20分、左サイドでボールを持った小森がDFを十分に引きつけてからループパスを出すと、吉倉が右後方へ落とす。これに走り込んだ高木が強烈な左足シュートをゴール右隅に突き刺した。

 富山一は28分に交代出場のFW高橋駿斗(3年)のスルーパスから真田が豪快に4点目のゴール。さらに34分には高橋が左足ミドルを決めた。水橋は雑な攻撃をすることなく、攻め返そうとしていたが、富山一は高木が「夏は精神的な甘さとかあって後半のあの時間に失点したので、練習でも練習終わる最後の5分とかは大切にしようと話しています」と言うように、最後まで集中力を欠かさない。DF吉藤廉(3年)やDF牧野奏太(3年)を中心とした守りで終盤はシュートを打たせず、5-0で5連覇を達成した。

 スタンドの控え部員から明日3日に控えた誕生日を祝うコールを受けていた大塚一朗監督は、今年のチームについて「今年は特に仲が良い。みんなが一生懸命、一つの方向に向かって一緒に厳しいトレーニングを自主的にやるところが今年の一番の特長なのかなと思います」と分析する。

 そして、「自分たちで課題を見つけてそれに向かって自分たちで修正していくところが強さなんだと思います」。向上心を持つ選手たちが、自立して課題に気付いて向き合う力。指揮官によると、それは13年度に日本一を勝ち取ったチームと共通するのだという。インターハイでは紙一重の差で日本一を勝ち取ることができなかったが、そこで選手たちが気付いた差を埋めるために質を求め、精神的な甘さを排除してきた。その一つの成果がこの日の5-0快勝。夏からの積み上げ、成長を印象づける快勝だった。

 加納コーチが「この中から突出する選手が出てきて欲しい」と語ったほか、質の部分もまだまだ向上の余地はある。カウンターからシュートまで持ち込まれるシーンがあったことも確か。それだけに、高木は「一つ一つ意識して変えられるところはまだまだたくさんあるので、まだ日本一のチームにはなれていないので、日本一のチームから逆算した練習をしたいですね」と意気込んでいた。

 3か月前、目に焼き付けた桐光学園の喜ぶ姿。高木は「本当にあの負けた瞬間のことは、あの日から一日も忘れたことはないので、喜んでいる姿を逆に見せつけたいというか、自分たちが選手権の緑の優勝旗を掲げたいです」と言い切った。吉倉や高橋らの台頭もある富山一は、本気で日本一を狙えるチームになって全国へ。そして、20年1月13日に埼玉スタジアム2002で開催される選手権決勝で、今度は自分たちが喜ぶ姿をライバルたちに見せつける。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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