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[MOM3077]帝京長岡FW晴山岬(3年)_アジア経験したストライカーが1本の集中力発揮し、決勝弾!

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後半4分、帝京長岡高はU-18日本代表FW晴山岬が左足で決勝点

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.1 選手権新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0 日本文理高 デンカS]

 アジアを経験してきたストライカーには余裕があった。前半、帝京長岡高はU-18日本代表のエースFW晴山岬(3年、町田内定)になかなか良い形でボールが入らず、入った際も背番号10はゴールを背にしている状況。日本文理高に警戒され、スペースへのボールも合わなかった。

 だが、晴山は時折笑みを見せるなど、全く動じていなかった。「自分は最後に点獲れれば良いなと思っていた。なかなか前半は自分がシュートを打てないような状況だったけれど、後半1本か2本来るか来ないかという集中力が保てていた」。日本文理が後半に運動量が落ちることも想定。警戒されている自分が獲れなくても仲間が獲れれば良い、という心のゆとりもあった。

 そして、後半4分、晴山は“1本か、2本来るチャンス”をモノにする。こぼれ球をMF田中克幸(3年)が拾った瞬間、晴山は田中を追い越す形でDFの背後へ抜け出す。そこへ田中からスルーパスが入り、1タッチで相手の背中を取った晴山は、飛び出してきたGKを冷静に見極めながら左足シュートをゴールに流し込んだ。

「田中に入った時に『これ、絶対に入るな』という感覚があった。走り込めれば絶対に決めれるなという感じだったので、それが当たったと言うか、(ゴールまでの)絵が見えてスピードアップして相手を置き去りにできたというのがあると思います。自分の良い意味での余裕があそこで発揮されたかなと。アジアで戦ってきて、そういう時の集中力があの大事な場面で出せた。自分の成長がすごく感じられて良かったなと思います」。

 晴山はU-18日本代表として、11月10日まで行われたAFC U-19選手権予選(ベトナム)に出場。モンゴル、グアムとの2試合で計5ゴール。一方でグループ首位決戦となったベトナム戦では得点を奪うことができなかった。

「全然やれないという訳でもないし、でも“微妙”だったというのが一番悔しかった。ダメならダメでやられまくってというのが良かったけれど、“微妙”だったというのが一番自分を動かしたと言うか、それに勝てたというとおごりが出てしまうのもあるし、“微妙”だったことで一番自分が変わったと思います」

 晴山は圧倒的なフィジカルやスピードを持つ選手ではない。繰り返し動き出せる力や得点感覚によって昨年度選手権の4ゴールや今年のプリンスリーグ北信越での17得点(得点王)などゴールを量産してきた。その点取り屋が「微妙だった」アジアから得た力は、一発の集中力。それが得点シーンに活かされた。

 ゴール後はユニフォームをまくり上げ、下に来ていた背番号26のユニフォームを披露。これは膝の怪我で選手権出場が絶望的になっているDF佐藤元紀(3年)のモノだった。「みんなには秘密にしていたんですけれども結果的に点獲ってアピールできたのは良かった。試合終わって(佐藤から)『着てたの?泣きそうになったよ』と言われたので、それを思い描いて着たのでできて良かったです。(長岡JYFC時代からのチームメートで)誰よりもそいつの思いを背負って戦わないといけないと思っていたので、そのユニフォームの力もあって点を獲れたのかなと思います」と微笑んだ。

 佐藤や他のピッチに立てない仲間たちの思いも背負って戦う全国大会の目標は、日本一。その上で自分が得点王を獲れれば良いと考えている。「町田のサポーターも見に来てくれると思うので、『こいつが来てくれたら頼りになる』とか思ってもらえたり、『これが代表なんだな』と思ってもらえれば良い。染野(唯月、尚志高)とか武田(英寿、青森山田高)とかよりは全然大したことがないんですけれども、『晴山の方がすごいんじゃないか』と思わせられるようなプレーだったり、人間性だったり、代表だからと言って何している訳でもないし、代表だからと言って何して良い訳ではない。代表だから謙虚にやっていきたいと思います」。日本一、得点王という結果を残して、進路である町田関係者、サポーターの期待をより高める。
 



(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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