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パラリンピック出場のために転職 ブラサカ日本代表を目指す日向賢の決断

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アルゼンチンの選手からボールを奪いに行く日向賢

 視覚障がい者がプレーするブラインドサッカー日本代表強化指定選手のFP日向賢がパラリンピック本番の出場をめざすため、大手印刷会社から8月1日付で「人」を軸とした企業の課題解決を行う「株式会社トーコン ホールディングス」に転職したことがわかった。日向が決断の経緯を明かす。

「(パラリンピック本番まで)1年を切ってより競技に専念したい、という気持ちになったので転職を考えていたときに、(トーコンから)タイミングよく声をかけていただきました。競技に専念しながら働くのもいいなと思っていましたし、実際、新しい職場でもすごくよくしてもらっています」

 ブラインドサッカー日本代表は、ブラジルやアルゼンチン、中国など競技に完全に専念できる強豪国と違い、仕事と両立させながら競技力向上を目指している。ただ、週末の日本代表合宿だけでは絶対時間が不足するため、週に数日の「平日練習」という形で日本代表の高田敏志監督らが練習場を確保し、補っている。他の選手は職場と調整しながら両立を図ってきた。日向も参加することはできていたが、以前勤務していた職場の事情で時間の融通が利きづらくなり、葛藤を抱えるようになり、よりよい環境を探すようになった。

 日向はトーコンで、視覚障がい者にとって利用しやすいHPや音声読み上げ機能の解析などWeb関連の仕事や、今後は自社の広報にも携わることも予定しており、様々な可能性を試されるなど早くも戦力化を求められている。トレーニングも、転職後は代表の平日練習の日はトレーニングを優先することが可能になり、出社時間も、日向の希望が尊重されるようになった。

「以前、日中にトレーニングできなかった日に仕事後にトレーニングをして夜が遅くなることもありましたが、今は職場の理解もあって帰宅後に家にいられる時間も長くなり、生活のリズムも作りやすくなりました」

代表に復帰した日向賢は再定着をめざす

 転職は、普通のサラリーマンにとっても決して簡単なことではないが、日向が今、置かれている状況も大きな決断を後押ししている。2012年から日本代表に定着していた日向は、今年も代表強化指定選手に選ばれていたが、3月のワールドグランプリを最後に、チームの海外遠征や公式戦に帯同できなくなった。7月14、15日、岩手県遠野市でブラジル代表と強化試合をしたときも、日向は自費で現地まで出向き、ピッチ脇で試合の雰囲気を感じ取るなど、代表復帰に向けて危機感を募らせていた。

「(代表漏れは)悔しいし、ショックでした。心の底から来るような悔しさは、言葉ではうまく表現できません。今、連続して外されてしまっていることについて、(高田)監督から何かを言わたわけではないので、『自分で考えなさい』というメッセージかなとも思います。僕のポジションはどんな時も点をとれるようにしないといけない」

 主将の川村怜と同じ2列目の攻撃的なポジションが得意な日向が代表に完全に復帰するにはまず、点をとることが求められる。10月27日、東日本リーグで1点ビハインドの状況から同点弾を決め、リーグ戦では2017年以来となるゴールを奪った。すると、11月4日のアルゼンチン代表戦では、黒田智成佐々木ロベルト泉といった主力が不在だったこともあり、日本代表に招集され、途中出場も果たした。日向の決断は少しずつ実を結ぼうとしている。

「(代表には)もちろん、いつ呼んでもらってもいいように、今以上にパフォーマンスをあげないといけないと思っています。僕の役割としては、点をとってチームを勝ちに導きたい。ここから1年、さらにギアをあげていきます」

 今回の転職で、競技生活を終えた後の安定を捨ててまで、来夏のパラリンピック出場にを目指す。それは、苗字のように、競技人生の「日向」にもう一度、返り咲きたい、という一途な思いから。一生に一度あるかないかの舞台に出るための大きな「賭け」に勝つ、と信じている。

(取材・文 林健太郎)

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