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“モノ言える”主将に導かれし佐賀北、「数年で一番力がない」世代が夏冬連覇へあと一つ!:佐賀

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先制点を喜ぶ佐賀北高の選手たち

[11.3 高校選手権佐賀県予選準決勝 佐賀北高4-1鹿島実・鹿島(新)高 鹿島市陸]

 第98回全国高校サッカー選手権佐賀県予選は3日、鹿島市陸上競技場で準決勝を行った。第1試合では県総体覇者の佐賀北高が鹿島実・鹿島(新)高を4-1で撃破。16日に行われる決勝では昨年県王者の龍谷高と対戦する。

 サッカー界で長きにわたって受け継がれてきた「立ち上がりが重要」というセオリー。これをしっかりモノにした佐賀北が3年ぶりの県決勝に歩みを進めた。試合が動いたのは前半3分。小比賀徹二監督が「キックがピタリと合ってくる」と惚れ込むDF北川和樹(3年)のプレースキックが起点だった。

 精度の高い右足から繰り出された右コーナーキックがゴールからやや距離のある位置に送り込まれると、フリーのDF一ノ瀬翔(3年)がドンピシャのヘディング。このボールをFW田中雅也(3年)が落ち着いたボールコントロールで落とし、最後は184cmのFW宮崎友伸がゴールマウスに流し込んだ。

 その後も佐賀北のペースは続き、前半10分にも北川の右CKを起点にMF松岡郁弥(3年)がクロスを送り、宮崎が惜しいヘディングシュート。対する鹿島実・鹿島は14分、DF岡和志(3年)とDF岩永浩太郎(2年)のコンビネーションプレーで左サイドを打開しようと試みるも、わずかにパスがズレてシュートまで至らない。

 前半31分、佐賀北に再び決定機。右サイドを再三切り裂いていたMF松本陸玖(2年)のクロスに反応したFW秀島康介(2年)が強烈なヘディングシュートを放ったが、ここは鹿島実・鹿島GK松本拓也(3年)がビッグセーブで阻んだ。幅広い範囲でセットプレーのキッカーも担うGK松本は左右のキックを自在に使い分ける器用さも目立った。

 そのまま1-0で前半を終えたが、佐賀北は後半1分、またしても立ち上がりにゴールを奪った。右サイドからMF板橋蓮(3年)がフィードを送ると、田中の落としに反応したのは再び宮崎。「自分もここまで点が取れて驚いている」と自身もびっくりのコントロールショットを右ポスト際に流し込み、リードを2点に広げた。

 地元鹿島市開催で意地を見せたい鹿島実・鹿島は後半10分、右サイドでつくった攻撃から左サイドを岡が突破し、左足での高精度クロスにFW乗田凌(2年)がダイビングヘッド。これはGK井崎幹太(3年)に阻まれたが、後半開始時からピッチに立っていたFW田崎文達(1年)がこぼれ球を押し込み、ようやく1点を返した。

 ここからは鹿島実・鹿島のペースが続き、MF山田淳之介(1年)、DF田島竣生(1年)というフレッシュな選手も入れ、一気に流れを持ってこようと試みる。ところが佐賀北は主将の松岡が他の選手たちに積極的に叱咤の声をかけ、プレーでは巧みなポジショニングでピンチの芽を摘み取るなど、存在感をますます増していった。

 すると佐賀北は後半16分、松本の縦パスを受けた秀島が右サイドから横パスを通すと、ゴール前に潜り込んだ板橋が右足シュートで追加点。鹿島実・鹿島はそこからDF中島豪(3年)を前線に上げるパワープレー策に出たが、33分にはゴール前混戦から田中に仕上げの1点を決められ、準決勝の熱戦は3点差で幕を閉じた。

 4年ぶりの選手権出場、そして夏冬連覇まであと一つとした佐賀北。指揮官が「ここ数年で一番力がないのは選手も自覚している」と評したように、シーズン序盤では考えられなかった位置までたどり着いた。躍進の要因となっているのは、総体予選で本命・佐賀東高を破ったPK戦にも代表される「本番での粘り強さ」(小比賀監督)だ。

 しっかりとつなげるDF陣が支える3-4-3の分厚い布陣は失点が少なく、単独突破で打開できる田中、松本の両ウイングバックは抜群の破壊力。また前後関係でバランスを取る板橋、松岡のダブルボランチは凄まじい安定感を誇り、総体では格下相手の苦戦につながった得点力不足も、長身FW宮崎が台頭してきたことで解決しつつある。

 また、チームマネジメントにおいては選手・スタッフ陣から絶大な信頼を寄せられる松岡の貢献が欠かせない。「いまどきあれだけいろいろ同級生にモノを言えるヤツは見たことがない。自分にも厳しいし、意識が高い」(小比賀監督)。そうした頼れるリーダーのもと、豊かな長所を持った個性派集団が一つにまとまっている。

 ただ、そうした進撃もここで終わっては意味がない。決戦は2週間後の11月16日。「そんなにうまいチームじゃないけど、みんなが強く言えるし、良いチームになってきた」と現状の佐賀北を見据える頼れる主将の松岡は「やることは変わらない。支えてくださった方々の分まで戦いたいし、最近は全国に出られていないのでまた一つ歴史を変えたい」と力強く意気込んだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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