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挫折から這い上がる中で攻守、精神面も成長。草津東が水口破り、決勝進出:滋賀

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草津東高MF夏川大和は1ゴール3アシストの活躍で勝利に貢献

[11.9 選手権滋賀県予選準決勝 水口高 0-4 草津東高 皇子山陸上競技場]

 第98回全国高校サッカー選手権滋賀県予選は9日、皇子山陸上競技場で準決勝2試合が行われ、第2試合は草津東高が4-0で水口高に勝利した。

 序盤はお互いに攻撃を仕掛けながら試合が進んでいく中、前半15分に先制点が生まれる。草津東は相手をゴール前に押し込んだ状況で、MF小酒井新大(3年)が「ボランチだけど、10番を付けているからには得点に絡まないといけない」という言葉どおりにミドルシュートを決めた。

 ただ、前半はシュート数が両チーム共に3本ずつと、やや静かな40分間だった。後半に入ると、草津東の攻撃が勢いを強める。5分にMF夏川大和(3年)からのパスを受けたMF川崎寛太(3年)が中央突破から追加点を奪い、その後も右サイドのMF川畑雄斗(2年)が積極的な仕掛けを見せるなどペースをつかむと、終了間際の36分には夏川が、39分には交代出場のFW渡邉颯太(3年)が決めて、4-0と点差を広げて試合を終えている。

 水口は軸足を守備に置きつつ、前半の序盤や後半の中頃などゴールに迫る場面もあった。キャプテンのDF中本桂太(3年)は「勝敗については完敗です。今大会ここまで無失点だった中で4失点。自分たちの良さを出せたところもあるけれど、かなわなかった」と振り返る。

 今年のチームは自陣で守備を形成し、相手を引き込ませてからのカウンター攻撃がコンセプト。この日も序盤はFW小川結翔(3年)や、西森勇樹監督が「草津東と普通にやったら勝てない。彼は技術的な課題はあるが身体能力は高い」と今大会初めて先発させたFW杉本ドレード(3年)らが縦への推進力を出したが、フィニッシュへ持ち込むことに苦労していた。

 後半20分にはMF林宏泰(3年)が渾身のミドルシュートを放つも、草津東GK長澤輝(3年)の好セーブに防がれている。終盤には前がかりになったところで連続失点を許して敗れたが、中本は「回りからは予想外のベスト4進出と思われているかもしれないけれど、試合を重ねるごとによくなっていった。いいチームで終われたなと思います」と今大会の健闘を称えていた。

 勝利した草津東は、終わってみれば4得点をあげての完封勝利だ。副キャプテンのDF小林悠衣斗(3年)と左利きのDF野崎陽登(2年)のCBコンビは最終ラインで相手のカウンターに対応しつつ、ボールを持った際は中盤の選手と共にビルドアップで自陣から攻撃を組み立てた。そうして敵陣へボールを運べば両サイドからチャンスを作り、相手が外を警戒したところで中央からの崩しを狙って得点に結びつける場面もあった。

 昨年は選手権の初戦で、2年連続の対戦となった青森山田高に大敗。最終的に全国制覇を果たしたチームとどれだけ差があったのか、それをどれだけ埋めていけるのかをテーマに、今年のチームが立ち上げられた。しかし、総体予選では決勝で敗れてしまう。牛場哲郎監督は夏から秋にかけてのチーム作りについて「攻撃で決めきれない試合が多かった。守備で相手ボールを奪いきる力を高めて、そこから攻撃に移ってチャンスにつなげることを夏以降は見直してきました」と強化ポイントを語っている。

 そうして攻守両面を磨いてきた成果は、少しずつ現れている。県リーグ1部では15勝3分で無敗優勝を達成。プリンスリーグ参入戦では神戸U-18・Bに大差で敗れたが「その中でもいい形も出ていたので、試合中からチームメイトと『次につなげていこう』と話していた」(小酒井)というやり取りもあったという。そうしたシーズンを送ってきて、最後に挑むのが選手権だ。指揮官は「チームとして完成を迎えていく時期に、この大会へ標準を絞って臨めている。3年生を中心に『ここでやるしかないんだ!』と決意が固まったと感じてます」(牛場監督)と挫折から這い上がってきたチームの精神面に手応えを感じている。

 決勝戦は、総体予選の決勝と同カードになった。6月のゲームでは接戦が展開される中、後半に与えたPKが決勝点となって敗れている。「近江の攻撃をどう抑えるのか。うちの攻撃のスピードをどう出すのか」(牛場監督)、「もし相手にボールを持たれても焦ることはない。自分たちの守備をしっかりと作ればボールは奪える。この一週間、しっかりと準備をして決勝戦に挑みます」(小林)。夏のリベンジを果たして、滋賀県代表の座をつかみにいく。

(取材・文 雨堤俊祐)
●【特設】高校選手権2019


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