Jリーガー多数輩出の名門・流経大が2部降格…序盤8連敗から波に乗れず、中野監督「負の連鎖が長すぎた」

[11.17 関東大学サッカー1部第21節 順天堂大1-0流通経済大 フクアリ]
流通経済大は2005年から始まった現行12チーム体制で同校初となる2部降格が決定した。
今シーズンは第2節から泥沼の8連敗。崩れたバランスは長い期間をかけて修正されていき、第16節から4連勝と勢いに乗ったものの、第20節・立正大戦(●0-1)で痛恨の敗戦。そして16日に東洋大が勝利したことで暫定最下位となった流経大は、敗れたら自動降格決定という背水の陣で、今節の順天堂大戦に挑んだ。
前半は拮抗状態が続くも、流経大は攻撃の形をつくって順大のゴールに迫る。前半27分、左サイドのFW満田誠(2年=広島ユース)がカットインから右足シュートを放つが、ボールはわずかに流れてゴール右外へと逸れていく。同39分には右CKのチャンスからMF佐々木旭(2年=埼玉平成高)、MF安居海渡(2年=浦和学院高)が波状攻撃を仕掛けるも、相手のブロックに阻まれた。
前半を0-0で折り返すと、順大は後半開始からFW桂陸人(1年=広島ユース)に代えてMF鈴木啓太郎(4年=帝京高)を投入。ボランチ起用のFW旗手怜央(4年=静岡学園高/川崎F内定)を中心に少しずつペースを掴んでいくと、後半13分にはその旗手が鮮やかな右足ミドルをゴールに突き刺し、均衡を破ってみせた。
追い込まれた流経大だが、シュートは打てどもGKに収まってしまう。にじり寄る“降格”の二文字を跳ね返すことができず、そのまま0-1で試合終了。流経大の選手たちはその場に崩れることもなく、しかし呆然とショックを受けながら整列に動いた。
1部リーグでは3度の優勝に輝き、夏の総理大臣杯でも3度の頂点に。全日本大学選手権(インカレ)も2度制覇してきた強豪・流経大。卒業したJリーガーは数知れず、日本代表MF守田英正(川崎F/2017卒)やDF山村和也(川崎F/11卒)、FW船山貴之(千葉/09卒)、GK林彰洋(FC東京/09卒)、FW武藤雄樹(浦和/10卒)というように、さまざまなポジションで一線級に活躍する選手たちを輩出してきた。
就任から22年目。数多の教え子を育て上げ、実績を積み上げてきた中野雄二監督は「しょうがないですね。そういうシーズンだったなと思うしかない」と語る。4連勝の後に迎えた前節の立正大戦での敗戦を挙げ、「今日の試合がどうこうというよりも立正大戦がすべてだったのかなと思います」と今シーズンを振り返った。
「Jリーグもそうなんでしょうけど、ちょっとした歯車が合わないので、負けだしたときに思った以上に負けが多くなったかなと。負の連鎖が長すぎた」
少し緊張感から解放されたかのように見せる指揮官は「皆さんが思うほど深刻ではなくて。ちょっとほっとしています」と一息。「ずっと大学サッカーの中で新しい取り組みをして突っ走ってきたから、流経は勝たなければいけないんだとか、色んなことをリードしていかないといけないんだとか、そういう責務は感じているんですけど、そういう神経状態でこの先ずっと生きていくとしたらかなり大変かなって。なんかもうさっぱりしてよかったかなという気もしなくはないです」。
今季の途中からテクニカルエリアには出てこず、今節も終始ベンチに座り続けていた。その理由を語りながら、指揮官の話は今後の去就についても及んでいった。
「もう中野としての監督の仕事は、自分で言うのも変ですけど結果も出してきたし、僕がテクニカルエリアに一度も出なかったのは、いつか現場を若手のコーチ陣に代えていかないと、と考えれば。サイクルとしては現場は入れ替えていくべきだと考えがあるので、ちょうどそういう気持ちで今シーズンは一歩引いたところで、黙って見ようという思いになった」
「5年先、10年先を見据えたら、いいタイミングだから。新しい流経のサッカー部をつくるきっかけだと思う。マネージメント全体はやりますけど、現場に関して言えば、若い人たちの発想でいいんじゃないかな」
会場には母校を案じた船山や守田、山村の姿も。中野監督は「心配して来てくれた」と目を細めつつ、「流経のサッカー部も1000人以上のOBを出している。足を運んでくれたのも有難い」と感謝を述べた。
退任の可能性についてはまだ正式発表ではないものの、「半年間指示しなかったからですから、そういう思いでずっと座っていたので」と意志は強い。「22シーズン目になるのかな。ちょうど過渡期っていうのもあったと思う。時代の流れとともにチームは変化していくべきで、その中心に僕がいなくてはいけない理由はない」。2部降格。それは大学サッカー界屈指の名門にとって、大きな転換点となりそうだ。


