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「日本一しか、正解じゃない」。“注目世代”の帝京長岡が夏のリベンジ果たし、大目標への挑戦権獲得

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帝京長岡高が全国制覇に挑戦する

[12.1 選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0 日本文理高 デンカS]

 全国制覇狙う帝京長岡が、大目標への挑戦権を獲得! 第98回全国高校サッカー選手権新潟県予選決勝が1日に行われ、昨年度全国8強の帝京長岡高と17年度全国8強の日本文理高が対戦。町田内定のU-18日本代表FW晴山岬(3年)の決勝点によって帝京長岡が1-0で勝ち、2年連続7回目の全国大会出場を決めた。

 帝京長岡のMF谷内田哲平主将(3年、京都内定)は「昨年出ていた選手も多いですし、これだけ揃っている世代ってなかなかないと思う。『日本一しか、正解じゃない』と思うので、日本一を内容もそうですけれども、最後は結果なので、結果を求めてやっていきたい」と力を込めた。

 前回大会で帝京長岡はテクニカルなスタイルのサッカーによって長崎総合科学大附高(長崎)に攻め勝つなど8強入り。今年はいずれも世代トップクラスのタレントである谷内田と晴山に加え、Jクラブ加入が決定的になっているCB吉田晴稀(3年)や、U-17日本代表MF田中克幸(3年)とU-17日本代表候補MF矢尾板岳斗(3年)、GK猪越優惟(3年)、CB丸山喬大(3年)と攻守に昨年の経験者を残す“注目世代”だ。

 だが、インターハイ予選準決勝の日本文理戦では明らかに甘さがあり、先に2失点。そこから自力を発揮して逆転しながらも、延長後半終了間際に隙を突かれて追いつかれ、PK戦の末に敗れている。そのリベンジマッチとなった決勝戦。帝京長岡は苦しみながらも雪辱を果たし、全国制覇への挑戦権を獲得した。

 試合は序盤、日本文理が圧力をかける。ロングボールを前線に入れ、そこからFW中林海成(3年)の仕掛けなどでセットプレーを獲得。中林の左足プレースキックや右SB古俣眞斗主将(3年)のロングスローでゴール前のシーンを作り出した。帝京長岡はMF秋元圭太(3年)をはじめ、強度の高い日本文理の守備の前に、なかなか前進することができない。前半15分頃までは自陣でプレーする時間が続く展開となった。

 それでも、帝京長岡は谷内田が左サイドで出した2本のスルーパスなどから主導権を握り返す。特に守備の部分で存在感を放っていたMF川上航立(2年)らが奪い返しに成功していたこともあり、ボールを支配して連続攻撃。32分には矢尾板の仕掛けから田中の左足ミドルがゴールを襲い、37分には川上のパスで右サイドを抜け出したMF本田翔英(3年)の右足シュートが左ポストを叩いた。

 帝京長岡はチャンスを作りながらも、機敏な相手GK小菅瑠樹(3年)の好守にあうなど決めきれずに前半終了。快足CB吉田晴が相手のスペースへの攻撃をシャットアウトしていたものの、リードを奪うことができなかった。後半へ向けて、谷口哲朗総監督は「アドバンテージは何もないよ。相手のセットプレーも含めてあらゆることを想定してピッチに入ろう」と指示。引き締められて後半に臨んだ選手たちが、“帝長らしい”攻撃から得点を奪った。

 後半4分、自陣ゴールライン近くからポゼッションを開始すると、相手のプレッシングをいなしながらボールをバイタルエリアまで運ぶ。一度相手に引っかかったものの、こぼれ球を田中が拾うと、DFを十分に引きつけてからスルーパス。田中を追い越す形でDFの背後へ抜け出したエース晴山が左足シュートを決めて先制した。

 待望の先制点を奪った帝京長岡は畳み掛ける。再び敵陣でのプレー時間を増やそうとする日本文理の背後を取る形でハイサイドへボールを進めると、そこからコンビネーションによる崩し。9分には右の晴山から田中、本田と繋いで最後はフリーの谷内田が右足シュートを放つ。16分にもゴール前で巧みにボールを収めた谷内田がシュートにまで持ち込んだが、2本の決定的なシュートはいずれもわずかに枠を外れてしまう。

 仕留めることができなかった帝京長岡に対し、日本文理は交代カードを切りながら攻撃を活性化。古俣や秋元、MF長崎颯真(2年)を高い位置へ移して、勝負に出た。特に右SH、左SHへとポジションを移した古俣がその突破からゴール前のシーンを作り出す。一方の帝京長岡は攻撃が落ち着かなくなり、攻めきれない時間帯が続いていた。

 日本文理はGKまで平塚竜輝(2年)にチェンジして反撃。そして、アディショナルタイムには右クロスに交代出場のMF中村怜(3年)が合わせ、さらにGK平塚のキックから敵陣で競り勝ち、最後は長崎のラストパスから古俣が右足を振り抜く。だが、いずれも枠を捉えることができず。我慢の時間帯を凌いだ帝京長岡が1-0で全国切符をもぎ取った。

 持ち味を出した時間も、出せなかった時間も経験しながら勝ち切った帝京長岡の古沢徹監督は、夏の敗戦後の選手たちの変化を認める。「県総体のところまでは去年を引きずっているつもりはないと思うんですけれども、どこかで『やれるだろう』という甘い気持ちから見事にPKで負けてというところからセルフジャッジをなくしたり、審判にいうことをやめたり、高校生らしく一日一日毎日やろうと積み上げていく中で選手たちが成長していったかなと」。チームの代表として、後輩たちのためにも責任感を持って戦い抜いたことが優勝に繋がった。

 帝京長岡や、同校グラウンドで練習して全日本ユース(U-15)フットサル選手権で5度の優勝も果たしている長岡JYFCが中心となって地方都市「長岡」の名をサッカー界に広めてきた。古沢監督は「本当に毎年毎年こうやって素晴らしい舞台に行かせて頂いて、それをきょうも(長岡JYFCの)小学生、中学生、幼稚園児が見に来てくれて、ウチのサッカーを中心に長岡が発展していって、サッカーの街になっていってもらえればというと、本当に今年は責任をもって戦わなきゃいけないと思っています」。“注目世代”の目標は内容、結果にこだわっての日本一だ。

 この日は長岡JYFC出身の先発選手が6人。3、4歳の頃から長岡JYFCでサッカーをしてきた谷内田は「ずっと小さい頃から(長岡JYFCの)西田(勝彦)さんとかお世話になってきたので、その人たちのために日本一という結果で恩返ししたいと思います」と誓った。長岡で技術をと相手の逆を取る部分などを磨いてきた“注目世代”は熊本国府高(熊本)との初戦を戦う20年1月2日、さらに同13日の決勝まで上手くなり続けて新潟県勢初の日本一を成し遂げる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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