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[MOM3047]東海大高輪台DF宮田龍芽(3年)_精度を求めるチームで生まれた“別格ロングスロー”で先制アシスト

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ロングスローを披露した東海大高輪台DF宮田龍芽

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.10 選手権予選準決勝 東海大高輪台2-0東京朝鮮 味フィ西]

 後半、左サイドでスローインを得ると、東海大高輪台高の左DF宮田龍芽(3年)が長い助走を取った。身長170cmに満たない体は、迫力があるとは言い難い。ところが全身を使って両腕を振って投げたスローインは、スピードを保ったままニアサイドの選手の頭上を越えて、ゴール正面まで飛んでいった。どよめいた観客の目が追ったボールの先には、ファーサイドから飛び込んできた主将のMF藤井一志(3年)がいた。藤井のヘディングシュートがゴールへ飛び込み、先制弾となった。

 近年、ロングスロー自体は珍しくないが、なかなかアシストにはならないものだ。決めた藤井も「1発で決まるとは思っていなくて、2回、3回とこぼれ球を押し込むように言われている」と笑ったが、実は狙い通りだった。インターハイ予選の東大和高戦でも同じ形で得点を挙げている。川島純一監督は「足で蹴ったみたいなボールでしょう?すごいんですよ。あの一発を狙っていたんです」と明かした。

 しかし、容易に真似ができないレベルのスローインを、狙って投げたというのだから驚きだ。ロングスローをライナーで飛ばせる選手には、多くの場合、2つの特徴がある。1つは、器械体操などの経験者で身体を柔らかく使うことができ、特に背筋の力を生かせるタイプだ。もう1つは、身長が大きく、そもそも投げる位置が高くライナーで投げられるタイプである。

 ところが、見た感じでは宮田はどちらでもない。何しろ、自身も隠れた才能に気付いていなかったくらいだ。宮田は「2年生の終わり頃、自主練習中に転がって来たボールを取ってくれと言われて、足が少し痛かったので、スローインで返してみたら、結構飛んだんです。川島先生に『お前、飛ぶじゃん』と声をかけられて、それからは自主練習をやってきました」と思わぬ発見をした1年前を振り返って笑った。

 投げられる選手が、やたらと投げる試合が最近は珍しくない。ロングスローは相手に邪魔されず、ゴール前で混戦を生み出せることが大きな利点だ。一方、無理に飛距離を求めて精度を欠いたり、山なりのボールでGKにキャッチされたりしてボールを失えば、カウンターのリスクを負うこともある。

 迫力はあるが、意外と効果が小さいという例は少なくない。その点、3回戦までは意図的に使用を避け、この試合に向けた2週間で準備していたという一撃を、高精度で再現して得点に結び付けてたあたりは、ショートパスを基本として精度の高いプレーを求めている東海大高輪台ならではのすごさと言える。

 ただ投げている、のではない。サイドバックでスローインの機会が多い宮田がロングスローの能力に気付かなかったのも、基本的に近い距離で確実につなぐのが当たり前だったからだ。その中でも選手の個性を見逃さずに引き出した指導陣がいて、精度にこだわる姿勢を叩き込まれた選手の工夫があり、再現性が高められてきたからこそ、結果に結び付いた。

 宮田は「投げるときに気を付けているのは、軌道と回転。軌道は45度でライナー系。あまり上に行かないように注意しています。回転はバックスピン。ボールの横を持たずに後ろをしっかりつかんで、手首の返しで回転をかけて投げています。練習試合で偶然バックスピンがかかったときに、飛距離がすごく伸びたので、バックスピンとこの角度で投げれば飛ぶと気付いたんです」と、自主練習で精度を磨いてきたロングスローのコツを明かしてくれた。

 短くパスをつなぐチームのスタイル上、ロングスローが多くの出番を得ることはない。しかし、勢い任せでなく、狙いをハッキリと持ったロングスローは脅威だ。左サイドバックとしてショートパスのつなぎの中で攻撃を組み立てる宮田は、ロングスローという目立つ武器を持ちながらも「目立つのが苦手なんです。今回も点を決めたのは一志なので、一志にスポットライトを当ててほしいです」と話す、おとなしいタイプだ。

 勝利に貢献しても「あれは自分の武器ですけど、ほかの選手にもそれぞれ武器があって、それが集まって勝てたと思っています」と殊勝だった。しかし、密かに鍛えて来た飛び道具は、チームを初の選手権東京ファイナルに引き上げた。もう1つ勝てば、夢の全国だ。

「これまでの大会は、力を出し切れずに不甲斐ない結果に終わった。今回はここまで来たので、チーム一丸となって勝利をつかみたいです」。控えめな選手だが、タッチラインの外に助走を取ったら、秘密兵器としての顔をのぞかせる。決して見逃してはいけない。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校選手権2019

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