(取材・文 石川祐介)
●第93回関東大学L特集
流通経済大は2005年から始まった現行12チーム体制で同校初となる2部降格が決定した。
今シーズンは第2節から泥沼の8連敗。崩れたバランスは長い期間をかけて修正されていき、第16節から4連勝と勢いに乗ったものの、第20節・立正大戦(●0-1)で痛恨の敗戦。そして16日に東洋大が勝利したことで暫定最下位となった流経大は、敗れたら自動降格決定という背水の陣で、今節の順天堂大戦に挑んだ。
前半は拮抗状態が続くも、流経大は攻撃の形をつくって順大のゴールに迫る。前半27分、左サイドのFW満田誠(2年=広島ユース)がカットインから右足シュートを放つが、ボールはわずかに流れてゴール右外へと逸れていく。同39分には右CKのチャンスからMF佐々木旭(2年=埼玉平成高)、MF安居海渡(2年=浦和学院高)が波状攻撃を仕掛けるも、相手のブロックに阻まれた。
前半を0-0で折り返すと、順大は後半開始からFW桂陸人(1年=広島ユース)に代えてMF鈴木啓太郎(4年=帝京高)を投入。ボランチ起用のFW旗手怜央(4年=静岡学園高/川崎F内定)を中心に少しずつペースを掴んでいくと、後半13分にはその旗手が鮮やかな右足ミドルをゴールに突き刺し、均衡を破ってみせた。
追い込まれた流経大だが、シュートは打てどもGKに収まってしまう。にじり寄る“降格”の二文字を跳ね返すことができず、そのまま0-1で試合終了。流経大の選手たちはその場に崩れることもなく、しかし呆然とショックを受けながら整列に動いた。
1部リーグでは3度の優勝に輝き、夏の総理大臣杯でも3度の頂点に。全日本大学選手権(インカレ)も2度制覇してきた強豪・流経大。卒業したJリーガーは数知れず、日本代表MF守田英正(川崎F/2017卒)やDF山村和也(川崎F/11卒)、FW船山貴之(千葉/09卒)、GK林彰洋(FC東京/09卒)、FW武藤雄樹(浦和/10卒)というように、さまざまなポジションで一線級に活躍する選手たちを輩出してきた。
就任から22年目。数多の教え子を育て上げ、実績を積み上げてきた中野雄二監督は「しょうがないですね。そういうシーズンだったなと思うしかない」と語る。4連勝の後に迎えた前節の立正大戦での敗戦を挙げ、「今日の試合がどうこうというよりも立正大戦がすべてだったのかなと思います」と今シーズンを振り返った。
「Jリーグもそうなんでしょうけど、ちょっとした歯車が合わないので、負けだしたときに思った以上に負けが多くなったかなと。負の連鎖が長すぎた」
少し緊張感から解放されたかのように見せる指揮官は「皆さんが思うほど深刻ではなくて。ちょっとほっとしています」と一息。「ずっと大学サッカーの中で新しい取り組みをして突っ走ってきたから、流経は勝たなければいけないんだとか、色んなことをリードしていかないといけないんだとか、そういう責務は感じているんですけど、そういう神経状態でこの先ずっと生きていくとしたらかなり大変かなって。なんかもうさっぱりしてよかったかなという気もしなくはないです」。
今季の途中からテクニカルエリアには出てこず、今節も終始ベンチに座り続けていた。その理由を語りながら、指揮官の話は今後の去就についても及んでいった。
「もう中野としての監督の仕事は、自分で言うのも変ですけど結果も出してきたし、僕がテクニカルエリアに一度も出なかったのは、いつか現場を若手のコーチ陣に代えていかないと、と考えれば。サイクルとしては現場は入れ替えていくべきだと考えがあるので、ちょうどそういう気持ちで今シーズンは一歩引いたところで、黙って見ようという思いになった」
「5年先、10年先を見据えたら、いいタイミングだから。新しい流経のサッカー部をつくるきっかけだと思う。マネージメント全体はやりますけど、現場に関して言えば、若い人たちの発想でいいんじゃないかな」
会場には母校を案じた船山や守田、山村の姿も。中野監督は「心配して来てくれた」と目を細めつつ、「流経のサッカー部も1000人以上のOBを出している。足を運んでくれたのも有難い」と感謝を述べた。
退任の可能性についてはまだ正式発表ではないものの、「半年間指示しなかったからですから、そういう思いでずっと座っていたので」と意志は強い。「22シーズン目になるのかな。ちょうど過渡期っていうのもあったと思う。時代の流れとともにチームは変化していくべきで、その中心に僕がいなくてはいけない理由はない」。2部降格。それは大学サッカー界屈指の名門にとって、大きな転換点となりそうだ。


中野雄二監督(最奥)
(取材・文 石川祐介)
●第93回関東大学L特集