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「テレビで観ていた通りのアジア予選」。染野と武田、高校サッカー組が語る完全アウェー

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FW染野唯月(尚志高、左)、MF武田英寿(青森山田高)はアジアの戦いの厳しさを体感した

[11.10 AFC U-19選手権予選 U-18日本代表 0-0 U-18ベトナム代表 ベトナム]

 ひたすらゴールの遠い、苦味ばかりが残る試合だった。AFC U-19選手権予選第3戦、熱烈な応援を背に受けるベトナムとのアウェーマッチは、U-18日本代表にとって苦い経験となった。9番を背負ってポイントゲッターとして期待されたFW染野唯月(尚志高)は予選を通じて無得点。苦渋の表情を浮かべつつ、その戦いを振り返った。

「自分の武器は点を取れるところなのに、この予選では点を取れなかった。本当に悔しい」

 試合が始まってみれば、相手はドン引きの5バック。攻撃ではリスクをほとんどかけてこない相手に対し、日本は攻めあぐねた。「相手が引いてくるのは分かっていたが、どう攻略すればいいのかを明確にできていなかった」と振り返る。高校サッカーの福島県予選などでも相手が徹底して守りを固めてくる試合は経験済みで、それを踏まえて「引いてくるならミドルシュート」というイメージも持っており、逆に動き出しを工夫して裏のスペースで受けるシーンもあったが、どちらもシュートまでは持ち込めなかった。

 一方、ハーフタイムからの登場となったMF武田英寿(青森山田高)も「自分が入ったら点に絡んでやろうと思っていた」と意欲をみなぎらせ、実際に影山雅永監督も称賛した意表をつくワンタッチパスなどで変化も付けた。「蹴ってもよかったけど、サイドからいける」という判断でゲームを作ったが、ここからが勝負という流れになる中でFW櫻川ソロモン(千葉U-18)がまさかの一発退場に。ゲームはこれで実質的に終わってしまった。

「完璧にアウェイの試合で、退場になったときは何が起こったかわからなかった。あのようなジャッジになったことを含め、『アジアは厳しい』というのはよく聞いていたけど、本当に聞いていた通り、テレビで観ていた通り。本当に厳しかった」(武田)

 染野もまた、割り切ったサッカーをしてくる相手に「これが『アジア予選』の難しさなのか」と実感したという。影山監督は「実際に味わってみないことには分からない」と、負けの許されない、あるいは勝って当然という雰囲気のあるアジア予選ならではの難しさについて語っていたが、図らずもこの最終戦での大苦戦という形で選手全員が実感することとなった。

 1次予選突破自体には成功したが、染野にも武田にも笑顔はなかった。来年の最終予選、そして再来年のU-20W杯にはU-17W杯を経験した選手たちも合流してくるだけに、そこに自分たちの定位置が用意されているわけでないことも分かっている。

 染野は今予選での自身の不甲斐なさを嘆きつつ、「ここから活躍し続けて、(来年)鹿島に入ったらチームでの競争が激しいことも分かっているけれど、それでも活躍して、もう一度アピールしていきたい」と誓う。武田もまた「ここから青森山田に帰ったら、チームを勝たせられるように努力をしていきたい。チームの結果になれば、アピールにもなると思っている。そしてプロの世界に行っても、しっかり試合に出て結果を残していきたい」と、前を向き直した。

 ここからこの二人とFW晴山岬(帝京長岡高)には「高校サッカー選手権県予選」という、相手が徹底して自分たちを警戒してくるアジアの予選にも似た難しさをはらむ戦いも待っている。チームで活躍することが代表に繋がるという原則は、どのカテゴリーに行っても変わらない。この日の苦い記憶を胸に、もう一度歩みを進めていくこととなる。

(取材・文 川端暁彦)
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