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22年3月閉校の水橋は敗戦も堂々の戦い。「スペシャル・ワン」のスタイル貫く

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水橋高は堂々の戦いを見せた

[11.2 選手権富山県予選決勝 富山一高 5-0 水橋高 高岡スポーツコア]

 最終的に点差こそ開いたものの、水橋高は印象的な戦いを見せた。チームが立ち上げ当初から目指してきたのは「スペシャル・ワン」なサッカーをすること。「繋ぐ水橋」の伝統を継続、進化させたサッカーで幾度か相手の守りを攻略して会場を沸かせていた。

 前半10分にMF久呂秀斗(3年)の直接FKが枠を捉えると、15分には久呂がこぼれ球に反応して左足ミドル。MF廣瀬康貴(3年)らが判断速く、ゴール方向に向かいながらショートパスを繋ぐと、MF佐々康成(3年)やMF笠原涼太(3年)の個人技も合わせてバイタルエリアで前を向くことに成功していた。

 上田裕次監督は「最初の方は(これまでで)ベストバウトだと思います」と振り返る。インターハイ全国2位の富山一高が前からの圧力を強めて来る中、クリアすべきところはクリア。判断に迷うことなく試合を進め、先制された後もこの日存在感を放った佐々がインターセプトから左足シュートを打ち切るなど、堂々の戦いを続けた。

 後半開始直後にはFW平野直樹(3年)が相手GKのキックをチャージしてムードを盛り上げる。6分にCKの流れから失点した後も勇気を持って前へ。14分にはCB齋藤英司主将(3年)の右クロスを佐々が頭で合わせ、14分には奪い返しから久呂の左足シュートが相手ゴールを脅かした。

 後半20分に3点目を失うと、その後は相手の猛攻を止めることができずに計5失点。繋げず、ロングボールに逃げてしまうシーンもあった。それでも、最後まで雑な攻撃はわずか。齋藤は「最後まで自分たちのサッカーをやろうと。前半0-1で負けとった時に自分たちのサッカーをやろうと言っていた。2点、3点取られた後も蹴るだけにならんと繋ぐのは水橋の伝統」と説明していたが、自分たちのサッカーを最後まで貫いた。

 水橋は選手権出場6回。富山県を代表する公立の強豪校だ。私立高校優勢の中、「自分たちの存在意義を示すために」(上田監督)繋ぐサッカーを徹底し、強化を進めてきた。インターハイ予選は準々決勝敗退。齋藤は「新チーム立ち上げの頃はここまで来るというのは自分の中でなかった」と明かすが、それでもチームとしてのまとまりを高めながらこだわってきたことを大舞台でしっかりと発揮した。

 水橋は県立高校の再編統合によって、22年3月に閉校。3学年が揃って戦う選手権は今回が最後だ。それでも、「境遇を理解して入って行こうとしてくれた子たち」(上田監督)が2年生21人、1年生も25人いる。

 齋藤は「次の1年生が入ってこんのもありますけれども、今の1、2年生には全国に行ってもらいたいです」と期待していた。この日、富山一との戦いで感じた課題、攻守の切り替えの速さやセカンドボールの回収、パスワークの質の部分などを今月に行われるプリンスリーグ北信越参入戦に繋げる。そして、現1、2年生は先輩たちが表現した「スペシャル・ワン」のスタイルをさらにレベルアップさせて、水橋の名でもう一度全国の舞台に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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