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高校3年間で一番のゴール。負傷明けの北陸MF加藤実録が一矢報いる80分弾:福井

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後半からの投入で最後に一矢報いたMF加藤実録(3年)

[11.10 高校選手権福井県予選決勝 丸岡2-1北陸 福井]

 トレーニングに戻ってわずか一週間。北陸高MF加藤実録(3年)は左膝内側の靭帯を痛めて離脱し、約2か月練習から離れていた。松本吉英監督は「決勝にも間に合わないと見られていた。本人は努力しましたが、ゲーム勘は不安だった」と振り返った。

 それでも、ボールが落ち着かなかった前半の悪い流れを断ち切るために、松本監督はスタッフと相談し、後半開始からの起用を決断した。復帰後初の実戦。持ち場の左サイドハーフに入り、足元でつなぐ自分たちのリズムを引き寄せようとした。

 ただ、試合を通してシュート数は2対20と圧倒された。後半も丸岡からペースを奪い返すには至らなかったが、最終盤の反撃の中心には160cmの小兵アタッカーがいた。スルーパスを呼び込んではテクニカルなドリブルで仕掛け、こぼれ球に反応してゴールを目指す。そして、公式記録に後半「1本」と記されたシュートを、見事にゴールにつなげてみせた。

 2点ビハインドの後半40分、クリアボールをおさめたMF萩原陸(3年)からパスを受けた加藤は「トラップしてからすぐに打とうと決めていた」と迷わず右足を振り抜き、豪快なロングシュートを叩き込んだ。「ミドルは得意じゃないです。普段は打ったりもしない。あの時は打つしかなかった」。無我夢中で沈めたゴールだが、GKの位置を確認する冷静さも持ち合わせていた。

 土壇場で1点差に詰め寄ったものの、反撃はここまでだった。「怪我をしなければ最初から出て、もっとチームに貢献できた」という悔いも当然あるが、一矢報いたゴールは記憶に刻まれた。高校3年間のサッカー生活で一番印象に残るプレーを聞かれると、「今日以外のプレーですか? 今日のゴールが一番です」と清々しく言った。

 まだ残されたミッションもある。北陸は17日から北信越プリンスリーグ参入戦を控えている。最後まで諦めず、戦い抜く姿勢を下級生に示した加藤は、さらに“置き土産”を残す目標を掲げる。「後輩たちに残していけたら」と力を込めた。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

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