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[MOM3019]日本航空GK橋本亮太(3年)_21分の1の戦い…抜擢に応えた「腐りかけた」守護神

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日本航空高GK橋本亮太(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.2 選手権山梨県予選準決勝 山梨学院高0-1日本航空高 中銀スタ]

 昨年度の選手権で正GKを務めた男は、最上級生となった今年は苦しんだ。ポジションを失い、腐りかけた時期もあった。だが、大事な一戦で先発に抜擢された日本航空高GK橋本亮太(3年)は、PKをストップする大仕事をやってのけ、チームを2年連続の決勝へと導いた。

 2年生で出場した昨年度の選手権。2回戦の四国学院大香川西戦ではPK戦でPKをストップするなど、ベスト8と躍進したチームに貢献した。だが、選手権後に左足首を負傷した影響もあり、ポジションを失った。「春には全然試合に関われなくて腐りかけていた」。しかし、決して心は折れなかった。「親に腐らずに頑張れと言われたし、自分でも去年の選手権のリベンジをしようという気持ちでやっていた」と再び選手権の舞台に立つため、自身を磨いた。

 総体予選後には先発の機会を1試合与えられたが結果を残せず。それ以降、スタメンに名を連ねることはなく、ゴールマウスはGK高橋剣(3年)が守り続けていた。選手権予選でも先発の座は巡ってこなかったが、準決勝の山梨学院戦を前に「行くかもしれない」と指揮官から伝えられたようだ。仲田和正監督が起用の意図を明かす。

「橋本にしようか、高橋にしようか悩んだ。(山梨学院に)ロングスローや高さがあり、GKをPK戦で投入すると考えると交代カードが1枚減るから、いろいろなことを考えて決断した」。総体決勝の韮崎戦ではPK戦直前に高橋から橋本に交代していたように、橋本のPK戦の能力は指揮官も買っていた。

 久しぶりの先発のピッチ。「驚きもあったし、緊張した」と苦笑しつつも、「徐々に慣れていって、後半は改善できた。しっかり準備していたので大丈夫だった」と安定した守備でゴールを守る。そして、1点をリードして迎えた後半25分にはPKの危機を迎えるが、「助走を見て思い切って飛んだ」とFW岡田遼平(3年)のシュートをキャッチ。最大の危機をしのぐと、最後まで山梨学院にゴールを割らせずにチームを1-0の完封勝利に導いた。

 この試合、これまでゴールを守ってきた高橋、そして、21人いるGK全員の思いを背負ってピッチに立っていた。「高橋選手はこの1年間ずっと出続けていたので、悔しかったと思う。21人のGKの中で準決勝は自分が任せてもらった。ここで負けたら『俺じゃなければ…』というメンタルになってしまうと思ったので、絶対に勝とうという気持ちだった」。

 この日の活躍で決勝戦に出場する可能性は広がっただろう。だが、慢心などない。「また、ピッチに立てるように明日からしっかり準備したい」と再びスターティングメンバ―に名を連ねるため、まずはチーム内の競争を制す。

(取材・文 折戸岳彦)
●【特設】高校選手権2019

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