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「ヒガシを倒して全国に」。宿敵相手に戦い抜き、シュート2本に封じた筑陽学園が11年ぶりの選手権出場!

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宿敵・東福岡を破って全国出場を果たした筑陽学園高イレブン

[12.4 選手権福岡県予選決勝 東福岡高 0-1 筑陽学園高 レベスタ]

 筑陽学園が宿敵・東福岡の連覇をストップ! 第98回全国高校サッカー選手権福岡県予選決勝が4日に行われ、7連覇を狙う東福岡高と11年ぶりの全国出場を目指す筑陽学園高が激突。筑陽学園が1-0で勝ち、3回目の優勝を果たした。これで全国大会に出場する48校が決定。全国大会は12月30日に開幕し、筑陽学園は12月31日の1回戦で愛工大名電高(愛知)と戦う。

 ついに東福岡を止めた。プレミアリーグで戦う東福岡は、13年の県新人戦以降、6年連続で県新人戦、インターハイ予選、選手権予選のトーナメント戦で福岡3冠を続けてきた。今年も新人戦、インターハイ予選で優勝。FW深松大雅(3年)が「この筑陽に入学する前からヒガシを倒して全国に行きたいと思っていた」と語り、DFリーダーのCB吉村颯真(3年)も「去年も出させて頂いていて、勝てそうだったのに逆転されて、今年は自分がゼロで絶対に抑えてPKまで行っても勝つような気持ちでした」と振り返ったように、筑陽学園の選手たちは絶対に壁を突破するという強い気持ちで戦った。

 東福岡は右足首に怪我を抱えるU-17日本代表MF荒木遼太郎主将(3年、鹿島内定)がベンチスタート。その東福岡は1ボランチのMF田尻将太(3年)を中心にボールを握って攻める。

 だが、筑陽学園はGK野中友椰主将(3年)が「(対東福岡ということで)何かを変えるというところよりも、戦うというところでまずは1対1で絶対に負けないとか、苦しくなってもしっかりと我慢して守備するとか、技術どうこうよりは戦うという話はありました」と説明したように、臆せずに戦う姿勢を持って試合を進める。

 2分、筑陽学園は右サイドでMF古賀敬仁(3年)が奪い返すと、DFをかわしてクロス。これをFW寺岡聖斗(3年)がオーバーヘッドシュートで狙う。その後もシャドーの選手に入って来るところをインターセプトするなどボールを奪い切ると、一気にショートカウンター。決定的なシーンを作ることはできなかったものの、セットプレーを獲得する。このセットプレーの対応にやや危うさのあった東福岡は何とかクリアするようなシーンもあった。

 東福岡はU-16日本代表候補MF青木俊輔(2年)が左サイドを縦に突くシーンがあったが、前半のシュートは2本のみ。PAまでボールを持ち込んではいたものの、CB吉村颯真(3年)とCB岡宗万(3年)や危険なスペースを埋めるMF栗尾瑠(3年)らの前に決定打を打たせてもらえない。筑陽学園もシュート1本と堅い試合展開となった。

 筑陽学園は左SB今田光(3年)がインターセプトから2人をかわして攻め上がるなど後半も堅守からのカウンターを披露した。対して、東福岡は後半8分に大黒柱の荒木を投入。チームに安心感と「行ける」という雰囲気が漂う。実際に荒木はそのキープ力と狭いスペースでのパスで筑陽学園を押し込む一因になっていた。

 だが、東福岡はシュートや仕掛けの積極性を欠いていた。丁寧に繋いで攻めてはいたものの、ゴール前の局面で怖さを発揮できない。逆に筑陽学園は20分、交代出場の深松が思い切り良く右足を振り抜いてポストにヒットさせると、29分には奪ったボールをFW岩崎巧(2年)が右サイドへさばき、深町が強引に縦突破。DFと競りながらクロスを上げきると、大外でフリーだったMF過能工太郎(3年)がコントロールから右足シュートを左隅に突き刺した。

 大歓声の中、スタンドまで走りきった過能中心に筑陽学園が喜びを爆発。一方の東福岡は187cmDF野口明(2年)を前線に入れて相手を押し込もうとする。だが、筑陽学園はクロスに対して素晴らしい対応を見せていたGK野中や吉村、岡を中心に隙を見せない。

 筑陽学園は35分に184cmCB益永望光(3年)を投入し、吉村が荒木を監視。東福岡は前線にボールを入れるものの、良い形でセカンドボールを拾ったり、連続攻撃することができない。交代出場の右SBモヨ・マルコム強志(3年)のロングスローも、GK野中が前に出て処理。結局、東福岡の後半のシュートはゼロに終わった。5分間のアディショナルタイムを終える笛が響くと、筑陽学園はスタンドから飛び出した控え部員たちとピッチの選手たちが一緒になって優勝を喜んだ。

 筑陽学園の青柳良久監督は「(吉浦茂和)総監督も言っていたんですけれども、前半はゼロで帰って来ようというところで、それを子どもたちが確実にできたというところが大きいと思いますね。プリンスリーグを通じて失点が多かったのをこの大会では止めれたというのがこの子たちの成長かなと思います」と目を細めた。

 そして打倒・東福岡を達成したことについて青柳監督は、「嬉しいですね。ずっと負けているので。(選手権予選決勝での対戦は)ここ3年連続ですか。同カードで負けているので、本当にどこかで勝ちたいなという思いはありましたね」と喜んでいた。また、野中は「東福岡を倒すためにこの学校に入学して、この3年間キツいことも仲間たちと走ってきたので壁を超えられて良かった」と胸を張る。

 彼らは今夏、インターハイ予選準々決勝で飯塚高に敗戦。それまで県のトーナメント戦では7大会連続で決勝進出していたが、それを止めてしまっていた。芽生えた危機感。ミーティングを繰り返し、守備の強化を目指した。今大会の準々決勝では飯塚に雪辱し、準決勝ではプリンスリーグ九州で2敗の九州国際大付高にリベンジ。そして先輩たちが7大会連続トーナメント戦決勝で敗れていた東福岡にも勝って全国切符を勝ち取った。

 筑陽学園は15年度日本一の東福岡を破っての全国出場だ。全国で48番目、最後の代表校となったチームの準備期間はわずかだが、青柳監督は「県の代表として一生懸命させようと思います。それは子どもたちにも伝えようと思います」と語り、吉村は「福岡県の代表として出るので一番獲って帰ってきたいです」と誓った。宿敵の壁をついに突破した筑陽学園が全国で大暴れする。



(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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