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「日本一のハイプレス」掲げる愛工大名電が初V王手!! 80+5分被弾も中京大中京とのPK死闘制す:愛知

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愛工大名電が死闘を制した

[11.9 高校選手権愛知県予選準決勝 中京大中京1-1 PK5-6 愛工大名電 パロ瑞穂]

 第98回全国高校サッカー選手権愛知県予選は9日、パロマ瑞穂スタジアムで準決勝を行い、第1試合は中京大中京高愛工大名電高が対戦した。愛工大名電が1点リードを守ったが、中京大中京が80+5分のラストプレーで劇的同点ゴール。延長戦でも決着がつかず、1-1のままPK戦に突入すると、愛工大名電がPK6-5で死闘を制した。14年ぶりの決勝進出を決め、16日は初の県制覇を懸けて岡崎城西高と対戦する。

「日本一のハイプレス」を志向する愛工大名電が、常連校を打ち破った。宮口典久監督は昨年7月の神奈川遠征を契機にこの戦術を取り入れ、選手たちの能力を伸ばしてきた。今年度は新人戦、総体も4強入り。「彼らが持っているものを考えた。今の代は素直で走れる」。1年以上に渡って入念にプレスを仕込み、走り負けないハードワークを鍛えあげた。

 前線から連動してプレッシャーをかけてボールを奪い、縦に素早くゴールに迫る愛工大名電は前半シュート数10本と圧倒した。コンパクトな4-1-3-2の陣形で立て続けにショートカウンターを炸裂させると、先制点はカウンターから生まれた。

 前半34分、自陣からMF冨田拓未(3年)がロングボールを入れ、ハーフウェーライン付近で巧みにおさめたFW平井碧(3年)が前を向く。ドリブルで持ち上がると、「左のコースが空いているのが見えた」(平井)と、PA右手前の位置で右足を一閃。豪快なミドルをゴール左隅に突き刺した。

 怒涛のハイプレスとそれを支える運動量は驚異的だったが、後半はパワーが落ちていく。“一の矢”として存在感を放ったFW森重裕太郎(3年)らが足をつり、ラスト20分は耐える時間帯が続いた。中京大中京は交代策を使い、布陣を4-4-2から3-5-2に変更して反攻を強める。1点ビハインドのままアディショナルタイムに突入したが、最後に劇的な展開が待っていた。

 80+5分のラストプレー。左サイドのスローインの流れから、競り合いで右に抜けたボールにFW竹中択(2年)が反応。竹中はシュート性のクロスを入れ、PA内左のFW北野祐己(3年)がダイレクトでシュート。これは至近距離でGK安原哲平(2年)に阻まれたが、跳ね返りを自ら頭で押し込み、土壇場で1-1に追いついた。

 迎えた延長戦でも決着はつかず、PK戦に突入。先行・中京大中京1人目のキックは、フェイントに動じなかったGK安原が冷静に横っ飛びでストップ。優位に立った愛工大名電だったが、コースを読み切ったGK苗川聖羽(3年)に5人目が止められ、サドンデスへ。中京大中京6人目のキックがクロスバーを叩くと、DF堀朝陽(3年)がきっちりと決め、PK6-5で勝負が決した。

  県2部リーグ所属の愛工大名電がプリンスリーグ東海所属の“格上”を撃破。「自分たちの力を出せば、愛知県のチームにはどこにも負けないと思っていた」(平井)と、チームはこのスタイルに自信をにじませる。宮口監督は「彼らがこの舞台に萎縮しなかった。やってきたことをそのまま表現できた」と勝因を挙げた。総体では平成14年度に全国の舞台に立ったが、選手権となれば初の偉業。“ハイプレス集団”が悲願の選手権初出場に王手をかけた。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

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