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選手層の厚さ示した尚志が染野V弾で全国へ。再び「福島を元気に」

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尚志高は初の全国制覇に挑戦する

[11.17 選手権福島県予選決勝 尚志高 1-0 聖光学院高 西部サッカー場]

 サッカーで「福島を元気にする」。第98回全国高校サッカー選手権福島県予選決勝が17日に行われ、昨年度全国4強の尚志高が6年連続11回目の全国大会出場を決めた。聖光学院高と対戦した尚志は、後半2分にU-18日本代表FW染野唯月(3年、鹿島内定)が決勝ゴールを決めて1-0で勝利。全国大会の組み合わせ抽選会は11月18日に行われる。

 プレミアリーグEASTに所属する尚志とプリンスリーグ東北勢の聖光学院とのファイナルは前半、拮抗した展開で進んだ。今夏のインターハイでもベスト4入りしている尚志は多くの時間帯でボールを保持するとサイドへ動かし、左のMF菅野稜斗(2年)や右のMF郡司克翔(3年)がドリブル突破やコンビネーションでの崩しで相手ゴールに迫る。

 また、インターハイ得点王のFW山内大空主将(3年)が豊富な運動量で相手を押し下げていた尚志は、24分にPAへ切れ込んだ染野の左足シュートがクロスバーを叩き、37分には染野スルーパスに交代出場のMF松本岳士(3年)が走り込んだ。だが、前半はSBの攻め上がりが控えめで、ボランチも重心の重い40分間に。山田喜行監督が「プリンスで鍛えられた守備のできる強さがある」と語る聖光学院から先制点を奪うことができなかった。

 対する聖光学院は、最前線のFW前川龍之助(3年)やFW杉崎凪流(3年)がアグレッシブなプレッシング。PA付近まで攻め込まれながらも局面に人数をかけてボールを奪い取ると、前川が相手の背後を狙い続けていた。加えて、MF佐藤克樹(3年)が縦横無尽に動き回ってボールを前進。そして、幾度か敵陣でセットプレーを獲得すると、右SB小幡俊介主将(3年)のFKや杉崎のロングスローでゴール前のシーンを増やそうとする。

 前半12分には染野に競り勝った杉崎が右足シュートへ持ち込んだほか、前半アディショナルタイムには中盤での攻防戦を制すと、佐藤のスルーパスで前川が右中間を抜け出す。だが、飛び出した尚志GK鈴木康洋(3年)がシュートをストップ。相手を脅かしたが先制点を奪うことはできなかった。

 試合は後半開始直後に動いた。尚志は右SB坂従颯蒔(3年)が滞空時間の長いクロスボール。聖光学院は前半から好守を見せていたGK佐々木悠斗(3年)がパンチングしたが、クリアが小さくなってしまう。これを左足でコントロールした染野がすかさず左足ループシュート。フワリと舞ったボールはそのままゴールネットに吸い込まれた。

 昨年度選手権得点王のゴールでリードを奪った尚志は、直後にも右サイドでMF小池陸斗(3年) や染野、坂従が絡む形で“尚志らしい”鮮やかな崩し。その後もサイドチェンジやハイサイドへの配球など相手の状況を見ながら余裕のある攻撃を続けていた。

 聖光学院は左サイドでキープ力を発揮していたMF半沢愛斗(3年)を起点としたカウンターから前川や杉崎が強引にフィニッシュへ持ち込むシーンもあったが、相手ゴールを脅かすまでには至らない。

 終盤は交代出場で前への勢いを強め、セットプレーなどからゴールを狙うも、尚志はCB渡邉光陽(2年)やGK鈴木が要所を締めて得点を許さなかった。尚志は染野も交代する中、ゲームをコントロールしながら80分間を終えて1-0で勝利。余力も感じさせるような戦いで全国切符を勝ち取った。

 この日、尚志はJクラブも注目したCB中川路功多(3年)と攻撃のキーマンでもある左SB 吉田奨(3年)が大学受験のため不在。前日の準決勝から先発6人を入れ替えて決勝に臨んだ。だが、CB神林翼(2年)や左SB五十嵐聖己(2年)が守備面で特長を発揮したほか、交代出場の松本やMF松島武虎(3年)がテンポを変えるなど層の厚さを示しての勝利。準決勝、決勝はいずれも1点差での勝利だったものの、一週間後に控えたプレミアリーグの大一番、磐田U-18戦へ向けて体力を大きく削ることなく勝ち切った。

 仲村監督は「始めから元気なヤツで行きたいというプランがあって、色々な選手を経験させることで尚志もレベルアップできる。負けないという条件の中で色々なことができた」と頷いていた。

 全国大会では福島に元気をもたらす。先月、福島は台風19号による豪雨災害に遭った。直後の10月14日に行われたプレミアリーグEAST首位・青森山田高戦(アウェー)で尚志は逆転勝ち。試合前日は移動手段が寸断されたり、遅延の影響を受け、青森の宿舎に到着したのは午前1時という状況だったが、「福島のために」という思いで逆転勝利を果たした。

 山内は「第一に福島を背負っているので、その部分で自分たちのプレーで頑張っているんだぞと見せられたら良い」と語った。目標は東日本震災直後の福島に元気を与えた11年度、そして魅力的なサッカーで全国を沸かせた昨年度の4強を越えて全国制覇。だが、現時点の力ではまだまだ足りないと本人たちは自覚している。

 染野は「全国制覇というのは口だけになっている部分があるので、そこは行動を起こさないといけない。練習からもっと高いレベルを求めてやらないといけない」。日本一のチームに相応しい日常を過ごすこと。今年参入したプレミアリーグで守備面を鍛えられているが、攻守ともに貪欲にレベルアップを果たし、全国での活躍で再び「福島を元気にする」。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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