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積み重ねてきた半歩が「打倒・桐光」果たす一歩に。日大藤沢がインハイ王者破り、全国へ!:神奈川

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日大藤沢高が神奈川を制して全国へ

[11.30 選手権神奈川県予選決勝 桐光学園高 0-1 日大藤沢高 ニッパ球]

 日大藤沢がインハイ王者破って全国へ! 第98回全国高校サッカー選手権神奈川県予選決勝が30日に行われ、インターハイ優勝校の桐光学園高日大藤沢高が激突。MF浅野葵(3年)の決勝点によって日大藤沢が1-0で勝ち、5年ぶり5回目の全国大会出場を決めた。日大藤沢は全国大会2回戦から登場。広島県代表の広島皆実高と初戦を戦う。

 今夏のインターハイで初優勝を果たした桐光学園は、U-20日本代表FW西川潤(3年)の他にも高評価を得ている選手を複数擁する注目校。全国の強豪各校が「打倒・桐光」「打倒・西川」を目指していた。県内のライバル・日大藤沢もその一つ。昨年度の選手権予選で2-0から逆転負けし、インターハイ予選は代表決定戦で延長戦の末に惜敗していた。その悔しさをぶつけた日大藤沢が、神奈川県予選で「打倒・桐光」を達成。今年の最注目選手・西川、そして夏の全国王者の選手権出場を阻み、目標の全国制覇へ前進した。

 ともに堅い守りを特長とする両校。その中で前半、試合の主導権を握ったのは桐光学園の方だった。日大藤沢の左サイドに守りの人数をかけて、相手の攻撃のスピード、精度を低下させることに成功。そして、MF中村洸太(3年)らがボールを奪うと、7分に西川が左足ミドルを狙い、17分には右SB前川壮太(2年)の奪い返しとクロスから西川が決定的なヘディングシュートを放った。

 日大藤沢は中盤を活用しながらポゼッションし、CB青木駿人(3年)とCB宮川歩己(2年)のサイドチェンジを交えて揺さぶろうとするものの、なかなかバイタルエリア中央に侵入できず、攻めあぐねてしまう。逆に桐光学園にポゼッションを許し、中央から穴を開けられかけるシーンもあった。

 日大藤沢は40分、コンビネーションによる崩しからMF斉藤夏(2年)が抜け出すが、これは桐光学園GK北村公平(2年)が飛び出して阻止。桐光学園も後半7分にMF神田洸樹(3年)の右クロスをファーサイドで受けたMF所新太郎(3年)が右足を振り抜く。だが、日大藤沢は前半から反応の良さを印象づけていたGK濱中英太郎(2年)が、至近距離からのシュートをストップする。

 インターハイの桐光学園はDF陣が最後の一歩でも諦めずに足を出してシュートブロックし、北村のビッグセーブも優勝の要因に。この日もそのレベルの高さを披露していたが、その堅守を日大藤沢が攻略する。後半9分、左サイドでSB吉本武(3年)のパスを受けたMF植村洋斗(3年)がタッチライン際でDFと対峙。ここまで見せていなかったドリブル突破でDFを剥がし、ゴールライン際まで斜めに切れ込む。そして、折り返しを浅野が右足で丁寧にゴールへ押し込んで先制した。

 エースの一発の切れ味から、インターハイ予選は出番のなかったMFが殊勲の先制点。日大カラーの桜色に染まったスタンドへ走る背番号26と日藤イレブンに大歓声が送られた。

 畳み掛ける日大藤沢は吉本のラストパスからFW平田直輝(3年)が左足を振り抜いたほか、左サイドで存在感を増した植村のパス、ドリブルなどから追加点を狙う。桐光学園は北村のファインセーブなどで阻止して反撃。逆に、16分には神田のラストパスから西川が右足で狙うも、同点に追いつくことができない。

 桐光学園は攻撃のギアを上げたいところだったが、それを日大藤沢は許さない。2年前から取り組んできた4-3-2-1システムの組織守備は非常に強固。個々のハードワークはもちろん、佐藤輝勝監督はそのポジショニングと身体の向きを堅守の要因に挙げる。

「一番は体の向きで、相手が行きたい方向と逆の方向にミスディレクションできているというのが、ウチとしてはこの1年間一番やってきたこと」。桐光学園は西川が中盤に降りてボールを受けるなど打開しようとしていたが、外へ外へと押し出されてしまう。また、ロングボールは青木や宮川に弾き返されるなど攻略の糸口を掴むことができない。

 選手交代も加えながら前への姿勢を強め、クロスやCKを獲得するところまでは持っていったが、38分に神田がカットインから放った右足シュートも枠右へ。終了間際にはセットプレーで北村も上がってゴールを目指したものの、日大藤沢が守り切って歓喜の雄叫びを上げた。

 積み重ねてきた「半歩」が「一歩」になった。日大藤沢の佐藤監督は「桐光さんに敗れて悔しい思いをしてきたから、半歩でも勝てるように。(まだまだ甘いところもあったが、)この夏負けて全員が手を抜かなくなってから。やっぱり、あの1点を取れたのもみんなが頑張ったからだと思いますね。それ(全員の半歩)が合わさって、勝利に繋がる一歩になったんじゃないかと思います」と選手たちを讃えていた。

 これまでの悔しい思いがパワーになったことは間違いない。植村は「桐光は(西川)潤もいるし、色々なレベルの高い選手がいて、ツイッターとかでは『桐光が勝つだろう』と言われたりして、でも本当にやってみないと分からないものだし、自分たちは本当にこの一週間負ける気しないという感じでやっていた」と明かす。

 そして、青木は「本当、思いの部分では相手を絶対に上回っていた自信があるし、その思いの部分だったり、日大藤沢の一体感の部分でしっかりと相手を上回って結果という優勝という形が得られたので良かったです」と胸を張った。全国大会はインターハイ優勝校を破ったチームとして注目されることになる。

「自分たちも全国で通用するという自信を持っているので、全国でもっともっと相手を上回れるように1か月間しっかりと準備して日本一へ向かっていきたいです」と青木。日大藤沢の現3年生は2年前の全国ルーキーリーグ交流大会で優勝し、昨年から先発の大半を彼らが占めるなど「期待の世代」「日本一世代」と呼ばれてきた学年だ。神奈川のもう一つの注目校が、次は全国制覇を目指して半歩を積み重ねる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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