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ブラインドサッカー日本代表のエース川村のシュートを止めまくった「素人守護神」の正体

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GK松井康は試合後、アブディンモハメド(左)と健闘を称える

[11.17 ブラインドサッカー東日本リーグ第6節 パペレシアル品川 0-0 Avanzareつくば](東京・福生市営福生野球場)

 ブラインドサッカー東日本リーグで今季初参戦のパペレシアル品川がAvanzareつくばと対戦し、0-0の引き分けに終わった。品川に在籍する日本代表のエース川村怜、佐々木ロベルト泉は昨年までAvanzareつくばに在籍しており、この両チームの対戦はいわば「因縁の決戦」。勝敗の行方を決めたのは、ブラインドサッカーのGKになってまだ2年目の“素人守護神”だった。AvanzareつくばのGK松井康が後半、川村の決定的なシュートを2本阻止し、ゴールを許さなかった。

「私は普段、実は日本代表の理学療法士として彼らをみているので、シュートする姿をよく見ています。この角度ならこう打ってくる、とか予測がついたのがよかった」 

松井はおもに視覚障がい者が通う筑波技術大の教員。弱視の人がプレーする「ロービジョンフットサル」の顧問を4~5年つとめ、その間もチーム状況によってはGKをつとめた。ブラインドサッカーは昨年からはじめたばかりで、GKが不足した場合に松井に声がかかった。いわば素人同然でも、川村がゴール右上を狙ったシュートを、松井は勘を働かせて左へ鋭く跳んではじいた。止められた瞬間、男子の日本代表チームでマネージャーをつとめ、パペレシアル品川のガイドをつとめる神山明子が、「(松井)先生が凄すぎた」と声をあげ、川村を激励する場面もあった。さらにもう1本の川村の決定的なシュートも松井はまたも左に跳んで阻止した。

 試合後、すぐに理学療法士の顔に戻った松井が明かす。

「日本代表ではまずは負傷者を出さないこと。負傷者が出たとしてもできる限り、早く戦列に速く復帰させること、いかに早く復帰させるかをいつも考えています」


 この日、佐々木ロベルト泉はフル出場したが、10月6日に行われたアジア選手権3位決定戦・タイ戦で負傷して倒れた。大会後に母国・ブラジルに帰って武者修行することがあらかじめ決まっていて、遂行できるか微妙だったが、松井らの尽力もあり、無事ブラジルに行くことができ、ブラジル選手権で4試合出たという。選手が何事もなくピッチに立つ陰に、松井のように陰で尽力するメディカルスタッフの存在がある。

「今日はAvanzareとしても2人(川村と佐々木)が抜けて弱くなったとは思われたくなかったですし、2人が中心となって作ったチーム(品川)に対していい試合をしたい、という気持ちがいいモチベーションになりました」

 Avanzareつくばは品川に引き分けたことで、12月1日の3位決定戦には進めなくなった。それでも勝手知ったる仲間同士の意地のぶつかり合いに、すっかり日が落ちた福生の野球場に暖かい風が流れた。

アジア選手権から帰国後の日本代表。後列右から2人目が松井理学療法士


(取材協力 日本ブラインドサッカー協会)

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