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狙ってアウェー鹿島ユース戦初勝利。青森山田がプレミアリーグEAST優勝をより完璧な形で飾る

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優勝を喜ぶ青森山田高の選手たち

[12.1 高円宮杯プレミアリーグEAST第17節 鹿島ユース 1-3 青森山田高 カシマ]

 知らせを受けたのはバスの中だった。高円宮杯プレミアリーグEAST第17節・鹿島アントラーズユース戦へ向けて、試合前日の11月30日に青森山田高は茨城県鹿嶋市を目指して移動していた。そこに2位の柏レイソルU-18が敗れたという報告が届く。このため、自分たちの試合を待たずに3年ぶりのリーグ優勝が決まってしまった。

 ただ、「それで気を抜くとかあり得ない」(黒田剛監督)となるのが青森山田である。黒田監督は「優勝には勝ち点1を積めばいいわけで、まずは勝ち点1を狙う」という考え方から方針を転換。「先輩たちは一度もアウェイの鹿島戦で勝ったことがないんだ。それを超えてみろ」と選手たちに新たなモチベーションを与えつつ、高円宮杯ファイナルへ向けて大切な一戦として、この試合を位置付け直した。

 対する鹿島はここまで最下位に沈んでおり、この試合に敗れれば降格もあり得るというシチュエーション。当然、「絶対に負けられない試合だった」(GK山田大樹、3年)。ただ、そうした気負いが、立ち上がりに関しては悪い方向に出てしまったかもしれない。

 試合が動いたのはわずか開始2分のことだった。DF内田陽介(2年)が飛ばしたロングスローから、MF浦川流輝亜(3年)が合わせてゴールを奪う。高さへの対応に定評がある鹿島相手だけに、他ならぬ黒田監督が「想定していなかった」という早い時間の先制点から試合は動き出した。

 対する鹿島もこのまま終わる気はなく、19分にはMF舩橋佑(2年)のクロスにMF栗俣翔一(3年)が頭で合わせ、そのこぼれ球をMF舟崎歩武(2年)が押し込む形で同点ゴールを奪い取る。

 だが、「すぐに同点に追い付けたのはよかったけれど、そのあとが……」と栗俣が首をひねったように、ここから波に乗ることはできず。逆に勝たなければいけないという焦りもあったのか、無闇なロングボールも増えてしまった。黒田監督が「蹴ってきてくれて楽になった」と振り返ったように、青森山田は元々こうした攻撃への耐性を持っているチームであり、効果的ではなかった。

 そして後半開始早々の4分、ゲームを動かしたのは青森山田だった。GK佐藤史騎(3年)のキックを起点とした攻撃から、U-18日本代表MF武田英寿(3年)が裏へと抜け出しての冷静な左足シュートを沈めて、決定的な2点目を奪い取る。

 したたかな青森山田は後半32分にもDF神田悠成(3年)がロングスローからのこぼれ球を押し込んで点差を広げると、守ってもDF藤原優大(2年)を軸とする守備陣が鹿島の攻勢を跳ね返し切って、3-1で幕引き。2位との勝点差を突き放し、リーグ優勝をより完璧な形で飾ることとなった。

 黒田監督は独走優勝となった要因として「選手たちは自分たちの力のない部分をしっかり認め、勘違いすることなく努力してくれたこと」を挙げる。夏過ぎから勝てない時期が続いたが、「やるべきことをやり切ることをみんなで確認できた」(MF古宿理久、3年)ことで、その苦しみを今はチームの糧となった。あらためて全員でのハードワークを取り戻した青森山田が強さを示し、東日本を制圧。12月15日に埼玉スタジアム2002で行われる名古屋グランパスU-18とのファイナルへ駒を進めることとなった。

(取材・文 川端暁彦)
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