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ピッチ外では舞台挨拶の日々 電動車椅子サッカーの伝道師、日本代表・永岡真理の夢

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撮影:松本力

[11.3 パワーチェアフットボールチャンピオンシップジャパン決勝 
Yokohama Crackers 2-0 FCクラッシャーズ](静岡・エコパアリーナ)

 歓喜に沸く赤い軍団の中に、6年ぶりの日本代表復帰を果たした永岡真理(株式会社マルハン所属)の姿もあった。2021年電動車椅子サッカーワールドカップ(W杯)オーストラリア大会のアジア・オセアニア地区予選を兼ねた「AP0カップ」からわずか一週間足らず。しかし、永岡はワールドクラスのプレーで、会場に詰めかけた観客全てを魅了した。

 APOカップで示されたレフェリングの国際基準が事前通告なしに適用され、適応することだけで苦労する大会になったが、それをも味方につけたYokohama Crackersが優勝を勝ち取る結果となった。永岡は冷静に振り返る。

「自分も含め、Yokohama Crackersから多くの選手が日本代表としてAPOカップに出場した影響もあり、チームとして詰めた練習もあまりできませんでした。そんな中で選手一人一人が『出来ることはしっかりやろう』という気持ちを持って、各自の役割をきちんとこなし、優勝という結果につながったことが一番嬉しかったです。APOカップで日本と違うレフェリング基準を経験できていたことも大きかったですね」

 その表情からは、代表復帰で得た経験を今大会で活かせたことへの自信が伝わってくる。しかし同時に、レフェリングへの順応が今後の重要なカギであることも忘れていない。


「これからの大会でYokohama Crackersが結果を出し続けるためには、新しいレフェリング基準をマスターすることが必須だと思うので、それを一つ一つ重点的に詰めていけたらと思います」

 2013年のAPOカップ以来、候補選手として招集され続けていたものの、永岡は日本代表からは長らく遠ざかっていた。

「日本代表に復帰できたことは素直に嬉しいことですし、応援してくれた方々に恩返しができたのかなと思っています。しかし “W杯の出場権を得る”という重要なミッションがあったので、喜んでばかりでもいられませんでした。与えられたミッションを常に念頭に置いて、自分が今何ができるのかじっくりと振り返り、自分の役割は何なのか、どういう動きをすればチームに貢献できるのかを考えながらやってきたことが、結果に結びついたことが良かったと思います」

 永岡は代表復帰により、個人的にも大きな経験と収穫を得たようだ。

「日本代表でのスピーディなサッカーを経験できたことや、外国人選手のプレーを間近で見て、そのプレーを感覚的に体感できたことは大きな収穫になりました。またレフェリングの新しい国際基準など、日本だけが知らない情報をたくさん知ることができたことも、課題でもあり収穫だったと思います」

撮影:松本力

 久々となる代表活動において不安や問題点などはなかったのか。日本からオーストラリアまでの飛行時間は約10時間。その間、選手団はエコノミークラスで移動した。2017年のW杯アメリカ大会に至っては、不自由な体勢を長時間強いられ続けた。身体の自由が利かず、定期的に体位変換が必要な彼らにとっては、身体的にも大きな負担となる。

「ビジネスクラスに変更すれば、選手がリクライニングでき、身体への負担もだいぶ軽減できます。もちろん、それだけで劇的にパフォーマンスが上がるわけではありませんが、少しでも良い環境で本大会に臨めるように皆様からご支援いただけると有難いですし、そのためにも自分たちが普及活動を頑張っていかなければならないと思います」。

 奇しくも、会場となった「エコパアリーナ」に隣接する「エコパスタジアム」では、大会初日の夜に「ラグビーワールドカップ2019」の決勝戦パブリックビューイングが開催され、大勢の観客が詰めかけた。しかし、わずか数十メートルしか離れていない「エコパアリーナ」に、選手の家族や関係者以外の観客をほとんど見つけることができなかった。

 日本代表で一緒に戦った三上と共に、競技の普及活動を支援につなげる大切さを訴える永岡自身は、競技の認知度をあげるため、ピッチ外でも奮闘していた。今年3月に封切られ、全国各地で上映されている電動車椅子サッカードキュメンタリー映画「蹴る」(中村和彦監督作品)。APOカップの準備に入るまでの約半年間、永岡選手は主演女優として、映画のPR活動のため舞台挨拶に駆け回った。全ては競技の認知度を上げ、少しでも国内の競技環境を良くするためだ。

 W杯オーストラリア大会まで2年を切った現在、永岡に今後の抱負をこう明かす。

「グローバルスタンダードの波に乗れるように技術を磨いていきたいですね。今回は優勝できましたけれど、今後も全日本のトップに居続けられるようにしたいですし、そうすることで2021年のW杯での日本代表に選ばれることに結びつくことと思うので、まずはクラブチームでの底上げも含めて、しっかりやっていきたいと思います」。

 自身の競技活動のみならず、電動車椅子サッカー界の将来をも見据え、決して歩みを止めることなく永岡選手は走り続ける。

(取材・文 松本力)

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