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[MOM3024]鵬学園MF島田凌(3年)_卒業後は指揮官に憧れ教員の道へ…サッカー人生最後の晴れ舞台に挑むMFが“影のMVP”に

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指揮官から“影のMVP”に指名された島田凌

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 選手権予選決勝 星稜1-2鵬学園 石川西部]

 石川県予選のMVPに選ばれたのは、主将として鵬学園高を2度目の選手権出場に導いたMF河村怜皇(3年)。だが、赤地信彦監督が挙げるMVPは別にいる。河村とボランチでパートナーを組むMF島田凌(3年)だ。

 10番をつけるMF永田貫太(3年)のように明確な武器で試合を決められる派手な選手ではない。どちらかと言えば地味な部類の選手だが、気の利くプレーはチームに欠かせない存在だ。

 絶対王者・星稜に挑んだこの日も島田の存在はチームにとって大きかった。立ち上がりは、相手エリアから飛んでくるロングボールとDF奥秋賢将(3年)がサイドから繰り出すロングスローに圧倒され、我慢の時間帯が続いた。

 前半6分には、CKのマークが外れた隙を突かれて、先制点を献上。以降はDF陣が粘り強く星稜の攻撃を跳ね返し続けたが、ラインが下がり過ぎたため、島田は持ち味であるセカンドボールが拾えず、二次攻撃を受け続けた。

 エンドが変わった後半は選手同士の距離感をコンパクトに保つことで、きっちりDF陣が弾いたボールを拾える回数が増えた。「最初は緊張していたけど、途中から楽しくプレーできた。応援してくれる皆の声も力になって、身体が動いた」と振り返る島田は、奪ってから左右に散らしつつも、スペースを見つけてはドリブルで前進し、攻撃にアクセントを加えた。

 得点に絡むプレーはなかったが、勝利への貢献度はチームで一番。赤地監督は「攻守に渡って顔を出せる選手。セカンドボールをほとんど拾えていたし、奪ってから前にも出られていた」とチームへの貢献を称えた。

 気が利くのはピッチ内だけではない。日常生活でも様々な目配りと気配りができる選手で、新チームが立ち上がった当初、赤地監督は島田をキャプテンにしようかと考えていたが、性格が優しすぎることを考慮。「周りを支えるのが彼の特徴。河村を支えてやって欲しい」と副キャプテンに任命した。

 試合後も優勝の喜びに沸くチームメイトを尻目に、DF牛谷内柊希(3年)と共にピッチ脇に置かれたスクイーズボトルを回収する姿が印象的で、赤地監督は「彼みたいな選手がMVPに選ばれるべき」と口にしていた。

 いぶし銀とも言える働きを見せる島田は、鵬学園がある七尾市の出身。「小学校の頃から登下校する際にずっと練習を見て、赤地先生は良い人だなと思っていた」。憧れの存在だった赤地監督の勧誘を受けて入学してからは、より関係は密になった。

 早くに父親を亡くした島田に対し、親身になって向き合うだけでなく、モチベーションが上がらない際には喝を入れられたこともある。将来は「人間として、大人として存在できる」赤地監督と同じ教員になるのが目標。大学では学業に専念するため、本格的にプレーするのは高校で最後にするつもりであるため、「選手権予選は絶対に優勝したいと思っていた」。

 選手への出場権を掴んだことで、サッカー選手・島田凌の戦いはあと少し続くことになった。「厳しい戦いになると思う。でも、このチームは全国でも戦えると思うので、しっかりサポートして皆が良いプレーができるようにしたい」と最後まで気の利いたプレーを続けるつもりだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2019

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